ペットと暮らすことは、毎日の小さな世話の連続です。様子を見て声を聞き、ごはんを出し、一緒に遊び、散歩し、身体を洗い、トイレを片付けます。特許図面を横断すると、その一つひとつを機械へ渡そうとする発明が見つかります。

しかも自動化されるのは力仕事だけではありません。犬の吠え声から感情を推定し、首輪が行動や居場所を記録し、留守中にはカメラ越しに顔を合わせ、ロボットの手が背中をかきます。最後には散歩や排泄後の片付けまで機械の役割になっていきます。

ここで紹介する10件はUS公開特許です。今回、公式製品との近い関係を確認できたPetSafeのボールランチャーだけを「関連製品あり」としています。

FIG. 01

吠え声の周波数から犬の「気持ち」を分類する

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20030221630A1
US20030221630A1 / FIG. 2。犬の声を周波数パターンへ変換し、あらかじめ用意した感情パターンと比較する。
FIG. 01US20030221630A1
犬の鳴き声を時間と周波数の分布として表した感情判定用の特許図面。

US20030221630A1 / FIG. 2。犬の声を周波数パターンへ変換し、あらかじめ用意した感情パターンと比較する。

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どんな発明?

この特許は犬の鳴き声を電気信号へ変換し、時間と周波数の特徴を取り出して、感情ごとの参照パターンと比較します。分類対象にはloneliness、frustration、aggressiveness、assertiveness、happiness、wistfulnessが挙げられています。

普通のペット機器が犬の位置や動きを測るのに対し、ここで測ろうとしているのは『どう感じているか』です。飼い主にしか分からないと思われていた解釈を、音響分析の問題として扱います。

Takara Co Ltd / Index CorpFIG. 01
ASSIGNEE
Takara Co Ltd / Index Corp
PRIORITY
2001-08-06
PUBLISHED
2003-12-04
PUBLICATION
US20030221630A1
INVENTORS
Matsumi Suzuki
ORIGINAL
FIG. 02

首輪が犬の居場所と身体の状態をずっと見ている

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20210120787A1
US20210120787A1 / FIG. 1。首輪のストラップへセンサーや通信モジュールを収める。
FIG. 02US20210120787A1
電子モジュールを分解表示したスマート犬用首輪の特許図面。

US20210120787A1 / FIG. 1。首輪のストラップへセンサーや通信モジュールを収める。

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どんな発明?

スマート首輪は動物に装着するウェアラブルへ複数のセンサーと無線通信機能を集めます。位置や活動だけでなく、周囲の環境や他の機器との接続も含めて継続的に記録する構成です。

人間のスマートウォッチと同じように、ペットにも『何も起きていない時間』を測るデバイスが付きます。世話は目の前で観察する行為から、ログを読む行為へ変わります。

Smart Tracking Technologies LLCFIG. 02
ASSIGNEE
Smart Tracking Technologies LLC
PRIORITY
2016-09-07
PUBLISHED
2021-04-29
PUBLICATION
US20210120787A1
INVENTORS
Joseph T. McKee / Michael A. Basone / Heberto J. Calves
ORIGINAL
FIG. 03

おやつをカメラの前に置き、犬をビデオ通話へ振り向かせる

SOURCE FIGURESFIG. 2A
PUBLICATIONUS20190380303A1
US20190380303A1 / FIG. 2A。カメラ付近に見えるおやつを置き、ペットの視線をレンズへ向ける。
FIG. 03US20190380303A1
カメラとおやつ置き場を組み合わせたペット用ビデオ通話装置の特許図面。

US20190380303A1 / FIG. 2A。カメラ付近に見えるおやつを置き、ペットの視線をレンズへ向ける。

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どんな発明?

遠隔カメラがあっても、犬がカメラを見てくれるとは限りません。この特許はおやつをいったん見える場所へ提示し、その視線の先にカメラを置きます。

機械が解いているのは、『犬にカメラ目線をしてもらう』という撮影現場のような問題です。離れている飼い主とペットの交流を、動物の注意そのものから設計します。

IndividualFIG. 03
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2018-06-18
PUBLISHED
2019-12-19
PUBLICATION
US20190380303A1
INVENTORS
Andrew Peter Davis
ORIGINAL
FIG. 04

留守番中、ロボットの手が犬の背中をかく

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20220000071A1
US20220000071A1 / FIG. 1。犬を認識し、おやつで位置を誘導してから可動アームで身体をかく。
FIG. 04US20220000071A1
可動アームと指、カメラ、おやつディスペンサーを備えた犬用自動背中かきロボットの特許図面。

US20220000071A1 / FIG. 1。犬を認識し、おやつで位置を誘導してから可動アームで身体をかく。

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どんな発明?

