Samsungの製品を思い浮かべると、スマートフォン、テレビ、ディスプレイ、家電のような「画面のある物」が先に浮かびます。ところが公開特許のFIGを追うと、その画面は長方形の中にじっとしていません。コンタクトレンズの中へ入り、腕時計から手の甲へ飛び出し、平らな端末のまま手首へ巻き付きます。

形が動くのは画面だけでもありません。脚には歩行を助けるロボットが付き、丸い二輪ロボットは胴体をずらしながら自分でバランスを取り、横長のディスプレイは縦を向くと鏡へ切り替わります。さらに、四方向へ広がる折り畳み端末や、手のひらへ追従する仮想キーボード、センサーを詰め込んだ指輪まで登場します。

10件はいずれもSamsung Electronics名義のUS公開特許に記された提案です。GEMS Hip、Galaxy Z TriFold、Galaxy Ringと近い技術もありますが、各特許の製品への一対一の実装は未確認です。

FIG. 01

コンタクトレンズの中に表示装置まで入れる

SOURCE FIGURESFIG. 16, FIG. 17
PUBLICATIONUS20160091737A1
レンズの光学系と小型表示部を組み合わせ、装着した目へAR情報を届けるスマートコンタクトレンズ。
FIG. 01US20160091737A1
スマートコンタクトレンズの光学構成と表示素子の形状を示すUS20160091737A1のFIG.16とFIG.17特許図面

レンズの光学系と小型表示部を組み合わせ、装着した目へAR情報を届けるスマートコンタクトレンズ。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Smart contact lenses for augmented reality」は、コンタクトレンズ内部にdisplay unitを持たせ、表示情報の光を装着者の目へ送る構成を扱う特許です。FIG. 16ではレンズと光学系の位置関係、FIG. 17では小型表示部を構成する基板側の形が示されています。

普通のARグラスでは、ディスプレイや導光部は顔の前にあるフレームへ載ります。ここではその役割をレンズそのものへ押し込みます。表示装置が「眼鏡の内側」にあるのではなく、目に触れるレンズの中まで近づきます。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 01
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2014-09-26
PUBLISHED
2016-03-31
PUBLICATION
US20160091737A1
INVENTORS
Taeho Kim / Sungwoo HWANG / Sangwon Kim / Hoyoung Ahn / Daeyoung Chung
ORIGINAL
FIG. 02

腕時計から手の甲へ数字キーを投影する

SOURCE FIGURESFIG. 4A
PUBLICATIONUS20160127624A1
カメラで投影先の形や大きさを見つけ、その場所に合うvirtual UIをプロジェクターで表示する。
FIG. 02US20160127624A1
手首のウェアラブル端末から手の甲へ3×3の数字キーを投影するUS20160127624A1のFIG.4A特許図面

カメラで投影先の形や大きさを見つけ、その場所に合うvirtual UIをプロジェクターで表示する。

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どんな発明?

「Wearable device and control method thereof」は、身体へ装着する端末にprojectorとcameraを持たせ、画像から投影可能なtarget areaを探し、その形や大きさに合わせたvirtual UIを表示する発明です。FIG. 4Aでは、腕時計型デバイスから手の甲へ数字キーが投影されています。

表示するだけではなく、投影されたUIに対するユーザー操作を検出し、対応する機能を実行するところまで含みます。小さな腕時計の画面を大きくするのではなく、近くにある皮膚や物体を必要な瞬間だけ操作面へ変えます。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 02
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2014-11-03
PUBLISHED
2016-05-05
PUBLICATION
US20160127624A1
INVENTORS
Ji-hwan WOO / Won-Hee Choe
ORIGINAL
FIG. 03

脚の筋電を読み、歩き出す瞬間に力を足す

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20150134080A1
脚のEMG信号から歩行支援を始めるタイミングを検出し、外骨格型の装置で歩行を補助する。
FIG. 03US20150134080A1
両脚に外骨格型の歩行支援装置と筋電センサーを装着した人物を示すUS20150134080A1のFIG.1特許図面

脚のEMG信号から歩行支援を始めるタイミングを検出し、外骨格型の装置で歩行を補助する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Wearable robot and method for controlling the same」は、脚へ装着するexoskeleton structureと複数のEMGセンサーを使い、歩行周期の中で支援を始める地点を検出する発明です。FIG. 1では利用者の両脚へ支援機構が装着され、下腿には筋電を取るセンサーが配置されています。

目標は常にモーターで脚を動かすことではありません。筋肉が発する信号から「今、歩き出そうとしている」を読み、必要なタイミングでだけ歩行を補助します。機械が人を引っ張るのではなく、人の動き出しに合わせて力を足します。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 03
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2013-11-14
PUBLISHED
2015-05-14
PUBLICATION
US20150134080A1
INVENTORS
Chang Hyun ROH
ORIGINAL
FIG. 04

