Nikeの特許を眺めていると、靴や服がだんだん『受け身の道具』ではなくなっていきます。熱や水分で服の生地構造が変わり、足の動きが靴への入力になる。服は身体の位置を測り、必要なら触覚で合図を返します。
素材や構造も、身体に合わせて働きます。磁石で片手でも留めやすくする機構、複数の空気室を別々の圧力にするソール、身体に沿って曲がる冷却パック。機械化の方向はモーターやセンサーだけでなく、素材や構造にも広がっています。
8件とも、各特許と製品との直接の対応は未確認です。
熱や水分に反応して、服の生地そのものが通気性を変える
どんな発明?
この特許は、水分、温度、風などの物理刺激によって構造が変化するテキスタイルを衣服へ組み込みます。刺激を受ける前後で生地の開口や厚みなどが変わり、空気や水の通りやすさを変えられます。
センサーとモーターを追加するのではなく、生地そのものを反応する部品として使う発想です。着用中の環境に合わせて、服の素材構造が受動的な布から可変機構へ変わります。
- ASSIGNEE
- Nike Inc
- PRIORITY
- 2004-03-19
- PUBLISHED
- 2005-09-22
- PUBLICATION
- US20050208860A1
- INVENTORS
- Michael Baron / Karin Carter / Bhupesh Dua
足を動かすジェスチャーそのものが靴を締めるボタンになる
どんな発明?
この特許では、圧力や動きを検出するセンサーから『操作のための足の動き』を見分け、モーター式の締め付け機構へ命令します。まず合図となるジェスチャーで操作待ち状態へ入り、その後の動きで締める・緩めるといった指示を出します。
手で靴ひもを触らなくても、足そのものがコントローラーになります。ウェアラブル機器を操作するために別のリモコンを持つのではなく、装着している身体を入力装置にする発想です。
- ASSIGNEE
- Nike Inc
- PRIORITY
- 2012-02-22
- PUBLISHED
- 2016-09-15
- PUBLICATION
- US20160262485A1
- INVENTORS
- Steven H. Walker
靴の表面に、印刷ではなく立体的な『画像』を持たせる
どんな発明?
ここでいうdisplayは液晶画面ではありません。半透明の層に厚い部分と薄い部分を作り、下の背景との組み合わせで模様や画像を見せる構造です。
靴のグラフィックを単純に印刷するのではなく、素材の厚みや光の透過まで含めて外観を設計します。アパレルの表面自体が情報を見せるレイヤーになります。
- ASSIGNEE
- Nike Inc
- PRIORITY
- 2010-05-13
- PUBLISHED
- 2019-04-25
- PUBLICATION
- US20190118416A1
- INVENTORS
- James E. Diepenbrock / Connie A. Sarkinen / Todd A. Waatti
服が身体の位置を測り、間違った姿勢を触覚で教える
どんな発明?
この特許は、衣服に超音波ベースの位置検知センサーと触覚フィードバック装置を配置し、ヨガや運動中の身体位置を評価する構成を扱います。
画面を見て姿勢を直す代わりに、服そのものが『ここを動かして』と身体へ直接合図します。ウェアラブルが測定器と出力装置を同時に担う例です。
- ASSIGNEE
- Nike Inc
- PRIORITY
- 2015-11-30
- PUBLISHED
- 2020-10-22
- PUBLICATION
- US20200334962A1
- INVENTORS
- Ernest Kim
靴を磁石で片手でも素早く留める
どんな発明?
磁石だけで固定するのではなく、雄側パーツが雌側のくぼみに決まった向きで入り込むよう形状を作り、ねじれや外れを抑えます。
磁力による位置合わせとパーツの形状が片手で靴を留める動作を助けます。
- ASSIGNEE
- Nike Inc
- PRIORITY
- 2017-08-30
- PUBLISHED
- 2020-09-17
- PUBLICATION
- US20200288800A1
- INVENTORS
- Giorgio Anceresi / Eric Y. Lee
氷を入れる服を身体に沿って曲がる構造にする
どんな発明?
従来の冷却ベストは、氷や冷却材が硬く、身体から浮いたり動きを妨げたりしやすいという課題があります。この特許は柔軟な冷却パックと衣服側のポケット構造を組み合わせます。
服がセンサーになるだけでなく、身体と環境の間で熱を運ぶ装置にもなります。運動前後や暑熱環境で、衣服の役割を温度制御まで広げる発想です。
- ASSIGNEE
- Nike Inc
- PRIORITY
- 2018-08-30
- PUBLISHED
- 2020-12-24
- PUBLICATION
- US20200397072A1
- INVENTORS
- Jacob R. Arnold / Baron C. Brandt / Alexander J. Dedman / Payton A. Rose / Kevin C. Sze
かかとと前足部で、空気圧を別々に変えられるソール
どんな発明?
ソール内部の空気室を一つの圧力で使うのではなく、バルブで前足部と踵側などの空気室を分け、それぞれ別の圧力へ設定できる構造です。
靴底は固定されたクッションではなく、場所ごとに硬さを変えられる流体系になります。履き心地だけでなく、用途や動きに応じて足の下の状態そのものを変える余地が生まれます。
- ASSIGNEE
- Nike Inc
- PRIORITY
- 2011-04-06
- PUBLISHED
- 2025-02-20
- PUBLICATION
- US20250057288A1
- INVENTORS
- Elizabeth Langvin / James Molyneux / Lee D. Peyton / Ty A. Ransom / Nicola J. Reynolds / Aaron B. Weast
靴の中にヒーターと電池を入れて、足先を内側から温める
どんな発明?
この特許は、靴の内側に取り外せるライナーを設け、そのライナーへ加熱素子、配線、電池収納部を組み込む構成を扱います。特に足先を覆うtoe cap周辺へヒーターを配置します。
電源と発熱体を履物の構造そのものへ統合します。冷却ベストとは逆に、衣服側から身体へ熱を返す例です。
- ASSIGNEE
- Nike Inc
- PRIORITY
- 2012-08-29
- PUBLISHED
- 2014-03-06
- PUBLICATION
- US20140059882A1
- INVENTORS
- Jaroslav J. Lupinek / Patricia L. Smaldone
AFTER THE FIGURES
身体を読んで動く服や靴
服や靴は、身体に合わせるものから身体を読んで動くものへ変わろうとしています。Nikeの8件の特許では、通気構造、締め付け、表示、触覚、冷却、空気圧、加熱といった機能が、靴や服の中へ分散して埋め込まれています。
特に靴は小さな機械に近づいています。モーターで締め、足の動きを入力として受け取り、足元を温め、ソール内部の空気室まで調整する。『履く』という一度きりの動作の後も、状態が変わり続ける前提で設計されています。
一方で服は、身体や環境へ反応するインターフェースになります。熱や水分で通気性を変え、位置を測り、触覚で返し、冷やす。未来のスポーツウェアは身体を包む布というより、身体と環境の間で情報や熱をやり取りする薄い機械層に近づいています。
SOURCES
一次資料
- US20050208860A1 — Article of apparel incorporating a modifiable textile structure
- US20160262485A1 — Motorized Shoe With Gesture Control
- US20190118416A1 — Device for displaying image on apparel
- US20200334962A1 — Apparel with ultrasonic position sensing and haptic feedback for activities
- US20200288800A1 — Magnetic fastener for an article of footwear
- US20200397072A1 — Flexible cooling garment system
- US20250057288A1 — Adjustable Multi-Bladder System For An Article Of Footwear
- US20140059882A1 — Article of Footwear with a Heating System
