眠るとき、人は基本的に何もしません。だからこそ特許を眺めると、仕事をするのは枕やベッドや寝室の側になります。いびきを聞いて頭をずらす枕もあれば、まぶた越しに光を当てるマスクもあります。ベッドを揺らしたり、室温ではなく寝る人の周囲だけを変えたりする発明もあります。

変化するのはベッドだけではありません。枕、マスク、寝具、寝室、寝袋にまで機械の役割が広がります。寝つきを助けるもの、眠っている最中に介入するもの、起きた後の片付けをするものと、働く時間もさまざまです。

Eight Sleepには現在も温度調整や生体センシングを行うPodがありますが、ここで取り上げる二室型の睡眠ポッド特許がその製品へ直接実装されたとは確認していません。そのため「関連あり」に留め、ほかは公開情報から直接の製品化を確認できないものとして扱います。

FIG. 01

いびきを聞くと、枕が頭を横へずらす

SOURCE FIGURESFIG. 5
PUBLICATIONUS20090089932A1
US20090089932A1 / FIG. 5。枕内部の可動部を横へ移し、頭の位置と姿勢を変えていびきを止めようとする。
FIG. 01US20090089932A1
いびきを検知すると内部の可動座が移動し、寝ている人の頭の向きを変えるアンチスノア枕の特許図面

US20090089932A1 / FIG. 5。枕内部の可動部を横へ移し、頭の位置と姿勢を変えていびきを止めようとする。

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どんな発明?

Hong Jian Technologyの特許は枕にいびき検出器とモーター駆動の可動座を入れます。いびきを検知すると可動座の位置を変え、寝ている人の頭を上向きの状態から斜め方向へ動かします。

FIG. 5は動作前後で頭の向きが変わる様子を上下に並べています。本人へ寝返りを促すのではなく、枕そのものが頭の下で位置を変える仕組みです。

Hong Jian Tech Co LtdFIG. 01
ASSIGNEE
Hong Jian Tech Co Ltd
PRIORITY
2007-10-08
PUBLISHED
2009-04-09
PUBLICATION
US20090089932A1
INVENTORS
Fu-Ching Chen
ORIGINAL
FIG. 02

眠っている間、閉じたまぶたへ光を当てる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20130060306A1
US20130060306A1 / FIG. 1。睡眠マスクの内側から、閉じたまぶたへ特定波長の光を届ける。
FIG. 02US20130060306A1
左右の目を覆うシールドと発光モジュールを組み込んだPhilipsの光療法用睡眠マスク特許図面

US20130060306A1 / FIG. 1。睡眠マスクの内側から、閉じたまぶたへ特定波長の光を届ける。

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どんな発明?

Philipsの特許は睡眠マスクの左右へ発光モジュールを置き、目を閉じたまま光療法を行う構成です。記載されている中心的な波長帯は約490〜520nmで、まぶたを通過した光で睡眠サイクルに関わる反応へ働きかけます。

普通のアイマスクは外の光を遮ります。この発明は遮光するシールドの内側へ、あえて制御した光源を入れています。

Koninklijke Philips NVFIG. 02
ASSIGNEE
Koninklijke Philips NV
PRIORITY
2010-05-14
PUBLISHED
2013-03-07
PUBLICATION
US20130060306A1
INVENTORS
Michael Edward Colbauch
ORIGINAL
FIG. 03

二人で寝ても、ひとりずつ別の睡眠カプセルに入る

SOURCE FIGURESFIG. 26
PUBLICATIONUS20200405998A1
US20200405998A1 / FIG. 26。ひとつの外形の中を二つのsleep chamberに分け、各人の環境を別々に調整する。
FIG. 03US20200405998A1
二つの独立した睡眠室を並べたEight Sleepの二室型sleep pod特許図面

US20200405998A1 / FIG. 26。ひとつの外形の中を二つのsleep chamberに分け、各人の環境を別々に調整する。

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どんな発明?

Eight Sleepの特許には、二人が同じ寝室にいても、それぞれ別のchamberで眠る二室型のsleep podが描かれています。各室では温度や湿度などの環境、寝面の位置、音などを個別に調整できる構成が説明されています。

現在のEight Sleep Pod 6も、ベッドの左右を別々に冷暖房し、生体情報を測って調整する実在製品です。ただし現在の製品はこの図のような二室の囲いではなく、この特許との一対一の実装関係も確認していません。ここでは方向性の近い「関連あり」としています。

Eight Sleep IncFIG. 03
ASSIGNEE
Eight Sleep Inc
PRIORITY
2018-01-19
PUBLISHED
2020-12-31
PUBLICATION
US20200405998A1
INVENTORS
Matteo Franceschetti / Massimo Andreasi Bassi / Daipan Lee
ORIGINAL
FIG. 04

ベッドそのものを前後左右に揺らす

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20230255360A1
US20230255360A1 / FIG. 1。上部フレームを軸で支え、モーターとクランクでピッチ方向へ揺らす。
FIG. 04US20230255360A1
マットレスを載せる上部フレームを軸とモーターで揺らすrocking bedの特許図面

US20230255360A1 / FIG. 1。上部フレームを軸で支え、モーターとクランクでピッチ方向へ揺らす。

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どんな発明?