カメラとモーションセンサーで犬が近づいたことを確認し、おやつを出して適切な位置へ誘導した後、関節を持つアームと指を動かして犬をかくシステムです。

さらにマイクやスピーカー、スマートフォン経由の遠隔操作も想定されています。留守番中の交流が見る・話すだけでなく『触る』ところまで機械化されます。

IndividualFIG. 04
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2020-07-04
PUBLISHED
2022-01-06
PUBLICATION
US20220000071A1
INVENTORS
Cassidy Matwiyoff / Alexander Matthew Lopez / Daniel Sousa Jr. / Nicholas Ganson Repanich / David G. Alexander / Nicholas Chenevey / Marco Antonio Machuca-Romera / John Chen Danley / Luis Alberto Arevalo
ORIGINAL
FIG. 05

ごはんをベルトで少しずつ運び、食べた量まで測る

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20210022317A1
US20210022317A1 / FIG. 2。フードを歯付きベルトで持ち上げ、一定量ずつ皿へ落とす。
FIG. 05US20210022317A1
ホッパーと歯付きコンベヤーベルト、給餌皿からなる自動ペットフィーダーの特許図面。

US20210022317A1 / FIG. 2。フードを歯付きベルトで持ち上げ、一定量ずつ皿へ落とす。

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どんな発明?

フードの詰まりや量のばらつきを減らすため、粒を回転羽根で押し出すのではなく、歯付きコンベヤーベルトで上へ運んで皿へ落とします。

皿の重量を測る構成や、カメラ、Wi-Fi、マイク、スピーカーも想定され、単なるタイマー式の餌箱から『食べ方まで記録する機械』へ広がっています。

IndividualFIG. 05
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2017-09-06
PUBLISHED
2021-01-28
PUBLICATION
US20210022317A1
INVENTORS
Zilong Ling
ORIGINAL
FIG. 06

犬がボールを戻すと、機械がまた投げる

SOURCE FIGURESFIG. 1A
PUBLICATIONUS20160161208A1
US20160161208A1 / FIG. 1A。犬が上のファネルへボールを戻すと、内部機構が再び発射する。
FIG. 06US20160161208A1
上部の投入口とボール射出口を備えた自動ボールランチャーの特許図面。

US20160161208A1 / FIG. 1A。犬が上のファネルへボールを戻すと、内部機構が再び発射する。

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どんな発明?

この装置は、犬が取ってきたボールを上部のファネルへ自分で戻す前提で作られています。ボールを検知すると、内部のハンマー機構で再び発射します。

つまり『人が投げ、犬が取る』遊びから、人の投球だけを切り離します。犬がループを覚えれば、遊び相手がいなくてもfetchを続けられます。

Radio Systems CorpFIG. 06
ASSIGNEE
Radio Systems Corp
PRIORITY
2014-12-06
PUBLISHED
2016-06-09
PUBLICATION
US20160161208A1
INVENTORS
Eric A. Ward
ORIGINAL
FIG. 07

無人車にリードを預けると、犬だけで散歩へ出発する

SOURCE FIGURESFIG. 17
PUBLICATIONUS20220104457A1
US20220104457A1 / FIG. 17。散歩を案内する車両に、尿へ水を流す装置と便を拾うアームまで載せる。
FIG. 07US20220104457A1
犬のリードをつなぐ自動走行車に、水タンクと排泄物回収アームを備えたToyotaの特許図面。

US20220104457A1 / FIG. 17。散歩を案内する車両に、尿へ水を流す装置と便を拾うアームまで載せる。

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どんな発明?

Toyotaの特許は、自動走行車へ犬のリードをつなぎ、犬との距離を保ちながら決められたルートを歩くwalk guidance modeを扱います。飼い主が同伴しない散歩代行まで明記されています。

FIG. 17の実施形態ではさらに、水タンクとホースで尿へ水を流し、関節アームの先の手で便を拾って袋へ収める構成まで加わります。散歩という一連の仕事を、移動だけでなく後片付けまでまとめて機械へ渡しています。

Toyota Motor CorpFIG. 07
ASSIGNEE
Toyota Motor Corp
PRIORITY
2020-10-02
PUBLISHED
2022-04-07
PUBLICATION
US20220104457A1
INVENTORS
Saki Narita / Tetsuya Kanata / Yozo Iwami / Daisaku Honda / Yuhei Katsumata / Hideki Fukudome / Takuya Watabe / Naoko Ichikawa / Yuta Maniwa / Yuki Nishikawa / Daisuke Ishii / Daisuke Sato
ORIGINAL
FIG. 08

