育児には同じ動作を何度も繰り返す仕事がたくさんあります。抱く、運ぶ、寝かせる、ミルクを作る、飲んだ量を見る、おむつを確認する、替える、眠っているあいだも様子を見る。公開特許を追うと、その一つひとつを機械へ渡そうとする発明が見つかります。

仕事ごとに別の機械が入り込んでいるのが特徴です。脚に装着するロボットは赤ちゃんの重さを床へ逃がし、ベッドは泣き声に反応して揺れ、おむつは排泄物を判別し、交換装置は洗浄と乾燥までまとめます。

Happiest BabyのSNOOには近い機能がありますが、特許との一対一対応は確認できていません。

FIG. 01

赤ちゃんを抱く重さを脚のロボットから床へ逃がす

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20150090756A1
US20150090756A1 / FIG. 1。腰から脚へ装着する歩行支援ロボットの上部にベビーシートを置き、赤ちゃんの重さを機械を通して床で支える。
FIG. 01US20150090756A1
Samsung Electronicsの歩行支援ロボットとベビーシートを組み合わせたベビーキャリアの特許図面。

US20150090756A1 / FIG. 1。腰から脚へ装着する歩行支援ロボットの上部にベビーシートを置き、赤ちゃんの重さを機械を通して床で支える。

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どんな発明?

Samsung Electronicsの特許は、一般的な抱っこひもの腰ベルトをさらに下へ延ばし、歩行支援ロボットと組み合わせます。赤ちゃんを載せるシートはロボット上部に付き、荷重の一部を腰・脚・足元の機構を通して床へ伝えます。

センサーでシート上の重さを検出し、その荷重に応じて歩行支援の出力を変える構成も記載されています。抱っこ用品と外骨格が一体になったような発想です。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 01
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2013-10-02
PUBLISHED
2015-04-02
PUBLICATION
US20150090756A1
INVENTORS
Jong Won Lee / Yong Jae Kim / Jeong Hun Kim / Se Gon Roh / Min Hyung Lee / Youn Baek Lee / Byung June Choi / Hyun Do Choi
ORIGINAL
FIG. 02

押している手が離れたらベビーカーが自分で止まる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20150069727A1
US20150069727A1 / FIG. 1。ハンドルのタッチセンサーと加速度センサーを使い、手が離れた状態で動いていると自動ブレーキをかける。
FIG. 02US20150069727A1
Hon Hai系のスマートベビーカーを斜め前から描いた特許図面。

US20150069727A1 / FIG. 1。ハンドルのタッチセンサーと加速度センサーを使い、手が離れた状態で動いていると自動ブレーキをかける。

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どんな発明?

ハンドルに柔軟なタッチセンサーを置き、誰かが握っているかを検出します。手が離れたうえで加速度センサーが移動を検知すると、プロセッサーが車輪の自動ブレーキを作動させます。

便利な自走機能を足すのではなく『操作している人がいなくなった瞬間』をベビーカー自身が判断して止まる方向のスマート化です。

Cloud Network Technology Singapore Pte Ltd / Hon Hai Precision Industry Co LtdFIG. 02
ASSIGNEE
Cloud Network Technology Singapore Pte Ltd / Hon Hai Precision Industry Co Ltd
PRIORITY
2013-09-12
PUBLISHED
2015-03-12
PUBLICATION
US20150069727A1
INVENTORS
Hou-Hsien Lee / Chang-Jung Lee / Chih-Ping Lo
ORIGINAL
FIG. 03

泣き声を聞くとベッドが揺れ方と音を変えて寝かしつける

SOURCE FIGURESFIG. 1, FIG. 2
PUBLICATIONUS20140250592A1
US20140250592A1 / FIGS. 1–2。乳児を載せる装置の外観と、拘束・駆動部を含む構成。音や動きを検知し、往復運動と音を自動調整する。
FIG. 03US20140250592A1
Happiest Babyの乳児用寝かしつけ装置に赤ちゃんが横たわる特許図面。

US20140250592A1 / FIGS. 1–2。乳児を載せる装置の外観と、拘束・駆動部を含む構成。音や動きを検知し、往復運動と音を自動調整する。

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どんな発明?