このrocking bedはマットレスを載せる上部フレームを別の基台へ載せ、モーターとクランク機構で動かします。FIG. 1は頭側と足側が上下するピッチ運動の構成です。

特許全体では、ロール、平行移動、振動や、それらの組み合わせも扱っています。眠る人に振動機器を付けるのではなく、ベッドという大きな家具全体を動かす発想です。

Rock To Sleep Bed LLC / Rockin2sleep LLCFIG. 04
ASSIGNEE
Rock To Sleep Bed LLC / Rockin2sleep LLC
PRIORITY
2021-09-20
PUBLISHED
2023-08-17
PUBLICATION
US20230255360A1
INVENTORS
Radhakrishnan Srinivasan / Preetham K. Shivanna
ORIGINAL
FIG. 05

ベッドの上をロボットが走り、シーツを整える

SOURCE FIGURESFIG. 3, FIG. 4
PUBLICATIONUS20040211006A1
US20040211006A1 / FIGS. 3–4。ベッド上を移動するroving deviceと、その移動・寝具操作機構を示す別実施形態。
FIG. 05US20040211006A1
ベッド表面を移動するroving deviceとヘッドボード側の装置を示した自動ベッドメイク特許図面

US20040211006A1 / FIGS. 3–4。ベッド上を移動するroving deviceと、その移動・寝具操作機構を示す別実施形態。

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どんな発明?

この特許はカメラや計算装置で寝具の位置やしわを捉え、マニピュレーターでシーツや毛布を持ち上げ、引き、ならす自動ベッドメイクを扱います。FIG. 3では、その別実施形態としてベッド表面を移動するroving deviceが描かれています。

説明では、枕をいったんどけ、寝具を順番に整え、最後に枕を戻すところまで想定されています。眠っている最中ではなく、起きた後の仕事をベッド周辺のロボットへ渡す発明です。

IndividualFIG. 05
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2003-03-05
PUBLISHED
2004-10-28
PUBLICATION
US20040211006A1
INVENTORS
Stephen Dickerson
ORIGINAL
FIG. 06

ベッドから一部を抜くと、そのまま車いすになる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20120159705A1
US20120159705A1 / FIG. 1。ベッド本体と車いすユニットを分離した状態。組み合わせると一つの寝面になる。
FIG. 06US20120159705A1
ベッド本体と、そこから分離して車いすとして使える中央ユニットを並べたPanasonicの特許図面

US20120159705A1 / FIG. 1。ベッド本体と車いすユニットを分離した状態。組み合わせると一つの寝面になる。

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どんな発明?

Panasonicの特許は車いすとベッド本体を組み合わせて一つのベッドを作ります。FIG. 1は分離状態で、車いす側の座面を平らに変形させて本体へ連結すると、連続した寝面になります。

介助では、ベッドから車いすへ身体そのものを移す作業が大きな負担になります。この案は人を持ち上げる代わりに、人が載っている寝面の一部を乗り物へ変えます。

Panasonic CorpFIG. 06
ASSIGNEE
Panasonic Corp
PRIORITY
2010-06-21
PUBLISHED
2012-06-28
PUBLICATION
US20120159705A1
INVENTORS
Shohei Tsukada / Yohei Kume / Hideo Kawakami / Tohru Nakamura / Toshihide Ueda
ORIGINAL
FIG. 07

隣の人のいびきだけを耳元で消す

SOURCE FIGURESFIG. 1, FIG. 2
PUBLICATIONUS20040234080A1
US20040234080A1 / FIGS. 1–2。ヘッドボードのマイクでいびきを拾い、隣の人の耳の周囲にcanceling soundを作る構成と、その局所キャンセル領域を示す。
FIG. 07US20040234080A1
いびきをかく人と隣で眠る人、ヘッドボード上のマイクとスピーカーを示した音響キャンセルシステムの特許図面

US20040234080A1 / FIGS. 1–2。ヘッドボードのマイクでいびきを拾い、隣の人の耳の周囲にcanceling soundを作る構成と、その局所キャンセル領域を示す。

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どんな発明?

