Metaの特許には、身体や現実の道具を仮想空間とつなぐ発明が何度も現れます。ヘッドセットの外側へ利用者の顔を表示し、現実の手やキーボードをVRの中へ戻し、手首の筋肉や耳の中から身体の信号を取り出します。

仮想世界を支えるために、現実側の情報をもっと細かく読み込む。手袋は触覚を返し、ヘッドセットは表情を読み、見えない脚は推定し、焦点距離まで目の状態へ合わせます。身体の動き、感覚、道具、周囲の空間がひとつずつコンピューターの入力と出力へ変換されていきます。

ここで扱うのは、Meta Platforms Technologiesを中心とするUS公開特許です。Meta Neural Band、Meta Quest Pro、Horizon Workrooms、Meta Quest 3、Direct Touchには近い公開製品・機能がありますが、今回の各特許がそれらへ一対一で実装されたことまでは確認していません。

FIG. 01

ヘッドセットの外側に自分の顔を作り直して表示する

SOURCE FIGURESFIG. 1A, FIG. 1B
PUBLICATIONUS20250071253A1
内側のカメラで隠れた顔を再構成し、外向きディスプレイへ表示して、正面の相手に装着者の表情や視線を見せる。
FIG. 01US20250071253A1
VRヘッドセット外側のディスプレイへ装着者の目や顔を立体的に表示し、正面の人から顔が見えるようにする特許図面。

内側のカメラで隠れた顔を再構成し、外向きディスプレイへ表示して、正面の相手に装着者の表情や視線を見せる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Reverse pass-through glasses」は、ヘッドセットで隠れた利用者の顔を内側のカメラなどから再構成し、外側のディスプレイへ表示する発明です。FIG. 1Aと1Bでは、ヘッドセット自体と、正面の人から見た装着者の顔表示が描かれています。

普通のVRヘッドセットは、装着した瞬間に利用者の目や表情を周囲から隠します。この案では、隠した顔をもう一度計算で作り、見る角度に応じて自然に見える立体表示として外へ返します。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 01
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2021-01-27
PUBLISHED
2025-02-27
PUBLICATION
US20250071253A1
INVENTORS
Nathan Matsuda / Brian Wheelwright / Joel Hegland
ORIGINAL
FIG. 02

仮想の物体をつかむと、手袋が指先を押し返す

SOURCE FIGURESFIG. 3
PUBLICATIONUS20240168557A1
薄いアクチュエーターを手袋へ組み込み、仮想物体へ触れた位置に圧力や抵抗感を返す。
FIG. 02US20240168557A1
指先や手の各部へ多数のハプティックアクチュエーターを配置したグローブの断面と構造を示す特許図面。

薄いアクチュエーターを手袋へ組み込み、仮想物体へ触れた位置に圧力や抵抗感を返す。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Haptic actuators and related wearable devices」は、グローブなどのウェアラブルへ薄型のハプティックアクチュエーターを配置する発明です。FIG. 3では手袋全体、指先の断面、アクチュエーター単体までが一枚にまとめられています。

VRでは手の位置を追跡できても、何かを握った瞬間に本物の物体が止めてくれるわけではありません。指先や手のひらへ力を返す仕組みを加えることで、空中にしかない物体へ触覚上の境界を作ろうとします。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 02
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2021-05-10
PUBLISHED
2024-05-23
PUBLICATION
US20240168557A1
INVENTORS
DongSuk Shin / Benjamin Gorissen / Daniele Piazza / David Rother Dobbs / Erik Samuel Roby
ORIGINAL
FIG. 03

指を大きく動かさなくても、手首の筋肉だけで操作する

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20250028286A1
手首のEMGセンサーが筋肉の電気信号を読み、わずかな指の動きをコンピューターの操作へ変換する。
FIG. 03US20250028286A1
手首を囲む複数のセンサーポッドから筋電信号を取得し、手や指の動きを推定するリストバンドの特許図面。

手首のEMGセンサーが筋肉の電気信号を読み、わずかな指の動きをコンピューターの操作へ変換する。

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どんな発明?

この特許は、手首の周囲へ複数のセンサーを並べ、筋肉を伝わる電気信号から手や指の動きを推定するウェアラブルを扱います。FIG. 1では、ポッド状のセンサーが輪になったリストバンドが描かれています。

カメラで指先を見る方式では、指が隠れたり視野の外へ出たりすると追跡できません。筋電図なら、動作が外からはほとんど見えない段階でも、筋肉が出した信号を入力として扱えます。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 03
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2013-08-16
PUBLISHED
2025-01-23
PUBLICATION
US20250028286A1
INVENTORS
Matthew Bailey / Stephen Lake / Aaron Williams Grant / Cezar Morun
ORIGINAL
FIG. 04

超音波や電波で顔の表情を読む

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20240219562A1
ヘッドセット内側から超音波やミリ波を顔へ送り、反射の変化から表情を追跡する。
FIG. 04US20240219562A1
VRヘッドセットの顔側に複数のトランスデューサーを配置し、頬や口元などの表情変化を計測する特許図面。