Happiest Babyの特許は、赤ちゃんを載せるプラットフォームを往復運動させ、音や動きをセンサーで検出して、その反応に応じて揺れと音を調整する装置を扱います。

同社の実製品SNOO Smart Sleeperも、泣き声を検知するとモーションとホワイトノイズを段階的に変える機能を案内しています。発明者Harvey Karpも共通しますが、この特許番号がSNOOへ一対一で実装されたとは確認していないため、ここでは「関連あり」としています。

Happiest Baby IncFIG. 03
ASSIGNEE
Happiest Baby Inc
PRIORITY
2011-10-20
PUBLISHED
2014-09-11
PUBLICATION
US20140250592A1
INVENTORS
Harvey Neil Karp / Matthew R. Berlin / Jesse V. Gray / Bill Walter Washabaugh / Deb Kumar Roy
ORIGINAL
FIG. 04

粉ミルクと温水を量って哺乳瓶を次の工程へ回す

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS6829431B1
US6829431B1 / FIG. 1。粉ミルクを哺乳瓶へ落とし、ボトルをアームで温水側へ移して調乳する。
FIG. 04US6829431B1
粉ミルク容器、給水部、哺乳瓶の移送アームを備えた自動調乳装置の特許図面。

US6829431B1 / FIG. 1。粉ミルクを哺乳瓶へ落とし、ボトルをアームで温水側へ移して調乳する。

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どんな発明?

この装置は粉ミルクを一定量ずつ落とす機構と、水を選択温度まで加熱して注ぐ機構を分けています。哺乳瓶は回転するtransfer armに固定され、粉を受ける位置から温水を受ける位置へ移動します。

全部を同じノズルから出すのではなく粉と水の経路を物理的に分け、ボトルの方を工程間で動かすのが特徴です。

Acorn Product Development IncFIG. 04
ASSIGNEE
Acorn Product Development Inc
PRIORITY
2002-12-19
PUBLISHED
2004-12-07
PUBLICATION
US6829431B1
INVENTORS
Ken Haven / Jay Wilson / Dan Blaugrund / Vera S. Boudtchenko / Brandon Lee / Chang W. Lee
ORIGINAL
FIG. 05

哺乳瓶の下にセンサーを付けて飲んだ量を自動で記録する

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20190298615A1
US20190298615A1 / FIG. 2。哺乳瓶へ着脱するセンサーが内容量を測り、データをBluetooth機器へ送る。
FIG. 05US20190298615A1
液量センサー付きの台座に取り付けられた哺乳瓶の特許図面。

US20190298615A1 / FIG. 2。哺乳瓶へ着脱するセンサーが内容量を測り、データをBluetooth機器へ送る。

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どんな発明?

哺乳瓶の底へ専用センサーを取り付け、液面から内容量を測定します。特許では測定値の変化から授乳量を記録し、formulaか別の液体かを推定するロジックも扱っています。

育児記録を毎回手で入力する代わりに、哺乳瓶そのものを計測器へ変える発想です。

IndividualFIG. 05
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2018-03-27
PUBLISHED
2019-10-03
PUBLICATION
US20190298615A1
INVENTORS
Zak Wood
ORIGINAL
FIG. 06

おむつがおしっことうんちを電気的に見分けて知らせる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20180104114A1
US20180104114A1 / FIG. 1。吸収部の導電素子でインピーダンスを測り、尿と便を判別して無線通知する。
FIG. 06US20180104114A1
Verily Life Sciencesの導電素子と電子モジュールを組み込んだスマートおむつの特許図面。

US20180104114A1 / FIG. 1。吸収部の導電素子でインピーダンスを測り、尿と便を判別して無線通知する。

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どんな発明?

Verilyの特許はおむつの吸収領域へ導電素子を配置し、その間の導電性やインピーダンスを測ります。制御回路は測定結果から尿か便かを判別し、スマートフォンなどへ信号を送れます。

単に『濡れた』を検知するだけでなく交換前に何が起きたかまで機械側で分類しようとしています。

Verily Life Sciences LLCFIG. 06
ASSIGNEE
Verily Life Sciences LLC
PRIORITY
2016-10-13
PUBLISHED
2018-04-19
PUBLICATION
US20180104114A1
INVENTORS
Brian Pepin / Huanfen Yao
ORIGINAL
FIG. 07

汚れたおむつを外して洗って乾かし新しいおむつまで付ける

SOURCE FIGURESFIG. 1C
PUBLICATIONUS20170143168A1
US20170143168A1 / FIG. 1C。乳児を内部に保持し、汚れたおむつの除去、洗浄、乾燥、新しいおむつの装着をまとめて行う装置。
FIG. 07US20170143168A1
乳児を載せる座面、脚保持部、洗浄・乾燥機構を備えた自動おむつ交換装置内部の特許図面。

US20170143168A1 / FIG. 1C。乳児を内部に保持し、汚れたおむつの除去、洗浄、乾燥、新しいおむつの装着をまとめて行う装置。

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どんな発明?

