Snapというと、スマートフォンのカメラやARレンズを思い浮かべます。けれど特許図面を横断して見ると、画面の中へ機能を足すだけではなく、画面そのものを中心から外していく発明が何度も現れます。腕時計がランチャーになり、指がコントローラーになり、二人の手が共有ARの位置合わせに使われます。

さらに進むと、操作対象は部屋へ広がります。メガネがプロジェクターや送風機を動かし、音が目的地まで人を誘導し、服はカメラ越しに着替えられます。壁の向こうには見えない相手を重ね、細かな作業には拡大像を置き、最後には表示装置そのものが目の表面まで近づきます。

Snap Inc.のUS公開特許に記された10件の提案です。From Patentsでは、特定の市販製品への一対一の実装は確認できていません。

FIG. 01

腕時計を見ればそこがARのランチャーになる

SOURCE FIGURESFIG. 15
PUBLICATIONUS20210397000A1
US20210397000A1 / FIG. 15。腕時計の位置へARメニューを固定し、手首を画面代わりの操作面として使う。
FIG. 01US20210397000A1
ARメガネを装着した利用者が腕時計をかざし、その周囲に3Dランチャーの項目を表示するSnapの特許図面。

US20210397000A1 / FIG. 15。腕時計の位置へARメニューを固定し、手首を画面代わりの操作面として使う。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許は、ARメガネのGUIを腕時計の位置へ固定する発明です。FIG. 15では、利用者が腕時計を見ると、その周囲にカメラや車などの3D項目を含むランチャーが現れる例が描かれています。

空中のどこにでもメニューを浮かべるのではなく、現実にある腕時計を基準点にします。利用者は手首を持ち上げるという慣れた動作で、ARのメニューを呼び出せます。

Snap Inc.FIG. 01
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2017-08-25
PUBLISHED
2021-12-23
PUBLICATION
US20210397000A1
INVENTORS
Jonathan M. Rodriguez II
ORIGINAL
FIG. 02

指の動きだけでメガネの中の表示を操作する

SOURCE FIGURESFIG. 7
PUBLICATIONUS20220197393A1
US20220197393A1 / FIG. 7。メガネが手のジェスチャーを認識し、視界内の仮想コンテンツ操作へ変える。
FIG. 02US20220197393A1
ARメガネの視界に重なる仮想コンテンツを、利用者の手指ジェスチャーで操作するSnapの特許図面。

US20220197393A1 / FIG. 7。メガネが手のジェスチャーを認識し、視界内の仮想コンテンツ操作へ変える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Gesture control on an eyewear device」は、ARメガネが利用者の手を捉え、ジェスチャーを仮想コンテンツの操作へ変換する発明です。FIG. 7では、視界内の表示と手指の操作関係がひとつの画面で示されています。

手にコントローラーを持たせる代わりに、指の位置や動き自体を入力として扱います。見るための装置と操作するための装置を分けず、視界の中でそのまま触る方向へ寄せています。

Snap Inc.FIG. 02
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2020-12-22
PUBLISHED
2022-06-23
PUBLICATION
US20220197393A1
INVENTORS
Kyle Goodrich / Andrew James McPhee / Daniel Moreno
ORIGINAL
FIG. 03

二人の指先を合わせて同じAR空間の位置をそろえる

SOURCE FIGURESFIG. 5B, FIG. 5C
PUBLICATIONUS20240288946A1
US20240288946A1 / FIGS. 5B–5C。二人の手を共通の目印として使い、別々のメガネが見ているAR座標をそろえる。
FIG. 03US20240288946A1
ARメガネを装着した二人の利用者が指先を触れ合わせ、その手を共有座標の位置合わせに使うSnapの特許図面。

US20240288946A1 / FIGS. 5B–5C。二人の手を共通の目印として使い、別々のメガネが見ているAR座標をそろえる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

共有ARでは、二台のメガネが「同じ場所」を同じ座標として理解する必要があります。この特許では、二人の利用者が指先を触れ合わせ、その手や関節位置を両方の装置から見える共通マーカーとして使います。

FIGS. 5B–5Cでは、向かい合った二人が手を伸ばし、指先の接触と手の関節を位置合わせへ利用する様子が描かれています。専用マーカーを床や壁へ置かず、人の身体で座標を共有します。

Snap Inc.FIG. 03
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2023-02-28
PUBLISHED
2024-08-29
PUBLICATION
US20240288946A1
INVENTORS
Georgios Evangelidis / Bernhard Jung / Ilteris Kaan Canberk / Daniel Wolf / Balázs Töth / Márton Gergely Kajtár / Branislav Micusik
ORIGINAL
FIG. 04

スマホを筆にして空中へ3Dで描く

SOURCE FIGURESFIG. 8A
PUBLICATIONUS20240211057A1
US20240211057A1 / FIG. 8A。手元の物理端末を仮想の筆として動かし、AR空間へ立体図形を描く。
FIG. 04US20240211057A1
ARメガネの視界内で、立体的な線や箱を描画する3DペインティングのSnap特許図面。