ヘッドセット内側から超音波やミリ波を顔へ送り、反射の変化から表情を追跡する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Tracking facial expressions using ultrasound and millimeter waves」は、ヘッドセットに配置したトランスデューサーで顔の一部へ超音波やミリ波を送り、反射信号から表情を推定する発明です。FIG. 2では、顔の周囲へ複数のセンサーを配置したヘッドセット構成が示されています。

顔追跡は一般にカメラを使えますが、視線が遮られたり、髭や装置自体で顔の一部が見えなかったりします。この案は、顔を「見る」のではなく、距離や反射の変化として読むことで表情を取り出そうとします。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 04
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2023-01-03
PUBLISHED
2024-07-04
PUBLICATION
US20240219562A1
INVENTORS
Anton Andreevich Shkel / Gengxi Lu / Doruk Senkal / Julio Isla Garcia
ORIGINAL
FIG. 05

ヘッドセットから見えない脚を上半身の情報から補う

SOURCE FIGURESFIG. 4
PUBLICATIONUS20240331250A1
頭や上半身、センサーの情報から下半身の姿勢を推定し、全身アバターの脚を補完する。
FIG. 05US20240331250A1
ヘッドセット利用者の座位や立位など複数の姿勢と、それに対応して生成される下半身アバターを示す特許図面。

頭や上半身、センサーの情報から下半身の姿勢を推定し、全身アバターの脚を補完する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Predicting lower body movement for avatars」は、ヘッドセットから得られる姿勢やセンサー情報を使い、見えにくい下半身の動きを推定する発明です。FIG. 4では、座る・立つといった利用者の状態と、それに対応する下半身モデルが並びます。

頭に付いたカメラは、足元を常に正確に見られるわけではありません。そこで床までの高さ、見えた膝や足、慣性センサーなど複数の手掛かりを学習モデルへ渡し、「今の脚はこうなっているはずだ」というもっともらしい姿勢を作ります。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 05
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2023-03-30
PUBLISHED
2024-10-03
PUBLICATION
US20240331250A1
INVENTORS
Jean-Charles Bazin / Sofien Bouaziz
ORIGINAL
FIG. 06

現実のキーボードをそのままVRの中へ持ち込む

SOURCE FIGURESFIG. 7
PUBLICATIONUS11854230B2
カメラ映像から物理キーボードを認識し、同じ位置へ仮想モデルを合わせて、ヘッドセットを外さずにタイピングできるようにする。
FIG. 06US11854230B2
現実の物理キーボードと、その位置や姿勢を合わせた仮想キーボードモデルを重ねる追跡システムの特許図面。

カメラ映像から物理キーボードを認識し、同じ位置へ仮想モデルを合わせて、ヘッドセットを外さずにタイピングできるようにする。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Physical keyboard tracking」は、ヘッドセットのカメラ映像から現実のキーボードを見つけ、その位置・姿勢を推定して仮想空間のモデルと一致させる発明です。FIG. 7では、物理キーボードと仮想モデルの対応関係が示されています。

VRで仕事をしようとすると、手元のキーボードだけは現実に残ります。全部を仮想キーボードへ置き換えるのではなく、使い慣れた本物を認識し、VR側がその場所へ合わせることで両方をつなぎます。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 06
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2020-12-01
PUBLISHED
2023-12-26
PUBLICATION
US11854230B2
INVENTORS
Jan Herling / Daniel Scharstein
ORIGINAL
FIG. 07

VRを全部消さず、手の周りだけ現実に穴を開ける

SOURCE FIGURESFIG. 6
PUBLICATIONUS20220197382A1
手が必要なときだけ周辺の実写映像を仮想空間へ重ね、現実の物体を部分的に見せる。
FIG. 07US20220197382A1
仮想空間の中で利用者の手とその近くの現実物体だけが円形領域として見えるPartial Passthroughの特許図面。

手が必要なときだけ周辺の実写映像を仮想空間へ重ね、現実の物体を部分的に見せる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Partial Passthrough in Virtual Reality」は、VRを全面的に解除する代わりに、必要な現実だけを部分的に表示する発明です。FIG. 6では手の周囲にハロー状の実写領域が開き、近くにある現実のカップまでVRの中から見えます。

何かを取るたびにヘッドセットを外したり、VR全体を現実映像へ切り替えたりすると没入は途切れます。この案では、手が現実の物へ近づいたときだけ、その周囲を小さな窓として戻します。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 07
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2020-12-22
PUBLISHED
2022-06-23
PUBLICATION
US20220197382A1
INVENTORS
Michael James LeBeau / John Nicholas Jitkoff
ORIGINAL
FIG. 08

仮想物体の距離に合わせて、レンズ側の焦点まで動かす

SOURCE FIGURESFIG. 4
PUBLICATIONUS11906750B1
視線や仮想物体の距離に合わせて光学系の焦点状態を変え、目が感じる距離と映像の距離を近づける。
FIG. 08US11906750B1
ヘッドマウントディスプレイ、可変焦点光学系、視線追跡、焦点予測などを組み合わせたvarifocalシステムの特許図面。