装置内部には乳児を載せるseat、脚を保持するleg holder、安全ベルト、汚れたおむつを外すarm、sprinkler、dryerなどが配置されます。実施形態では、乳児を載せた後の工程を自動で進める構成が記載されています。

おむつを『交換する機械』だけではなく交換の前後に必要な洗浄と乾燥まで一台へまとめているのが特徴です。

IndividualFIG. 07
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2016-01-13
PUBLISHED
2017-05-25
PUBLICATION
US20170143168A1
INVENTORS
Iman Farahbakhsh
ORIGINAL
FIG. 08

ベビーベッドの上のカメラが服の模様の動きから呼吸を見る

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS10874332B2
US10874332B2 / FIG. 2。赤外線カメラで胸部の高コントラスト模様を撮影し、その動きから呼吸運動を検出する。
FIG. 08US10874332B2
ベビーベッド上のカメラと模様付きスワドルを使う乳児呼吸モニターの特許図面。

US10874332B2 / FIG. 2。赤外線カメラで胸部の高コントラスト模様を撮影し、その動きから呼吸運動を検出する。

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どんな発明?

Udisenseの特許では、胸の周囲に高コントラスト模様があるスワドルを着せ、ベッド上部のカメラでその模様を撮影します。画像中の模様の動きを解析することで、胸郭の呼吸運動を検出します。

身体へセンサーを直接貼る代わりに、『見やすい模様の服』と『離れたカメラ』を一組のセンサーとして使う発想です。

Udisense IncFIG. 08
ASSIGNEE
Udisense Inc
PRIORITY
2017-11-22
PUBLISHED
2020-12-29
PUBLICATION
US10874332B2
INVENTORS
Assaf Glazer / Hadas Kaminsky-Glazer / Shaked Dovrat / Amnon Kami / Tor Ivry / Amir Katz / Mark Prommel / Oscar Frias / Marco Perry / Natalie Louise Barnett / Yanai Victor Ankri / Yena Seo Lukac
ORIGINAL
FIG. 09

落ちたおしゃぶりが自分で音と光を出して居場所を知らせる

SOURCE FIGURESFIG. 4
PUBLICATIONUS20200405582A1
US20200405582A1 / FIG. 4。落下時の振動を検知し、内蔵スピーカーやLEDで通知するおしゃぶり。
FIG. 09US20200405582A1
スピーカー、LED、マイクロコントローラーを内部に持つおしゃぶりの断面特許図面。

US20200405582A1 / FIG. 4。落下時の振動を検知し、内蔵スピーカーやLEDで通知するおしゃぶり。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

おしゃぶり内部にshock sensorを持つマイクロコントローラー、スピーカー、LED、電池を入れ、床へ落ちたときの振動を検知します。検知すると一定時間、音や光を出して保護者へ場所を知らせます。

特許には、親の声や赤ちゃんの泣き声、手拍子に反応する別の実施形態も記載されています。

IndividualFIG. 09
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2019-05-17
PUBLISHED
2020-12-31
PUBLICATION
US20200405582A1
INVENTORS
Inga Londeree
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

育児の反復作業を小さく切り出す自動化

育児の自動化は親を置き換えるより、反復作業を小さく切り出す方向へ進みます。9件で機械が引き受けようとしているのは、重さを支える、手を離したベビーカーを止める、泣き声に反応する、粉と水を量る、残量を記録する、排泄を判別する、といった小さく具体的な作業です。

そのため機械の形もばらばらです。外骨格、ベビーカー、ベッド、調乳機、哺乳瓶の台座、おむつ、洗浄装置、カメラ、おしゃぶり。『育児用品』という同じ棚に並びそうにないものまで、センサーと制御を持つと同じテーマへつながります。

特許図面で見る未来は、夜中や外出中に何度も発生する細かな判断と動作を、一つずつ機械へ渡していく世界です。

SOURCES

一次資料

  1. US20150090756A1 — Baby carrier
  2. US20150069727A1 — Smart stroller
  3. US20140250592A1 — Infant calming/sleep-aid device and method of use
  4. US6829431B1 — Device to automatically prepare infant formula
  5. US20190298615A1 — Baby bottle sensor with content volume sensing and content deduction logic
  6. US20180104114A1 — Smart diaper for detecting and differentiating feces and urine
  7. US20170143168A1 — Infant washer and diaper-changer apparatus and method
  8. US10874332B2 — Respiration monitor
  9. US20200405582A1 — Pacifier with Onboard Drop Sensor and Notifications