傘は構造が完成されすぎている道具に見えます。柄を持ち、骨を開き、布で雨や日差しを遮る。けれど特許図面を横断すると、その当たり前を崩そうとする発明が何度も現れます。まず消されるのは「手で持つ」という条件です。傘をドローンで飛ばし、身体へ着け、バックパックで支えます。

さらに傘の相手も人間だけではなくなります。犬を覆い、車椅子へ組み込み、雨そのものを測ります。柄には天気予報が入り、骨にはライトが付き、巨大な傘の縁からは冷却用の霧が落ちます。最後には、傘の上を回る風車で発電し、その電気を照明や自動機構へ戻す発想まで出てきます。

ここで紹介する10件はUS公開特許です。今回の10件について、From Patentsでは特定の市販製品へ一対一で実装されたことを確認できていないため、Patent → Productはすべて「対応未確認」としています。

FIG. 01

傘の方がドローンで人を追いかける

SOURCE FIGURESFIG. 3
PUBLICATIONUS20220340276A1
US20220340276A1 / FIG. 3。GPSを持つハンドル側を目印に、傘とドローンを頭上へ追従させる。
FIG. 01US20220340276A1
歩く人物の頭上を、複数のローターを備えた傘型ドローンが追従する特許図面。

US20220340276A1 / FIG. 3。GPSを持つハンドル側を目印に、傘とドローンを頭上へ追従させる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この発明は傘へドローンを取り付けて利用者の上空を飛ばし、手で傘を支えなくても雨を避けられるようにするものです。FIG. 3では、歩く人物と、その頭上に浮かぶ傘型の飛行体が一枚に描かれています。

取り外したハンドル側にはGPS送信機を持たせ、ドローン側がその位置を追う構成が説明されています。傘を「持って歩く」のではなく、傘の方が人へ付いてきます。

IndividualFIG. 01
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2021-04-27
PUBLISHED
2022-10-27
PUBLICATION
US20220340276A1
INVENTORS
Joseph Harris
ORIGINAL
FIG. 02

傘を持たず、肩と腰で着る

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20250040671A1
US20250040671A1 / FIG. 1。柔軟な支持部と腰ベルトで、傘を身体側へ固定する。
FIG. 02US20250040671A1
身体の肩から胸元にかけて支持部を装着し、頭上へ傘を固定するウェアラブル傘の特許図面。

US20250040671A1 / FIG. 1。柔軟な支持部と腰ベルトで、傘を身体側へ固定する。

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どんな発明?

「Wearable umbrella」は、柔軟な支持部と身体側の固定部を使って、傘を利用者へ直接取り付けます。FIG. 1では、頭上の傘と肩・胴体側の支持構造がひと続きに見えます。

手を空けるという目的はドローン傘と同じでも、こちらは飛ばしません。傘を衣服や装具に近いものへ変えて解決します。

IndividualFIG. 02
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2022-04-18
PUBLISHED
2025-02-06
PUBLICATION
US20250040671A1
INVENTORS
Abdullatif ALSUBAIE / Youssif ALSUBAIE
ORIGINAL
FIG. 03

バックパックから普通の傘を支える

SOURCE FIGURESFIG. 3
PUBLICATIONUS20040031827A1
US20040031827A1 / FIG. 3。既存の傘をバックパック側で保持し、両手を空ける。
FIG. 03US20040031827A1
背負ったバックパックの支持機構から前方へ伸ばした傘で、利用者を覆う特許図面。

US20040031827A1 / FIG. 3。既存の傘をバックパック側で保持し、両手を空ける。

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どんな発明?

この特許はバックパックへ傘の支持部を組み込み、開いた傘を利用者の前方・上方に保持します。FIG. 3では、背中から伸びた支持構造と通常形状の傘の関係が分かります。

傘そのものを特殊な形へ変えるより、持つ役割をバックパックへ移しています。子どもを運ぶキャリアを追加できる構成も説明されています。

IndividualFIG. 03
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2002-08-15
PUBLISHED
2004-02-19
PUBLICATION
US20040031827A1
INVENTORS
Robert Haber
ORIGINAL
FIG. 04

散歩中の犬にも専用の傘をかける

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20040200437A1
US20040200437A1 / FIG. 2。傘とリードを一体化し、飼い主が犬の上へ傘を保ちながら歩く。
FIG. 04US20040200437A1
雨の中を歩く犬の上に逆向きの透明傘をかざし、柄の先をリードとして使うペット傘の特許図面。

US20040200437A1 / FIG. 2。傘とリードを一体化し、飼い主が犬の上へ傘を保ちながら歩く。

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どんな発明?

