Nintendo Switch 2を見て、まず気づくのは画面の大きさかもしれません。でも本体を手に取って遊ぶとき、体験を変えているのはもっと小さな設計です。Joy-Con 2が磁石で付く。横倒しにするとマウスとして動く。机に置く角度を調整できる。こうした違いは外観だけでは説明できません。
任天堂は米国の公式特許表示ページで、Nintendo Switch 2、Joy-Con 2、Nintendo Switch 2 Pro Controllerを守る特許番号を製品別に公開しています。特許図面には、コントローラーの接続部、スタンドの裏側、冷却機構、ドックへの位置合わせ、手に触れる部品、さらにSwitch 2以前から考えられてきたゲーム共有の仕組みが描かれています。
ただし、特許に描かれたすべての構造が、販売製品で図面どおり実装されたとは限りません。また、2015〜2017年を優先日とする特許も含まれます。それらはSwitch 2専用に生まれた新発明としてではなく、初代Switchから続く設計思想として読み分けます。
始まりは2015年。「左右を外せるゲーム機」という発明
どんな発明?
最初に見るのはSwitch 2のために出願された特許ではありません。優先日が2015年のUS10583356B2は、ディスプレイを備える本体と、そこから取り外せる左右のコントローラーを組み合わせた情報処理システムを記載しています。
重要なのは装着・取り外しのどちらの状態でも、コントローラーが本体へ操作データを送れることです。携帯モードの一体感と、取り外して遊ぶ自由を同じ機械に持たせる。この構成がSwitch 2にもつながっています。
- ASSIGNEE
- Nintendo Co., Ltd.
- PRIORITY
- 2015-06-12
- PUBLISHED
- 2020-03-10
- PUBLICATION
- US10583356B2
- INVENTORS
- Yoshiaki Koizumi / Yui Ehara / Munetaka Nishikawa / Kochi Kawai / Kenichi Mae
Joy-Con 2が「ピタッ」と付く。その裏には磁石と位置決め
どんな発明?
Joy-Con 2の見た目に現れる最大の変化の一つが、スライドレールではなく磁石で装着する仕組みです。US12691375B2は、本体側のくぼみと磁石、コントローラー側の突起、磁力で引き寄せられる部分、接続端子を組み合わせた構造を扱います。
単に強い磁石を付けるだけでは、操作中のぐらつきを防げません。突起とくぼみが位置を決め、磁力が保持に働き、端子が通信を受け持つ。任天堂の開発者インタビューでも、初代Switch開発時には磁石案があったものの安定性の問題で見送ったと説明されています。
- ASSIGNEE
- Nintendo Co., Ltd.
- PRIORITY
- 2023-08-01
- PUBLISHED
- 2026-03-05
- PUBLICATION
- US20260061307A1
- INVENTORS
- Kazuhiko Koriyama / Shinji Hirose / Kazuki Ebihara
取り付け面を下にすると、コントローラーがマウスになる
どんな発明?
同じUS12691375B2には、磁気保持部だけでなく、マウス用センサーを収めるくぼみと開口の配置も記載されています。これが面白いのは、接続面という普段は本体に隠れている場所が、取り外した途端に新しい操作面へ変わる点です。
任天堂が公開する製品情報によれば、Joy-Con 2は装着側の面を下に向け、机やズボンなどの上を滑らせることで、対応ソフトではマウスのように操作できます。左右どちらも使えます。特許の請求項が述べるセンサー配置と、市販品の操作説明を合わせて読むと、機能の転換が見えてきます。
- ASSIGNEE
- Nintendo Co., Ltd.
- PRIORITY
- 2023-08-01
- PUBLISHED
- 2026-03-05
- PUBLICATION
- US20260061307A1
- INVENTORS
- Kazuhiko Koriyama / Shinji Hirose / Kazuki Ebihara
スタンドの裏に、細い通気孔をどう収める?
どんな発明?
US11871530B2のFIG.11は、ゲーム機の背面下部にある細長い凹部を大きく描いています。凹部22の奥には多数のリブ33が並び、その一部の隙間が本体内部につながる通気孔32です。何気ない背面の溝ですが、空気を通しながら内部構造を保つための形が細かく決められています。
この特許では、スタンドを閉じた状態の収まりやすさと、通気孔がある場所、さらに機器を保持装置へ載せるときの案内形状まで、背面下部にまとめて考えています。スタンド単体の形状ではなく、狭い場所をいくつもの目的で使う設計が見えてきます。
- ASSIGNEE
- Nintendo Co., Ltd.
- PRIORITY
- 2021-05-28
- PUBLISHED
- 2024-01-09
- PUBLICATION
- US11871530B2
- INVENTORS
- Junichiro Miyatake / Yuya Okazaki / Takafumi Nishida
画面の裏側で、基板と金属板とファンをどう重ねる?
どんな発明?
US20250024631A1のFIG.2は、携帯型電子機器の部品を一度に見渡せる分解図です。表面側のディスプレイ5と熱伝導シート25、前側筐体20、基板40、ファン60、後側の金属板50や筐体30などが分かれて描かれています。個別の冷却装置だけでなく、画面のすぐ裏にどれだけ多くの部材を収める必要があるかがわかります。
この特許の主題は、その限られた空間に空気の経路を確保することです。基板の表裏には発熱する部品があり、吸気口から取り込んだ空気をファンへ導く経路の間隔を、熱の大きい側と小さい側で変える構成が提案されています。金属板などの部材を重ねることと、空気が通る隙間を残すことを同時に考える設計です。
- ASSIGNEE
- Nintendo Co., Ltd.