丸い二輪ロボットが胴体をずらして自分で立つ

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20230271312A1
加速や減速に合わせて本体を車輪に対して直線移動させ、二輪ロボットの姿勢を安定させる。
FIG. 04US20230271312A1
大きな左右二輪と円形に近い胴体を持つ自立移動ロボットを示すUS20230271312A1のFIG.1特許図面

加速や減速に合わせて本体を車輪に対して直線移動させ、二輪ロボットの姿勢を安定させる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Mobile robot apparatus and control method therefor」は、左右の二輪で走るロボットに対し、main bodyそのものを車輪に対して斜めの基準軸に沿って動かす構造を提案しています。FIG. 1は大きな二つの車輪の間に丸い本体を載せた外観を示します。

二輪だけで立つ機械は、加速や減速のたびに姿勢が崩れやすくなります。この発明では走り出すときと止まるときに本体の位置をずらし、重心側を積極的に動かしてself-balancingを助けます。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 04
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2021-01-28
PUBLISHED
2023-08-31
PUBLICATION
US20230271312A1
INVENTORS
Yongtae Kim
ORIGINAL
FIG. 05

横長のディスプレイが縦を向くと、鏡になる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20250123684A1
display stateとmirror stateを持つ画面を回転させ、縦向きでユーザーが近づくと鏡として動作させる。
FIG. 05US20250123684A1
横向きの画面が回転して縦向きになり、人物が鏡として使う状態を並べたUS20250123684A1のFIG.1特許図面

display stateとmirror stateを持つ画面を回転させ、縦向きでユーザーが近づくと鏡として動作させる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Electronic apparatus and control method thereof」は、mirror displayを通常のdisplay stateとmirror stateで使い分ける装置です。横向きから縦向きへ切り替わり、センサーで利用者が一定時間近くにいることなどを判断すると、視線位置に応じて鏡として動作させます。

FIG. 1では、映像を表示する横長の画面が回転し、縦向きになった状態で人物が前に立っています。テレビと姿見を別々に置くのではなく、同じ面が向きと利用状況に応じて役割を切り替えます。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 05
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2023-10-17
PUBLISHED
2025-04-17
PUBLICATION
US20250123684A1
INVENTORS
Hyeryoung Choi
ORIGINAL
FIG. 06

画面の両端を巻き取り、必要な幅だけ引き出す

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20160353588A1
flexible screenの左右にrollable driving unitを置き、画面を巻き取ったり展開したりする。
FIG. 06US20160353588A1
都市景観を表示した柔軟な大画面の左右端に巻き取り機構を配置したUS20160353588A1のFIG.1特許図面

flexible screenの左右にrollable driving unitを置き、画面を巻き取ったり展開したりする。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Rollable display device」は、柔軟なscreenの左右へ巻き取り用のdriving unitを配置し、表示面を広げたり収納したりする構造を扱います。FIG. 1では、都市の映像を表示する横長のscreen 10を、左右のunit 20が支えています。

ディスプレイを折る場合は折り目の位置が決まりますが、巻き取る方式なら使う幅そのものを連続的に変えられます。表示していない部分を筐体側へしまい、必要な面積だけを外へ出す考え方です。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 06
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2015-05-29
PUBLISHED
2016-12-01
PUBLICATION
US20160353588A1
INVENTORS
Jinwook Kim / Sangmin Hyun
ORIGINAL
FIG. 07

四方向へ開き、複数の軸で折り畳む端末

SOURCE FIGURESFIG. 2D
PUBLICATIONUS20220330438A1
四つのhousingと複数のhingeを組み合わせ、一方向だけではなく二つ以上の軸で形を変えるfoldable device。
FIG. 07US20220330438A1
四つの表示領域が中央から十字状に広がり複数の折り軸を持つUS20220330438A1のFIG.2D特許図面

四つのhousingと複数のhingeを組み合わせ、一方向だけではなく二つ以上の軸で形を変えるfoldable device。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Foldable electronic device」は、displayを二つ以上の軸に沿って折れるようにし、複数のhousingとhingeで表示面積や形を変える発明です。FIG. 2Dでは四つの領域が中央から四方向へ広がり、一般的な二つ折りとはかなり違う形になります。

特許の狙いは単に折り畳み回数を増やすことではなく、利用者の選択に応じて異なる方向へ展開できることです。一台の端末が閉じた形と開いた形の二択ではなく、複数の中間形態を持てるようになります。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 07
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2020-12-02
PUBLISHED
2022-10-13
PUBLICATION
US20220330438A1
INVENTORS
Ivanov IGOR / Seonho HWANG / Hyungsok YEO / Feygenson OLEG / Minwoo YOO / Changryong HEO
ORIGINAL
FIG. 08

平らな画面を曲げ、そのまま手首へ巻き付ける

SOURCE FIGURESFIG. 14A, FIG. 14B
PUBLICATIONUS20200335063A1
flexible displayの曲がり方や装着状態をセンサーで読み、見える場所に合わせて表示領域を切り替える。
FIG. 08US20200335063A1
平らなフレキシブル端末と、曲げて手首へ装着した状態を並べるUS20200335063A1のFIG.14AとFIG.14B特許図面

flexible displayの曲がり方や装着状態をセンサーで読み、見える場所に合わせて表示領域を切り替える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Electronic device and method for controlling flexible display」は、曲げたり巻いたりできるflexible displayについて、端末のwearing stateやbending stateを読み、どの領域へ情報を表示するかを変える発明です。FIG. 14Aと14Bでは、平らな状態から手首へ巻き付ける状態までが示されています。