US20240211057A1 / FIG. 8A。手元の物理端末を仮想の筆として動かし、AR空間へ立体図形を描く。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許では、スマートフォンなどの物理端末を「仮想の筆」として扱い、その動きをARメガネが追跡して3D空間へ線や形を描きます。FIG. 8Aでは、視界内に立体的な箱と色分けされた辺が表示されています。

平面のタッチ画面へ絵を描くのではなく、端末の位置と姿勢をそのまま3D入力へ使います。筆先が画面の表面から空間へ出ていきます。

Snap Inc.FIG. 04
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2020-06-30
PUBLISHED
2024-06-27
PUBLICATION
US20240211057A1
INVENTORS
Ilteris Canberk / Daniel Moreno
ORIGINAL
FIG. 05

メガネが部屋へ入ると現実の機械の方が反応する

SOURCE FIGURESFIG. 9B
PUBLICATIONUS20240045494A1
US20240045494A1 / FIG. 9B。利用者の位置や頭の向きに応じて、プロジェクターなど現実側の機器をAR体験へ組み込む。
FIG. 05US20240045494A1
ARメガネを装着した利用者が室内に入り、投影装置などのIoT機器を連動させるSnapの特許図面。

US20240045494A1 / FIG. 9B。利用者の位置や頭の向きに応じて、プロジェクターなど現実側の機器をAR体験へ組み込む。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Augmented reality with eyewear triggered IoT」は、メガネが場所や姿勢を把握し、周囲のIoT機器へ指示を出してAR体験と連動させる発明です。FIG. 9Bでは、利用者の前方へ投影された太陽のような像と、その方向へ重なるAR表現が描かれています。

明細書では、頭の向きに合わせてプロジェクターの表示位置を変えたり、方向を変えられる送風機を連動させたりする例も説明されています。メガネの中だけで完結せず、部屋の機械そのものが出力装置になります。

Snap Inc.FIG. 05
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2020-03-31
PUBLISHED
2024-02-08
PUBLICATION
US20240045494A1
INVENTORS
Ilteris Canberk / Shin Hwun Kang / Doug Mead
ORIGINAL
FIG. 06

音の方向で目的地へ案内する

SOURCE FIGURESFIG. 6A, FIG. 6B
PUBLICATIONUS11089427B1
US11089427B1 / FIGS. 6A–6B。探している対象の方向から聞こえるように音を配置し、空間内を誘導する。
FIG. 06US11089427B1
ARメガネ利用者が室内の複数物体の間を、立体音響の方向を手掛かりに移動するSnapの特許図面。

US11089427B1 / FIGS. 6A–6B。探している対象の方向から聞こえるように音を配置し、空間内を誘導する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許は、ARメガネが周囲の空間から目的地や対象物を特定し、その方向から聞こえるような立体音響を出して利用者を誘導します。FIGS. 6A–6Bでは、部屋の中の複数の対象と利用者の位置関係が描かれています。

視界へ矢印を出し続けなくても、音源の方向を変えれば「こちらへ進む」を伝えられます。インターフェースが目の前の表示から耳の周囲へ広がります。

Snap Inc.FIG. 06
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2020-03-31
PUBLISHED
2021-08-10
PUBLICATION
US11089427B1
INVENTORS
Ilteris Canberk / Shin Hwun Kang / James Powderly
ORIGINAL
FIG. 07

服を着替えず画面の中だけ先に着替える

SOURCE FIGURESFIG. 8
PUBLICATIONUS20240062444A1
US20240062444A1 / FIG. 8。人物画像へ選んだ衣服を重ね、実際に着替える前に見た目を比較する。
FIG. 07US20240062444A1
スマートフォン画面の人物へ仮想の衣服を重ね、下部の服候補から切り替えるSnapのバーチャル試着特許図面。

US20240062444A1 / FIG. 8。人物画像へ選んだ衣服を重ね、実際に着替える前に見た目を比較する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Virtual clothing try-on」は、人物の画像や映像へ衣服を重ねて見せる発明です。FIG. 8では、スマートフォン上の人物へ服が合成され、下部に並んだ候補から別の衣服へ切り替えられる画面が示されています。

ECの商品画像を眺めるだけでなく、自分の身体を試着面にします。衣服という現実の物体を買う前に、見た目だけを先にデジタル側で交換できます。

Snap Inc.FIG. 07
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2020-12-11
PUBLISHED
2024-02-22
PUBLICATION
US20240062444A1
INVENTORS
Ma'ayan Mishin Shuvi / Avihay Assouline / Itamar Berger
ORIGINAL
FIG. 08

壁の向こうの人を透視したように重ねて見せる

SOURCE FIGURESFIG. 8A
PUBLICATIONUS20250203061A1
US20250203061A1 / FIG. 8A。遮蔽物の向こうにいる対象を別のセンサー情報から推定し、透視表示のように重ねる。
FIG. 08US20250203061A1
ARメガネ利用者の前に壁があり、その向こう側にいる別の人物をX-ray効果で表示するSnapの特許図面。