- PRIORITY
- 2023-07-11
- PUBLISHED
- 2025-01-16
- PUBLICATION
- US20250024631A1
- INVENTORS
- Takafumi Nishida / Kohei Matsumoto
見えない端子に、どうやって本体を正しく差し込む?
どんな発明?
テレビで遊ぶとき、本体はドックへ上から差し込みます。US11171448B2は、充電される電子機器と充電台にある複数のはめ合わせ部、電気接点、位置ずれを吸収する可動部を扱う特許です。
特許の説明が出発点にするのは、利用者から接続端子が見えない状況でも、正しい位置へ載せやすくすることです。毎日繰り返す「置く」動作の裏側に、端子を傷めず接触させるための位置合わせがあります。
- ASSIGNEE
- Nintendo Co., Ltd.
- PRIORITY
- 2015-10-27
- PUBLISHED
- 2021-11-09
- PUBLICATION
- US11171448B2
- INVENTORS
- Shinji Hirose / Daisuke Kumazaki / Takafumi Nishida
継ぎ目を隠すグリップの握り心地
どんな発明?
US12246248B2のFIG.15では、コントローラーの右側のグリップ8bが本体から途中まで外れています。図中の「BOUNDARY PORTION」が指すのは、本体ケースとグリップがつながる境目です。前後のハウジングの継ぎ目の一部を、左右のグリップ部品で覆う仕組みが説明されています。
ゲーム中、手のひらはグリップの輪郭と表面に長く触れます。特許では、本体とグリップの表面を滑らかにつなぎ、握ったときに段差や継ぎ目の違和感を生じにくくすることを狙っています。小さな部品の境界にも、操作体験に関わる工夫があります。
- ASSIGNEE
- Nintendo Co., Ltd.
- PRIORITY
- 2016-06-10
- PUBLISHED
- 2025-03-11
- PUBLICATION
- US12246248B2
- INVENTORS
- Hitoshi Tsuchiya / Fumiyoshi Suetake / Takanori Okamura
スティックが倒れた瞬間、突起と台座が接する
どんな発明?
US11497987B2のFIG.16は、スティックがまっすぐな状態を実線、倒された状態を破線で重ねています。動く操作部材41の突起413が、内部の台座42に当たる位置を「CPa」「CPb」として示し、中心軸から接点までの距離をL3・L4で比較しています。
特許が注目するのは、スティックの軸そのものを外装の開口に擦らせるのではなく、内部の突起と台座で傾きを受け止めることです。L3とL4がほぼ等しくなる配置にすることで、円を描くように操作した際の接点同士の滑りを抑え、摩擦による操作抵抗を小さくする狙いがあります。
- ASSIGNEE
- Nintendo Co., Ltd.
- PRIORITY
- 2019-10-17
- PUBLISHED
- 2022-11-15
- PUBLICATION
- US11497987B2
- INVENTORS
- Takanori Okamura / Yuki Taniguchi / Hiroki Ikuta / Keisuke Seko / Masaya Takei
ゲームを持たない相手にも映像が届く。2015年に描かれた発想
どんな発明?
Nintendo Switch 2の「おすそわけ通信(GameShare)」では、対応ソフトを持つ本体から別の本体へゲーム画面を送り、ほかの人も遊びに参加できます。関連する発想を記したUS20170095735A1の優先日は、Switch 2よりはるか以前の2015年10月です。
この特許のFIG.1は、一台の「マスター」がゲームの処理と画像生成を担い、無線通信で「クライアント」や「観客」に画像を直接送るシステムを描いています。クライアントの操作入力はマスターに戻り、マスターが全体の進行を管理します。これは現在のGameShareそのものを証明する図ではありません。それでも、一台がゲームを実行し、ほかの画面と操作を分かち合うという発想の長い蓄積が見えてきます。
- ASSIGNEE
- Nintendo Co., Ltd.
- PRIORITY
- 2015-10-01
- PUBLISHED
- 2017-04-06
- PUBLICATION
- US20170095735A1
- INVENTORS
- Yoshihisa Kondo / Yuki Mizuguchi / Masayoshi Oki / Pacome Danhiez / Romain Bailly / Yann Benigot
AFTER THE FIGURES
新機能を支える従来の仕組み
9枚の図面では、取り外せる左右コントローラーとテレビ・携帯の切り替えという土台は2015年優先の特許にさかのぼり、その上で磁気接続とマウス操作という新しい操作方法が足されています。
スタンド・通風・ドックの位置合わせは、薄い本体を机に置き、持ち運び、差し込み、熱を逃がすために不可欠です。Proコントローラーの握りやスティックにも、人の指と部品が触れる瞬間を整える発明があります。最後は、離れた本体同士が一つのゲームを共有する仕組みへと視野を広げます。
最後の図面が示すのは、ゲーム機の進化が本体内部だけで完結しないことです。現在のGameShareとの直接の特許関係は確認できませんが、遊びをほかの本体と分け合う発想は、少なくとも2015年の特許にまでさかのぼります。何が昔から続き、何が今回の使い方に合わせて組み直されたのか。特許図面はNintendo Switch 2を選択を重ねた設計として見る手掛かりになります。
SOURCES
一次資料
- US10583356B2 — Information processing system, information processing device, controller device and accessory
- US20260061307A1 — Game controller
- US20260061307A1 — Game controller
- US11871530B2 — Electronic device and device holding system
- US20250024631A1 — Electronic apparatus
- US11171448B2 — Charger and charging system
- US12246248B2 — Game controller
- US11497987B2 — Input device, game controller, and information processing apparatus
- US20170095735A1 — Information processing system, information processing method, information processing apparatus, and non-transitory storage medium encoded with computer readable information processing program