ただ柔らかいだけでは、手首の裏側へ回った表示は見えません。そこで姿勢や装着状況をセンサーから判断し、利用者が見られる領域へ必要な情報を移します。形状変化とUIの配置をセットで扱います。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 08
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2019-04-19
PUBLISHED
2020-10-22
PUBLICATION
US20200335063A1
INVENTORS
Jinik KIM / Seongmin Je
ORIGINAL
FIG. 09

手のひらに仮想キーボードを貼り付ける

SOURCE FIGURESFIG. 11
PUBLICATIONUS20250173026A1
周囲の実空間からキーボードを置ける領域を探し、手のひらなどの面へvirtual keyboardを重ねて追従させる。
FIG. 09US20250173026A1
ARグラスを装着した人物の手のひらへ仮想キーボードを重ね、手の回転に追従させるUS20250173026A1のFIG.11特許図面

周囲の実空間からキーボードを置ける領域を探し、手のひらなどの面へvirtual keyboardを重ねて追従させる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Augmented reality device capable of displaying virtual keyboard」は、AR deviceが周囲を走査し、virtual keyboardを重ねられる領域を見つけ、その場所へキーボードをrenderする発明です。FIG. 11では利用者の手のひらへキーボードを重ね、手の位置や回転が変わっても表示を追従させる流れが描かれています。

机の上に十分な空きがなければ、常に同じ大きなキーボードを出す必要はありません。特許は面の形や大きさ、入力言語などから表示するkeyboard typeを決めることも想定し、周囲の状況に合わせて入力面を作ります。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 09
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2023-09-13
PUBLISHED
2025-05-29
PUBLICATION
US20250173026A1
INVENTORS
Wonwoo Lee / Jiwon Jeong / Deokho Kim / Gunill KIM
ORIGINAL
FIG. 10

指輪の中へセンサーと回路を詰め込む

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20240156218A1
outer ringの中にsensor unitとcontrol unitを置き、inner ringを交換して指の太さが違ってもセンシング位置を保つ。
FIG. 10US20240156218A1
外側リング、着脱可能な内側リング、センサー、回路部品を分解して示すUS20240156218A1のFIG.2特許図面

outer ringの中にsensor unitとcontrol unitを置き、inner ringを交換して指の太さが違ってもセンシング位置を保つ。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Ring-type wearable device」は、outer ring memberの内側へ交換可能なinner ring memberを入れ、sensor unitとcontrol unitを外側リングへ持たせる構成です。FIG. 2ではリングを分解し、内部の部品がどこへ収まるかが示されています。

特許は生体信号を検出するring-type wearableを前提に、指の太さが変わってもセンサーと皮膚の距離をなるべく一定に保つことを狙います。指輪のサイズ違いを、電子回路全体の作り直しではなく内側部品の組み合わせで吸収しようとします。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 10
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2016-02-01
PUBLISHED
2024-05-16
PUBLICATION
US20240156218A1
INVENTORS
Jin-Hong Min / Jea-Hyuck Lee / Seong-Wook JO / Shin-Hee Cho / Su-Ho LEE
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

画面の置き場所を変えるSamsungの特許

Samsungの10件の特許では、画面の置き場所、端末の形、身体と機械の境界という前提が、何度も組み替えられています。

コンタクトレンズでは表示が目の前まで近づき、投影型ウェアラブルでは手の甲が一時的なキーパッドになります。巻き取り画面や多軸折り畳み端末では、必要なときだけ表示面積を作り、手首へ巻くフレキシブル端末では「端末」と「装着物」の区別まで曖昧になります。

いちばんSamsungらしいのは、画面の住所を固定しないことかもしれません。レンズ、手、鏡、巻き取り機構、折り畳み筐体、指輪。表示とセンサーを置ける場所が増えるほど、未来の端末は一つの四角い物から、身体や空間に必要なときだけ現れる機能へ近づいていきます。

SOURCES

一次資料

  1. US20160091737A1 — Smart contact lenses for augmented reality and methods of manufacturing and operating the same
  2. US20160127624A1 — Wearable device and control method thereof
  3. US20150134080A1 — Wearable robot and method for controlling the same
  4. US20230271312A1 — Mobile robot apparatus and control method therefor
  5. US20250123684A1 — Electronic apparatus and control method thereof
  6. US20160353588A1 — Rollable display device
  7. US20220330438A1 — Foldable electronic device
  8. US20200335063A1 — Electronic device and method for controlling flexible display
  9. US20250173026A1 — Augmented reality device capable of displaying virtual keyboard and operation method thereof
  10. US20240156218A1 — Ring-type wearable device