家電は、ふつう人が使う道具だ。けれどPanasonicの特許を追っていくと、機械の役割が少しずつ変わっていく。人が操作する道具から、人のそばで作業そのものを引き受ける機械へ。

髪を洗う。鍋を混ぜる。寝た人を支える。立ち上がりや歩行を助ける。荷物を運ぶ。10枚の図面を並べると、対象は家の中から介護施設、病院、そして街へ広がっていく。

FIG. 01

頭を置くと、左右のアームが髪を洗う

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20130145540A1
US20130145540A1 / FIG. 1。頭を支えるボウルの左右に、独立して動く洗浄ユニットを配置する。
FIG. 01US20130145540A1
Panasonicの自動洗髪装置の特許図面。頭部を挟む左右の洗浄ユニットが描かれている。

US20130145540A1 / FIG. 1。頭を支えるボウルの左右に、独立して動く洗浄ユニットを配置する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

頭をボウルに置くと、左右の洗浄ユニットが頭部を挟むように動く。各ユニットには複数の接触部とノズルがあり、水や洗浄剤を出しながら頭皮と髪を洗う。

左右を別々に制御する狙いは、首へ無理なねじり力をかけにくくすること。人の手で行っていたかなり近距離のケアを、機械へ渡そうとしている。

Panasonic Intellectual Property Management Co LtdFIG. 01
ASSIGNEE
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
PRIORITY
2010-08-18
PUBLISHED
2013-06-13
PUBLICATION
US20130145540A1
INVENTORS
Osamu Mizuno / Soichiro Fujioka / Tohru Nakamura / Akinobu Okuda / Tsuyoshi Tojo
ORIGINAL
FIG. 02

ロボットアームが鍋の中身を見ながら混ぜる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20090099691A1
US20090099691A1 / FIG. 1。具材の高さ分布を測りながら、ロボットアームが混ぜ方を変える。
FIG. 02US20090099691A1
Panasonicの調理支援ロボットの特許図面。調理容器、ミキサー、ロボットアーム、計測部が描かれている。

US20090099691A1 / FIG. 1。具材の高さ分布を測りながら、ロボットアームが混ぜ方を変える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

このロボットは鍋の中の具材がどこに高く積もっているかを測り、その分布に応じて混ぜる方向や位置を変える。

腕を動かすこと自体よりも、『焦げや加熱ムラを減らすために、鍋の状態を見て混ぜ方を変える』ところが中心だ。台所仕事を単純な反復動作ではなく、判断を含む作業として機械化している。

Panasonic CorpFIG. 02
ASSIGNEE
Panasonic Corp
PRIORITY
2007-10-10
PUBLISHED
2009-04-16
PUBLICATION
US20090099691A1
INVENTORS
Tsuyoshi Tojo / Takanobu Tanimoto / Osamu Mizuno / Tohru Nakamura / Soichiro Fujioka
ORIGINAL
FIG. 03

寝た人の下へ機械を差し込み、そのまま支える

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20080066228A1
US20080066228A1 / FIG. 2。寝た人の下へ左右の支持部を入れ、持ち上げる介護ロボット。
FIG. 03US20080066228A1
Panasonicの介護ロボットの特許図面。ベッド上の人を支持するためのリフト部を備えた装置が描かれている。

US20080066228A1 / FIG. 2。寝た人の下へ左右の支持部を入れ、持ち上げる介護ロボット。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

寝た状態の人を別の場所へ移すとき、介助者が身体を抱えて持ち上げるのではなく、細長い支持部を身体の下へ差し込んで支える。

特許は、介助者の腰などへの負担を減らしつつ、利用者へ不安を与えにくい持ち上げ方を狙っている。機械は人を運ぶ台車ではなく、抱き上げる動作そのものへ入ってくる。

Panasonic CorpFIG. 03
ASSIGNEE
Panasonic Corp
PRIORITY
2006-09-20
PUBLISHED
2008-03-20
PUBLICATION
US20080066228A1
INVENTORS
Yohei Kume / Soichiro Fujioka / Hirofumi Kawaguchi / Yoshihiko Matsukawa
ORIGINAL
FIG. 04

ベッドの一部が外れ、そのまま車いすになる

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20110196562A1
US20110196562A1 / FIG. 2。ベッド中央のtraveling vehicleが固定部から分離し、車いすとして使われる。
FIG. 04US20110196562A1
Panasonicのベッドと移動車両の特許図面。固定されたベッド部分と、分離した移動車両が描かれている。