この発明はペット用の傘とリードを一本の構造へまとめます。傘の凸面を飼い主側へ向け、反対側から伸びたリードで犬をつなぐため、傘の中心を犬の上へ保ちやすくします。

FIG. 2では、雨粒の中を歩く犬と、その真上にある傘、さらに飼い主へ続く柄が描かれています。誰を雨から守るかを変えただけで、傘の向きまで反転します。

IndividualFIG. 04
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2003-02-24
PUBLISHED
2004-10-14
PUBLICATION
US20040200437A1
INVENTORS
Irina Zhadan-Milligan / Yuri Zhadan
ORIGINAL
FIG. 05

車椅子の中から傘がせり出してくる

SOURCE FIGURESFIG. 8
PUBLICATIONUS20170099917A1
US20170099917A1 / FIG. 8。収納部に収めた傘を、車椅子上で機械的に展開する。
FIG. 05US20170099917A1
車椅子に取り付けた細長い収納部から、頭上へ傘の骨とキャノピーを展開する特許図面。

US20170099917A1 / FIG. 8。収納部に収めた傘を、車椅子上で機械的に展開する。

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どんな発明?

この特許では、傘の骨とキャノピーを細長いハウジングへ収納し、駆動機構で上方・外側へ展開します。FIG. 8は車椅子と傘アセンブリを組み合わせた状態を示します。

手で柄を保持し続けにくい状況に対し、傘を車椅子の構造へ統合します。使わないときに収納できる点も、単純な固定傘とは違います。

Ellen D. FitzgeraldFIG. 05
ASSIGNEE
Ellen D. Fitzgerald
PRIORITY
2014-02-28
PUBLISHED
2017-04-13
PUBLICATION
US20170099917A1
INVENTORS
Ellen D. Fitzgerald / Jeffrey R. Lake
ORIGINAL
FIG. 06

降ってきた雨をその傘自身で量る

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20070251556A1
US20070251556A1 / FIG. 1。傘の頂部を集水口にし、軸の中を雨水の通り道として使う。
FIG. 06US20070251556A1
傘の頂部に雨水を受けるカップを備え、中空シャフトを通して雨量計へ導く特許図面。

US20070251556A1 / FIG. 1。傘の頂部を集水口にし、軸の中を雨水の通り道として使う。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Umbrella with rain measuring device」は、傘の頂部に集水カップを置き、雨水を中空のシャフトへ流して量を測る発明です。FIG. 1では、傘・集水部・シャフト・計測部がひとつの縦長構造として描かれています。

普通の傘は雨を外へ流して終わります。この傘はその雨をわざわざ集め直して情報に変えます。

IndividualFIG. 06
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2006-02-01
PUBLISHED
2007-11-01
PUBLICATION
US20070251556A1
INVENTORS
Irwin Porter
ORIGINAL
FIG. 07

傘を開く前に、傘自身が天気を教える

SOURCE FIGURESFIG. 4
PUBLICATIONUS20070256716A1
US20070256716A1 / FIG. 4。ハンドルの表示で降水確率や予報情報を確認できる。
FIG. 07US20070256716A1
傘のハンドルに天気アイコンや気温などを表示する小型画面を組み込んだ特許図面。

US20070256716A1 / FIG. 4。ハンドルの表示で降水確率や予報情報を確認できる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この発明は無線で受け取った天気予報を傘そのものに表示します。FIG. 4では、ハンドル部分に小型画面や表示要素を持つインターフェースが描かれています。

面白いのは、傘が必要かどうかを確認するための情報を、その傘自身へ載せる点です。雨が降ってから使う道具が、雨が降る前の判断にも参加します。

Ambient Devices IncFIG. 07
ASSIGNEE
Ambient Devices Inc
PRIORITY
2001-09-19
PUBLISHED
2007-11-08
PUBLICATION
US20070256716A1
INVENTORS
Benjamin Resner / Pritesh Gandhi / Nicholas Negroponte / Robert Dredge / David Rose
ORIGINAL
FIG. 08

傘の骨を光るディスプレイにする

SOURCE FIGURESFIG. 3
PUBLICATIONUS20220183429A1
US20220183429A1 / FIG. 3。柔軟なLEDストリップを傘へ組み込み、発光パターンを制御する。
FIG. 08US20220183429A1
傘の骨やキャノピー周辺に多数の発光部を配置し、光のパターンを出す個人用発光傘の特許図面。

