焼く、形を作る、栄養を決める、注文する、味わう、香りを感じる、口へ運ぶ、食べた量を測る、テーブルへ届ける。特許図面では、食事を構成する小さな行為が、一つずつ機械の仕事へ分解されています。
その結果、料理そのものだけでなく、食べる前後までが変わります。注文前の料理はARでテーブル上に現れ、舌の上では電気刺激で味覚を再現しようとし、香りはカートリッジから選ばれます。スプーンは食べ物の成分を読み、皿は重さ・塩分・温度を測り、できあがった料理はロボットが運びます。
今回の10件について、特許公報と特定の市販製品が一対一に対応するという一次情報は確認できませんでした。ただしFIG.05とFIG.09には、別会社が実際に公開・販売している近い製品があるため、この2件だけはPatent → Productを「関連製品あり」としています。
人の隣でロボットアームがハンバーガーをひっくり返す
どんな発明?
Miso Roboticsの特許は、厨房をカメラやセンサーで観察し、食材や調理器具の種類と位置を認識しながら、人間の作業者を支援する自動キッチンシステムを扱っています。FIG. 1Aでは、人のすぐ隣でロボットアームがへらを持ち、グリル上のハンバーガーを返しています。
専用の自動販売機の中で料理するのではなく、人間向けにできた既存の厨房へ機械が入り込んでいる点が重要です。特許は焼く・切る・混ぜる・盛り付けるなど幅広い調理工程をロボットアームで行う可能性を説明しています。
- ASSIGNEE
- Miso Robotics Inc
- PRIORITY
- 2021-06-03
- PUBLISHED
- 2022-12-08
- PUBLICATION
- US20220386807A1
- INVENTORS
- Ryan W. Sinnet / Robert Anderson
チョコレートを「焼く」のではなく、層ごとにプリントする
どんな発明?
「3d food printer」は、食品材料を積層して立体形状を作るプリンターです。FIG. 1では、プリントヘッド、冷却システム、搬送システムなどが一台の装置にまとめられています。明細書ではチョコレートを代表例として、材料を加熱してノズルから押し出し、層ごとに形を作る工程が説明されています。
レシピが「何グラム混ぜて何分焼くか」だけでなく、CADモデルのような形状データを持つようになるのがポイントです。食べ物の外形まで、調理ではなく製造データとして扱えます。
- ASSIGNEE
- Shanghai Fochif Electromechanical Technology Co Ltd
- PRIORITY
- 2016-04-14
- PUBLISHED
- 2017-10-19
- PUBLICATION
- US20170295816A1
- INVENTORS
- YunGan Wang / Tong Chen / Xuan Wang / Wengao Hu / Yulin Zhao / Hao Yin
血液や尿の測定結果からその人専用の栄養を出す
どんな発明?
Nestlé系の特許は、個人の状態に合わせて栄養成分を調整した組成物を作るシステムを描いています。FIG. 1では、被験者から得たサンプルを診断測定装置へ入れ、その結果をコントローラーが受け取り、栄養ディスペンサーへつなぐ流れが一枚の図になっています。
明細書では血液や尿などのサンプルを例示し、測定値を配合の計算へ使う構成を提案しています。図の「Required micronutrient intake」はシステムが算出する出力であり、その人に必要な栄養量を正しく判断できることや、摂取による健康効果をこの図が実証しているわけではありません。
- ASSIGNEE
- Societe des Produits Nestle SA
- PRIORITY
- 2014-05-21
- PUBLISHED
- 2017-06-08
- PUBLICATION
- US20170156386A1
- INVENTORS
- Edward Baetge / Nicolas Bouche / Serge Andre Dominique Rezzi
注文する前に料理をARでテーブルへ置いてみる
どんな発明?
「Augmented reality menu」は、携帯端末のカメラでテーブルを映し、その映像上へ料理を仮想的に配置するメニューです。FIG. 1では、端末越しに見えるテーブルと客は実在し、皿はARとして画面上にだけ現れます。
料理名や写真を見るだけではなく、「自分の目の前に置かれたらどう見えるか」を注文前に確認できます。明細書にはそのAR表示から注文操作へ進む構成も記載されています。
- ASSIGNEE
- Individual
- PRIORITY
- 2021-11-18
- PUBLISHED
- 2022-09-06
- PUBLICATION
- US11436666B1
- INVENTORS
- Enzo Dalmazzo
舌に電気信号を与えて「味」を電子的に作る
どんな発明?
Philipsの特許は、化学物質そのものではなく電気刺激で味覚を作ろうとします。FIG. 3Aと3Bには、舌に載せるプレート内の刺激ノード構成が描かれています。各ノードへ信号を送り、舌の感覚神経を直接刺激する仕組みです。
明細書では、甘味・酸味・塩味・苦味などの味覚をシミュレートし、映像コンテンツなどと同期させる用途まで想定しています。掲載図は電極の構成案であり、各種の味を再現できたことを示す実験結果ではありません。食べ物が口に入っていなくても、「味」という感覚だけを別の出力として扱おうとしています。
- ASSIGNEE
- Koninklijke Philips NV
- PRIORITY
- 2004-01-27
- PUBLISHED
- 2008-09-25
- PUBLICATION
- US20080234604A1
- INVENTORS
- Tom Burgmans
香りをカートリッジ化して必要な匂いだけを出す
どんな発明?