左右のブラシが動き、犬を自動で洗う

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20180206449A1
US20180206449A1 / FIG. 1。浴槽の両側にブラシ板を置き、前後・上下へ動かしながら水を噴射する。
FIG. 08US20180206449A1
浴槽の左右に移動式ブラシ機構を配置した犬用自動洗浄機の特許図面。

US20180206449A1 / FIG. 1。浴槽の両側にブラシ板を置き、前後・上下へ動かしながら水を噴射する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

犬を入れる浴槽の左右にブラシ板を配置し、モーター機構で前後や上下へ動かしながら、水を噴射して毛を洗います。

従来の自動洗浄が水をかけるだけになりやすい点に対し、人の手洗いで重要だった『こする』動作まで機械へ移そうとしています。

IndividualFIG. 08
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2016-01-22
PUBLISHED
2018-07-26
PUBLICATION
US20180206449A1
INVENTORS
Weijian Zhang
ORIGINAL
FIG. 09

猫が出たあと、トイレ全体が回って自分でふるいにかける

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20190166789A1
US20190166789A1 / FIG. 1。円形のbasinを回転させ、内部のスクリーンで排泄物と砂を分ける。
FIG. 09US20190166789A1
円筒形の回転槽と廃棄物容器を備えたセルフクリーニング猫トイレの特許図面。

US20190166789A1 / FIG. 1。円形のbasinを回転させ、内部のスクリーンで排泄物と砂を分ける。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

猫が使った後、円筒状のbasinそのものを回転させ、内部のフィルタースクリーンで砂と排泄物を分離します。排泄物は後方の容器へ送られます。

モーションセンサーを使えば、猫が中にいないことを確認してから自動回転させる構成も取れます。毎日の掃除が『トイレを回す処理』へ変わります。

IndividualFIG. 09
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2017-10-20
PUBLISHED
2019-06-06
PUBLICATION
US20190166789A1
INVENTORS
Bruce Keith Turner
ORIGINAL
FIG. 10

最後は家の方がどのペットを通してよいか判断する

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20120266540A1
US20120266540A1 / FIG. 1。近づいたペットを識別し、許可された個体だけに扉を開く。
FIG. 10US20120266540A1
個体識別機能と電動スライドドアを備えた自動ペットドアの特許図面。

US20120266540A1 / FIG. 1。近づいたペットを識別し、許可された個体だけに扉を開く。

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どんな発明?

ペットが持つキーを識別し、その個体が許可されている場合だけ電動ドアを開きます。同じ家の複数のペットごとに、方向や時間帯まで変える構成が想定されています。

ここで機械が担当するのは、『家へ入れてよいか』という判断です。家の境界そのものがペットを認識するインターフェースになります。

IndividualFIG. 10
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2005-03-21
PUBLISHED
2012-10-25
PUBLICATION
US20120266540A1
INVENTORS
Crosby S. Noyes
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

ペットの未来では「飼い主がすること」の境界が動いていく

感情を読む、見守る、声をかける、触れる、遊ぶ、食べさせる、歩かせる、洗う、片付ける。10件では、人と動物の間にあった行為そのものが、一つずつ機械の機能へ分解されています。

特に象徴的なのがToyotaの散歩用ガイダンス車です。犬をリードにつなぎ、自動走行し、排泄すれば水を流し、別の構成ではアームで便を回収するところまで想定します。これは新しい首輪ではなく、『散歩に付き添う人』という役割を機械に置き換える発想です。

一方で、犬の気持ちを読む装置や、カメラ目線を作る遠隔通話装置は、世話を減らすというより関係を保つための機械です。ペットテックの未来は人を完全に消す方向ではなく、人がそこにいない時間にも世話や交流を続ける方向へ広がっているように見えます。

SOURCES

一次資料

  1. US20030221630A1 — Apparatus for determining dog's emotions by vocal analysis of barking sounds and method for the same
  2. US20210120787A1 — Smart animal collar system
  3. US20190380303A1 — Device and method for directing a pet's gaze during video calling
  4. US20220000071A1 — Automatic dog back scratcher system and method of using same
  5. US20210022317A1 — Automatic pet feeder
  6. US20160161208A1 — Automatic Ball Launcher
  7. US20220104457A1 — Guidance vehicle
  8. US20180206449A1 — Automatic dog washing machine
  9. US20190166789A1 — Self-Cleaning Litter Box
  10. US20120266540A1 — Automatic pet door