US20220183429A1 / FIG. 3。柔軟なLEDストリップを傘へ組み込み、発光パターンを制御する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Personal lighted umbrella」は、柔軟なストリップ上のLEDなどを傘へ配置し、色や点滅、強度といった発光パターンを制御します。FIG. 3では、傘の面と骨に沿って光を配置する構成が見えます。

雨の日の視認性を上げる用途だけでなく、外部入力に応じた光の変化も想定されています。傘の大きな面積を、そのまま発光面として使います。

Nuytkens Industries LLCFIG. 08
ASSIGNEE
Nuytkens Industries LLC
PRIORITY
2020-12-10
PUBLISHED
2022-06-16
PUBLICATION
US20220183429A1
INVENTORS
Margaret H. Nuytkens / Peter R. Nuytkens / Amy R. Nuytkens / Mark H. Nuytkens
ORIGINAL
FIG. 09

日陰の外周へミストの壁を落とす

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20050172987A1
US20050172987A1 / FIG. 1。傘の縁から下向き・外向きへ霧を出し、内側を濡らさず冷却する。
FIG. 09US20050172987A1
大型パラソルの下に二人が座り、傘の外周からカーテン状の細かなミストを噴く特許図面。

US20050172987A1 / FIG. 1。傘の縁から下向き・外向きへ霧を出し、内側を濡らさず冷却する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

このパティオ傘は外周へノズルを配置し、細かな霧を下向きかつ少し外向きに噴射します。FIG. 1では、傘の下に座る二人を取り囲むように、ミストのカーテンが描かれています。

狙いは傘の内側にいる人を濡らすことではなく、外側との熱のやり取りを抑えて涼しくすることです。傘が「影を作る屋根」から「周囲の空気を調整する装置」へ変わります。

IndividualFIG. 09
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2004-02-06
PUBLISHED
2005-08-11
PUBLICATION
US20050172987A1
INVENTORS
Terrence Byrnes
ORIGINAL
FIG. 10

傘の上で風車を回し、その電気を傘へ戻す

SOURCE FIGURESFIG. 4
PUBLICATIONUS20220133005A1
US20220133005A1 / FIG. 4。風で頂部の回転装置を動かして発電し、照明や自動機構へ電力を使う。
FIG. 10US20220133005A1
開いた傘の頂部に小型の回転装置を載せ、キャノピーや骨に照明を備えた自動傘の特許図面。

US20220133005A1 / FIG. 4。風で頂部の回転装置を動かして発電し、照明や自動機構へ電力を使う。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この発明は背中側のケースから自動で展開するハンズフリー傘に、照明と風力発電用の回転装置を組み合わせます。FIG. 4では、開いた傘の頂部に回転装置があり、キャノピー側にも発光部が配置されています。

特許では、風で得た電力を照明やモーターなどへ利用する構成が説明されています。傘にとって邪魔になりがちな風を、今度は電源として取り込みます。

IndividualFIG. 10
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2020-11-04
PUBLISHED
2022-05-05
PUBLICATION
US20220133005A1
INVENTORS
Roya Songhorian
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

傘に機能を足すほど、「手で持つ屋根」から離れていく

最初の数件は、傘そのものを大きく変えずに「誰が支えるか」を変えています。ドローン、肩、バックパック、車椅子。人の片手が担っていた仕事を別の機構へ移すだけで、傘は移動ロボットやウェアラブルのような道具へ近づきます。

中盤からは、傘が情報機器になります。降った雨を測り、まだ降っていない雨を予報し、夜には光ります。さらにミストを噴けば、傘は上から遮るだけでなく周囲の空気まで扱い始めます。

そして風で発電する傘まで来ると、雨風は防ぐ対象であると同時に、装置を動かすための環境条件にもなります。完成されたように見える一本の傘でも、「持つ」「守る」「測る」「知らせる」「冷やす」「発電する」と役割を分解すると、まだ別の道具へ変わる余地が残っています。

SOURCES

一次資料

  1. US20220340276A1 — Drone Umbrella Device
  2. US20250040671A1 — Wearable umbrella
  3. US20040031827A1 — Backpack for carrying an umbrella and/or child hands free
  4. US20040200437A1 — Pet umbrella and combined pet leash and umbrella
  5. US20170099917A1 — Wheelchair having an umbrella assembly
  6. US20070251556A1 — Umbrella with rain measuring device
  7. US20070256716A1 — Weather forecasting umbrella
  8. US20220183429A1 — Personal lighted umbrella
  9. US20050172987A1 — Umbrella with cooling misting screen
  10. US20220133005A1 — Hands-free, automatic umbrella with lighting mechanism and rotating device for electricity generation from wind