Aromajoinの「Aroma display」は、複数の香りカートリッジから選んだ香りを放出する装置です。FIG. 2の分解図では、円形の筐体内部にカートリッジ群や送風機構を高密度に収める構成が見えます。
特許は、個々のカートリッジへ別々に空気を送り、香りを中央付近へ導く仕組みを説明しています。コーヒーやミントなど異なる香りを交換可能なカートリッジとして扱えるため、匂いが音や映像のような選択可能な出力になります。
- ASSIGNEE
- Aromajoin Corp
- PRIORITY
- 2019-11-12
- PUBLISHED
- 2022-03-29
- PUBLICATION
- US11285235B2
- INVENTORS
- Kazuhiro Nakano / Quang Van Nguyen / Dong Wook Kim
スプーンが口へ運ぶ食べ物の成分まで読む
どんな発明?
「Smart Watch and Food Utensil for Monitoring Food Consumption」は、食事を記録するためのスマートスプーンとウェアラブル装置を組み合わせた特許です。FIG. 1〜4では、スプーン内の化学組成センサーや通信部と、手首側の監視装置がまとめて示されています。
明細書では、スプーンが接触した食品の種類・材料・栄養素を化学的または光学的に分析し、その情報をスマートウォッチなどへ送る構成が説明されています。食事記録を人が後から入力するのではなく、食べる動作そのものから取得しようとします。
- ASSIGNEE
- Medibotics LLC
- PRIORITY
- 2013-05-23
- PUBLISHED
- 2014-11-27
- PUBLICATION
- US20140349257A1
- INVENTORS
- Robert A. Connor
皿が食べた量・塩分・温度を測り続ける
どんな発明?
ETRIの「Meal plate for guiding correct eating habits and adjusting amount of meal」は、複数の容器を載せる機能性プレートです。FIG. 1には、容器を収める区画、入力部、表示部、スピーカーなどが一体になった食卓用デバイスが描かれています。
特許は、容器内の食品について重さの変化、塩分、温度を測定し、保存・表示したりユーザー端末へ送信したりする構成を記載しています。食べ終わった後の自己申告ではなく、一口ずつ減っていく過程を皿側から観察できます。
- ASSIGNEE
- Electronics and Telecommunications Research Institute ETRI
- PRIORITY
- 2010-11-29
- PUBLISHED
- 2012-05-31
- PUBLICATION
- US20120135383A1
- INVENTORS
- YongWon Jang / Hyung Wook NOH / Inbum Lee / Yoon Seon Song / Sooyeul Lee
できあがった料理は三段トレーのロボットが運ぶ
どんな発明?
RGTの「Restaurant service robot」は、料理を収める多段トレー、走行部、制御部などを備えた配膳ロボットです。FIG. 1では、縦に積み重なった三つのトレーを持つロボット全体が描かれています。
調理が終わっても、料理は厨房から客席へ移動しなければなりません。この特許はその「持って歩く」工程を独立した移動ロボットへ切り出しています。
- ASSIGNEE
- Rgt Inc
- PRIORITY
- 2020-07-22
- PUBLISHED
- 2023-03-30
- PUBLICATION
- US20230095636A1
- INVENTORS
- Ho Jeong JEONG
最後は巨大ロボットアームがカクテルを作るバーになる
どんな発明?
「Interactive robotic station for beverage, in particular cocktail, preparation and dispensing」は、飲料、とくにカクテルを自動で準備・提供するためのロボットステーションです。FIG. 2では、大型のロボットアームや供給機構、作業台が一つのシステムとして分解表示されています。
注文入力から飲料の調合・提供までを機械の動作へつなげることで、バーテンダーの手仕事を一連のロボット動作へ変換します。記事の最初では一枚のバーガーを返していたロボットが、最後にはバー全体の舞台装置になります。
- ASSIGNEE
- Individual
- PRIORITY
- 2013-04-09
- PUBLISHED
- 2016-02-25
- PUBLICATION
- US20160052770A1
- INVENTORS
- Carlo Filippo Ratti
AFTER THE FIGURES
食事の未来は「一皿の発明」より工程のプログラム化に近い
10件では、食事を構成する工程ごとに別の機械が働きます。ロボットで焼く、プリンターで形を作る、測定情報に応じて栄養成分の配合を変える、ARで選び方を変える。それぞれの提案が描かれています。その後も味覚、香り、食器、配膳まで、それぞれの工程に別の機械が入り込みます。
特に面白いのは、「食べる」という人間側の行為まで計測と出力の対象になっていることです。舌は刺激を受けるインターフェースになり、スプーンと皿はセンサーになり、香りはディスプレイになります。食事は栄養を摂る行為であると同時に、入出力を持つシステムのように扱われ始めます。
これまで人が無意識にまとめて行っていた判断や感覚を細かく分解し、それぞれを測定・制御・再生できるようにする。その積み重ねの先に、今とはかなり違う「食事」が現れるのかもしれません。
SOURCES
一次資料
- US20220386807A1 — Automated kitchen system for assisting human worker prepare food
- US20170295816A1 — 3d food printer
- US20170156386A1 — System, process and device for producing a nutritional composition with personalized nutrient content
- US11436666B1 — Augmented reality menu
- US20080234604A1 — Method and Apparatus For Simulating Taste Sensations in a Taste Simulation System
- US11285235B2 — Aroma display
- US20140349257A1 — Smart Watch and Food Utensil for Monitoring Food Consumption
- US20120135383A1 — Meal plate for guiding correct eating habits and adjusting amount of meal
- US20230095636A1 — Restaurant service robot
- US20160052770A1 — Interactive robotic station for beverage, in particular cocktail, preparation and dispensing