視線や仮想物体の距離に合わせて光学系の焦点状態を変え、目が感じる距離と映像の距離を近づける。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Varifocal display with actuated reflectors」は、ヘッドセット内の光学要素を動かし、表示の焦点状態を変える可変焦点システムです。FIG. 4には、HMD、視線追跡、焦点予測、varifocal blockなどがひとつの系として描かれています。

VRでは左右の目は仮想物体へ寄り目できますが、ディスプレイ自体の物理的な焦点距離は固定されがちです。目が「近くを見ている」と判断する情報と、実際にピントを合わせる距離が食い違う問題を、光学系側まで動かして減らそうとします。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 08
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2016-12-20
PUBLISHED
2024-02-20
PUBLICATION
US11906750B1
INVENTORS
Nicholas Daniel Trail
ORIGINAL
FIG. 09

コントローラーを持たず、手そのものを入力装置にする

SOURCE FIGURESFIG. 4
PUBLICATIONUS20170293364A1
カメラから手の3D姿勢を推定し、つかむ・指を動かすといったジェスチャーをコンピューター操作へ変える。
FIG. 09US20170293364A1
デスクやディスプレイの前にいる利用者の手を複数のカメラで撮影し、3Dハンドジェスチャーを入力として認識する特許図面。

カメラから手の3D姿勢を推定し、つかむ・指を動かすといったジェスチャーをコンピューター操作へ変える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Gesture-based control system」は、複数カメラから手の形と位置を推定し、ジェスチャーをコンピューター入力へ変換する発明です。FIG. 4では、ディスプレイの前に立つ利用者の手を上部のカメラで追う構成が描かれています。

従来のモーション入力では特殊なグローブやマーカーを装着する方法もあります。この発明は画像から手指の3D姿勢を推定し、何も持たない手をそのまま操作装置にしようとします。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 09
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2012-03-20
PUBLISHED
2017-10-12
PUBLICATION
US20170293364A1
INVENTORS
Robert Wang
ORIGINAL
FIG. 10

耳の中で脳や心臓の電気信号まで測る

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20230240608A1
イヤホンのような耳内デバイスへ電極を置き、EEGやECGなどの信号をAR/VRシステムへ渡す。
FIG. 10US20230240608A1
ARヘッドセットと耳内デバイスを組み合わせ、耳の電極やマイクから健康状態や生体信号を取得する構成を示す特許図面。

イヤホンのような耳内デバイスへ電極を置き、EEGやECGなどの信号をAR/VRシステムへ渡す。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「In-ear electrodes for AR/VR applications and devices」は、耳道に入るデバイスへ電極やマイクを組み込み、身体の電気信号や音響信号を取得する発明です。FIG. 1ではARヘッドセットとin-ear monitorが連携し、利用者の健康状態を評価する構成が描かれています。

明細書では脳活動のEEG、心活動のECG、眼球運動に関わるEOGなども対象になります。イヤホンが音を出すだけでなく、耳の中を生体センサーの安定した接点として使う発想です。

Meta Platforms Technologies LLCFIG. 10
ASSIGNEE
Meta Platforms Technologies LLC
PRIORITY
2022-02-02
PUBLISHED
2023-08-03
PUBLICATION
US20230240608A1
INVENTORS
Morteza Khaleghimeybodi / Barry David Silverstein / Nils Thomas Fritiof Lunner / John Rumsfeld / Andrew John Ouderkirk / Joshua Weiner
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

身体と現実世界を「周辺機器」にする

これら10件では、身体のさまざまな部分がインターフェースになります。顔は外向きディスプレイへ再構成され、手はカメラで追跡され、筋肉の電気信号はクリックへ変わり、耳の中では生体信号まで測られます。コンピューターへ意思を伝える経路が身体のあちこちへ分散しています。

現実の道具や人も仮想空間とつながります。キーボードは仮想空間の中で位置を合わせられ、手やコーヒーカップだけをVRへ覗かせる窓が開き、外にいる人にはヘッドセット越しの顔を見せようとします。没入を深くするほど、現実との境界をどう戻すかという発明も必要になります。

その結果、Metaの「未来のコンピューター」は一台の機械というより、人の身体と周囲を巨大な入出力装置へ変える仕組みに近づきます。見る、触る、表情を作る、座る、指を動かす、耳で測る。これまでコンピューターの外にあった行為が、そのまま操作体系になっていく未来です。

SOURCES

一次資料

  1. US20250071253A1 — Reverse pass-through glasses for augmented reality and virtual reality devices
  2. US20240168557A1 — Haptic actuators and related wearable devices
  3. US20250028286A1 — Wearable devices and associated band structures for sensing neuromuscular signals and identifying hand gestures and methods of use thereof
  4. US20240219562A1 — Tracking facial expressions using ultrasound and millimeter waves
  5. US20240331250A1 — Predicting lower body movement for avatars
  6. US11854230B2 — Physical keyboard tracking
  7. US20220197382A1 — Partial Passthrough in Virtual Reality
  8. US11906750B1 — Varifocal display with actuated reflectors
  9. US20170293364A1 — Gesture-based control system
  10. US20230240608A1 — In-ear electrodes for ar/vr applications and devices