US20110196562A1 / FIG. 2。ベッド中央のtraveling vehicleが固定部から分離し、車いすとして使われる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

ベッドは固定部分と移動できる部分に分かれている。中央のtraveling vehicleは平らな姿勢ではベッドの一部になり、分離すると車いすとして移動できる。

つまり『ベッドから車いすへ人を移す』のではなく、『人が寝ている場所そのものを車いすにする』。移乗という作業をなくす方向へ問題設定を反転している。

Panasonic CorpFIG. 04
ASSIGNEE
Panasonic Corp
PRIORITY
2009-07-30
PUBLISHED
2011-08-11
PUBLICATION
US20110196562A1
INVENTORS
Yohei Kume / Hideo Kawakami / Shohei Tsukada / Tohru Nakamura
ORIGINAL
FIG. 05

ベルトを引きながら、立ち上がる軌道をロボットが支える

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20170128293A1
US20170128293A1 / FIG. 1。身体に装着したケアベルトをロボット側から制御し、立ち上がりを支援する。
FIG. 05US20170128293A1
Panasonicの立ち上がり動作支援システムの特許図面。利用者、ケアベルト、支援ロボットが描かれている。

US20170128293A1 / FIG. 1。身体に装着したケアベルトをロボット側から制御し、立ち上がりを支援する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

座っている人をただ上へ引き上げるのではなく、ケアベルトとロボットを使って立ち上がりの動きを支えるシステムだ。

介助のポイントが『力を足す』から『身体が自然に立つ軌道をつくる』へ移っている。人の動きに機械が合わせる発想が強くなる。

Panasonic Intellectual Property Management Co LtdFIG. 05
ASSIGNEE
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
PRIORITY
2014-09-19
PUBLISHED
2017-05-11
PUBLICATION
US20170128293A1
INVENTORS
Yuko Tsusaka / Yudai Fudaba
ORIGINAL
FIG. 06

歩く人の前で、ロボットが安全な空間をつくる

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20180000683A1
US20180000683A1 / FIG. 2。利用者が歩行支援ロボットを握って進む場面。
FIG. 06US20180000683A1
Panasonicの歩行支援ロボットの特許図面。利用者がハンドルを握ってロボットと歩く様子が描かれている。

US20180000683A1 / FIG. 2。利用者が歩行支援ロボットを握って進む場面。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

ロボットはハンドルにかかる力を検出し、利用者の歩行を支える。さらに床へ光を投影し、周囲の人が近づきすぎないよう境界や警告を示す構成も含まれる。

支援される本人だけでなく、同じ空間を歩く第三者まで考えるのが特徴だ。人とロボットが一緒に移動することを前提に、安全の範囲を床へ可視化する。

Panasonic Intellectual Property Management Co LtdFIG. 06
ASSIGNEE
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
PRIORITY
2016-06-29
PUBLISHED
2018-01-04
PUBLICATION
US20180000683A1
INVENTORS
Kazunori Yamada / Mayu Yokoya
ORIGINAL
FIG. 07

機械を着て、腕の力仕事そのものを軽くする

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20170225322A1
US20170225322A1 / FIG. 1。腕に沿うアシスト機構を備えたスーツを、上方の機構から支持する。
FIG. 07US20170225322A1
Panasonicの動作支援装置の特許図面。上半身に装着するパワーアシストスーツと吊り下げ機構が描かれている。

US20170225322A1 / FIG. 1。腕に沿うアシスト機構を備えたスーツを、上方の機構から支持する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

ここではロボットを押したり握ったりするのではなく、機械を身体へ着る。腕に沿うユニットが動作を追い、重量物を扱うときの力を補う。

重いスーツ自体は上から吊って支えるため、装着者が機械の重量まで背負い続けない構成になっている。『人を助ける機械』がいよいよ身体の外骨格へ近づく。

Panasonic CorpFIG. 07
ASSIGNEE
Panasonic Corp
PRIORITY
2014-08-08
PUBLISHED
2017-08-10
PUBLICATION
US20170225322A1
INVENTORS
Takuo Wariishi / Hiromichi Fujimoto / Makoto Konishi
ORIGINAL
FIG. 08

球体のロボットが避けるだけでなく話しかけに来る

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20200298414A1
US20200298414A1 / FIG. 1。球形の本体に顔の表示を持ち、人との交流を前提に動くロボット。
FIG. 08US20200298414A1
Panasonicの球形コミュニケーションロボットの特許図面。目と口のような表示を持つ球形の外観が描かれている。