Digisenzの特許はいびきをかく本人を動かすのではなく、隣で眠る人に届く音だけを打ち消します。ヘッドボードへマイクとスピーカーを置き、いびきの音を検出して逆向きの音響信号を出す構成です。

位置検出を組み合わせる実施形態では、寝返りで頭の場所が変わっても、キャンセル領域を耳の位置へ合わせます。部屋全体を静かにするのではなく、眠る人の周囲だけに静かな空間を作ろうとします。

Digisenz LLCFIG. 07
ASSIGNEE
Digisenz LLC
PRIORITY
2003-03-19
PUBLISHED
2004-11-25
PUBLICATION
US20040234080A1
INVENTORS
Walter Hernandez / Mathieu Kemp / Frederick Vosburgh
ORIGINAL
FIG. 08

眠りを測りながら、天井に映像を映す

SOURCE FIGURESFIG. 5
PUBLICATIONUS10987042B2
US10987042B2 / FIG. 5。ベッド脇のbase deviceが睡眠情報を取りながら、上向きのprojectorで天井へ映像を表示する。
FIG. 08US10987042B2
ベッド脇のNintendo端末が寝ている利用者をセンシングし、天井へ映像を投影する配置を示す特許図面

US10987042B2 / FIG. 5。ベッド脇のbase deviceが睡眠情報を取りながら、上向きのprojectorで天井へ映像を表示する。

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どんな発明?

Nintendoの特許では、ベッド脇のbase deviceがDoppler sensorなどで呼吸、脈拍、体動を取得し、睡眠状態を計算します。同じ装置にはprojectorがあり、寝た姿勢から見やすい天井へ映像を投影します。

説明には、寝つきを促す星空の映像や音、起床時の表示、睡眠評価の提示などが含まれます。画面を手に持って見るのではなく、寝室の天井そのものを出力面にします。

Nintendo Co LtdFIG. 08
ASSIGNEE
Nintendo Co Ltd
PRIORITY
2014-01-17
PUBLISHED
2021-04-27
PUBLICATION
US10987042B2
INVENTORS
Eizi Kawai / Masahiro Kondo / Kazuhiro Hosoi
ORIGINAL
FIG. 09

寝袋へホースをつなぎ、外から冷暖房する

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS11369219B1
US11369219B1 / FIG. 1。寝袋とPeltier式の外部モジュールを往復のホースでつなぎ、内部の空気を冷却・加熱して循環させる。
FIG. 09US11369219B1
寝袋と外付け熱交換器を二本の空気ホースでつないだ温度調整式sleeping bagの特許図面

US11369219B1 / FIG. 1。寝袋とPeltier式の外部モジュールを往復のホースでつなぎ、内部の空気を冷却・加熱して循環させる。

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どんな発明?

この特許では、寝袋へ二つの接続口を設け、外付けのPeltier式熱交換器と二本の柔軟なホースで接続します。片方から冷却または加熱した空気を送り、もう片方から戻して再循環させます。

寝袋は普通、外気から身体を隔離して保温します。この案は密閉に近い小さな空間を逆手に取り、部屋全体ではなく寝袋の内部だけを空調します。

IndividualFIG. 09
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2021-08-30
PUBLISHED
2022-06-28
PUBLICATION
US11369219B1
INVENTORS
Jacob Gitman / Victor Lander
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

眠っている人を動かさず、周りの方を動かす

9件を通して目立つのは、人へ何かを操作させる発明がほとんどないことです。寝た後は、枕が頭の位置を変え、ベッドが揺れ、音が耳へ届く前に打ち消され、天井の映像が睡眠状態に合わせて切り替わります。眠る人を起こさないために、周囲の機械だけが働き続けます。

もう一つは、寝具の境界が広がっていることです。ベッドは温度や湿度を管理する小さな環境になり、一部を切り離せば車いすになり、朝には別のロボットがシーツを整える。寝袋でさえ外付けの熱交換器とホースにつながれば、小さな空調空間になります。

特許図面には、寝具や寝室を物理的に動かす発想が残っています。持ち上げる、揺らす、囲う、分離する、空気を流す。人が最も動かない時間だからこそ、周りの物が意外なほど大きく動いています。

SOURCES

一次資料

  1. US20090089932A1 — Pillow to prevent snoring
  2. US20130060306A1 — Efficient circadian and related system modulation with a sleep mask
  3. US20200405998A1 — Sleep pod
  4. US20230255360A1 — Rocking bed that produces pitch, roll, translational and vibration movements
  5. US20040211006A1 — Automatic bed making apparatus
  6. US20120159705A1 — Bed and wheelchair
  7. US20040234080A1 — Sound canceling systems and methods
  8. US10987042B2 — Display system and display device
  9. US11369219B1 — Temperature controlled sleeping bag