US20250203061A1 / FIG. 8A。遮蔽物の向こうにいる対象を別のセンサー情報から推定し、透視表示のように重ねる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Augmented reality eyewear with x-ray effect」は、利用者から直接見えない対象を外部のカメラやセンサー情報から取得し、遮蔽物の位置に合わせてAR表示する発明です。FIG. 8Aでは、壁を挟んだ二人の利用者と、見えない側を補う表示関係が描かれています。

本当に壁を透過して撮影するのではありません。別の視点で得た情報を空間の位置へ合わせることで、「そこに何がいるか」を透視したように見せます。

Snap Inc.FIG. 08
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2021-06-30
PUBLISHED
2025-06-19
PUBLICATION
US20250203061A1
INVENTORS
Edmund Brown / Benjamin Lucas / Simon Nielsen / Jonathan M. Rodriguez II / Richard Zhuang
ORIGINAL
FIG. 09

細かい作業だけ視界の中で虫眼鏡のように拡大する

SOURCE FIGURESFIG. 8A
PUBLICATIONUS20240036336A1
US20240036336A1 / FIG. 8A。現実の細部へ仮想マーカーを置き、その位置に対応する拡大像を視界内へ表示する。
FIG. 09US20240036336A1
歯科作業などの細かな対象の近くへ、拡大した映像を仮想マーカーに合わせて表示するSnapの特許図面。

US20240036336A1 / FIG. 8A。現実の細部へ仮想マーカーを置き、その位置に対応する拡大像を視界内へ表示する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Magnified overlays correlated with virtual markers」は、現実空間の対象へ仮想マーカーを置き、それと対応した拡大像をARメガネの視界へ表示する発明です。FIG. 8Aでは、細かな作業対象を拡大して確認する用途が描かれています。

頭を近づけたり手持ちのルーペを使ったりせず、必要な部分だけを別倍率で視界へ重ねます。現実の対象と、その拡大ビューを同時に見られるようにします。

Snap Inc.FIG. 09
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2022-07-28
PUBLISHED
2024-02-01
PUBLICATION
US20240036336A1
INVENTORS
Alexander Sourov / John James Robertson
ORIGINAL
FIG. 10

最後にはAR/VRの表示装置そのものをコンタクトレンズへ入れる

SOURCE FIGURESFIG. 8
PUBLICATIONUS20230350203A1
US20230350203A1 / FIG. 8。コンタクトレンズ内の光学要素で、通常視界とAR/VR表示を切り替える。
FIG. 10US20230350203A1
人の目とコンタクトレンズ内の光学系を示し、通常視界・AR・VR表示を切り替えるSnapの特許図面。

US20230350203A1 / FIG. 8。コンタクトレンズ内の光学要素で、通常視界とAR/VR表示を切り替える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「AR/VR enabled contact lens」は、コンタクトレンズへ光学要素や表示系を組み込み、通常の視界、AR、VRに相当する状態を切り替える発明です。FIG. 8では、目の表面に置かれたレンズと内部の光路が大きく描かれています。

メガネ型端末でさえ顔の前にある「機械」ですが、コンタクトレンズまで小さくなると、表示装置と目の境界はさらに曖昧になります。

Snap Inc.FIG. 10
ASSIGNEE
Snap Inc.
PRIORITY
2022-04-29
PUBLISHED
2023-11-02
PUBLICATION
US20230350203A1
INVENTORS
Russell Douglas Patton / Jonathan M. Rodriguez II
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

画面が消えるほど、現実の方が操作面になっていく

10件を順に見ると、操作の中心が少しずつスマートフォンから離れていきます。最初は腕時計や指が画面の代わりをし、次に複数人の手や部屋の機器、空間音響がインターフェースへ取り込まれます。UIは四角いディスプレイの中から、身体と周囲の物へ広がっていきます。

現実をそのまま操作可能な面として読み替えているのも特徴です。人の手は共有座標の目印になり、壁は情報を重ねる対象になり、目の前の服や歯科作業は拡大・置換されます。

最後のコンタクトレンズまで進むと、ディスプレイを「持つ」感覚すら薄くなります。Snapの特許群は現実の方をコンピューターの操作面へ変えていく未来を描いています。

SOURCES

一次資料

  1. US20210397000A1 — Wristwatch based interface for augmented reality eyewear
  2. US20220197393A1 — Gesture control on an eyewear device
  3. US20240288946A1 — Shared augmented reality eyewear device with hand tracking alignment
  4. US20240211057A1 — Augmented reality eyewear 3D painting
  5. US20240045494A1 — Augmented reality with eyewear triggered IoT
  6. US11089427B1 — Immersive augmented reality experiences using spatial audio
  7. US20240062444A1 — Virtual clothing try-on
  8. US20250203061A1 — Augmented reality eyewear with x-ray effect
  9. US20240036336A1 — Magnified overlays correlated with virtual markers
  10. US20230350203A1 — AR/VR enabled contact lens