US20200298414A1 / FIG. 1。球形の本体に顔の表示を持ち、人との交流を前提に動くロボット。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

このロボットは球形の本体を転がして移動し、カメラ、マイク、スピーカー、顔のような表示を使って人と関わる。

面白いのは、障害物を見つけたときに常に最短で避けるとは限らないこと。相手が人なら、会話を誘ったり近づいたりする行動を選び、接触の機会を増やすことまで制御対象にしている。

Panasonic Intellectual Property Management Co LtdFIG. 08
ASSIGNEE
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
PRIORITY
2019-03-19
PUBLISHED
2020-09-24
PUBLICATION
US20200298414A1
INVENTORS
Kento Ogawa
ORIGINAL
FIG. 09

人が動く先を予測し、ロボットが先回りしてよける

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20090043440A1
US20090043440A1 / FIG. 1。介護、清掃、搬送、案内などを想定した自律移動プラットフォーム。
FIG. 09US20090043440A1
Panasonicの自律移動装置の特許図面。車輪を備えた移動プラットフォームが描かれている。

US20090043440A1 / FIG. 1。介護、清掃、搬送、案内などを想定した自律移動プラットフォーム。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

自律ロボットが人と同じ空間を走るとき、現在いる位置だけを避けても足りない。この特許は、人の位置が時間とともにどう変化しているかから、少し先に人が動きそうな範囲を仮想障害物として設定する。

用途として介護、清掃、搬送、案内、巡回などが想定されている。ロボットが人間社会へ入るために、『人は動く』こと自体を地図へ取り込む発想だ。

Panasonic CorpFIG. 09
ASSIGNEE
Panasonic Corp
PRIORITY
2007-04-12
PUBLISHED
2009-02-12
PUBLICATION
US20090043440A1
INVENTORS
Yoshihiko Matsukawa / Soichiro Fujioka / Yuji Adachi / Toshio Inaji
ORIGINAL
FIG. 10

最後は街へ。自律ロボットがサービスを届けに来る

SOURCE FIGURESFIG. 8
PUBLICATIONUS20240028049A1
US20240028049A1 / FIG. 8。住宅地などで配送・販売・案内などのサービスを提供する自律移動ロボットの外観例。
FIG. 10US20240028049A1
Panasonicの自律移動ロボットの特許図面。サービス用の箱を載せた移動ロボットの外観が描かれている。

US20240028049A1 / FIG. 8。住宅地などで配送・販売・案内などのサービスを提供する自律移動ロボットの外観例。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許は、複数の自律移動ロボットをまとめて扱い、利用者が選んだサービスと場所に応じてロボットを向かわせる仕組みを扱う。ロボットは走行部の上に、サービスを提供するためのbox sectionを載せる。

想定されるサービスには、飲み物、弁当、本、薬、アイスクリームなどの物品提供だけでなく、案内、サイネージ、警備なども含まれる。人のそばで一つの作業を助けていた機械が、最後には地域の中を動きながらサービスそのものを届ける。

Panasonic Intellectual Property Management Co LtdFIG. 10
ASSIGNEE
Panasonic Intellectual Property Management Co Ltd
PRIORITY
2021-04-19
PUBLISHED
2024-01-25
PUBLICATION
US20240028049A1
INVENTORS
Masayoshi Tojima / Shunsuke Kuhara
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

家電から人のそばで働く機械へ

この10件をつなぐのは、人が毎日している作業を細かく分解し、その一部分を機械へ渡していく発想だ。

最初は頭のすぐ横で髪を洗い、次は台所で混ぜ、身体を持ち上げ、立つ・歩くを支える。やがて機械は人と同じ空間を自律移動し、最後には街へ出て荷物を運ぶ。Panasonicの特許図面には、家電メーカーの技術が生活の『作業』そのものへ入り込んでいく過程が残っている。

SOURCES

一次資料

  1. US20130145540A1 — Automatic hair washing apparatus
  2. US20090099691A1 — Cooking assistance robot and cooking assistance method
  3. US20080066228A1 — Supporting apparatus and nursing robot system
  4. US20110196562A1 — Traveling vehicle and bed
  5. US20170128293A1 — Standing-up motion assist system, control method for controller of standing-up motion assist system, storage medium, care belt, and robot
  6. US20180000683A1 — Robot and method of supporting walking using robot
  7. US20170225322A1 — Movement assistance device
  8. US20200298414A1 — Robot and control method of robot
  9. US20090043440A1 — Autonomous mobile device, and control device and program product for the autonomous mobile device
  10. US20240028049A1 — Information output method and information output device