Dysonといえば掃除機や羽根のない扇風機。でも特許図面を横に並べると、その技術は予想外の場所へ移動しています。空気清浄機はヘッドホンに入り、風は手の水を切り落とし、髪を巻き、輪の形をした機械から湿り気まで運びます。

同時に、掃除機は階段の角に沿って手で引き上げやすい形になり、緑の光でまだ見えない埃を教えます。ロボットは部屋を走り、自分をきれいにするためのドックさえ考案されます。さらに、指の長さが左右で違うロボットハンドまで登場します。

これら10件はUS特許公報に記載された発明です。機能が近い市販製品もありますが、特許番号と個々の製品の一対一対応は未確認です。

FIG. 01

空気清浄機を顔の前まで連れて歩く

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20210260415A1
ヘッドホンと口元の送風ノズルを一体化し、歩いている間も浄化した空気を届ける。
FIG. 01US20210260415A1
耳を覆うヘッドホンに送風機とフィルターを組み込み、口元へ空気を送るウェアラブル空気清浄機の特許図面。

ヘッドホンと口元の送風ノズルを一体化し、歩いている間も浄化した空気を届ける。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許はヘッドホンの左右のスピーカー部に送風装置を組み込み、顔の前へ浄化空気を送るウェアラブル空気清浄機です。FIG. 1では耳に装着する本体と口元の送風部を一体化した全体像を描いています。

普通の空気清浄機は部屋をきれいにします。この案では部屋全体を相手にせず、本人が呼吸する直前の空気だけを移動する装置で処理します。

Dyson Technology LtdFIG. 01
ASSIGNEE
Dyson Technology Ltd
PRIORITY
2018-07-23
PUBLISHED
2021-08-26
PUBLICATION
US20210260415A1
INVENTORS
Philip Stephen Darling / Matthew Jerome Jennings / Peter Knight Reid
ORIGINAL
FIG. 02

階段の角を使って、掃除機を引き上げる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS5937477A
ホースを引くと底面の溝と斜面が階段の段鼻を受け流し、掃除機本体が上段へ移動しやすくなる。
FIG. 02US5937477A
階段の隣り合う段にまたがる溝付き底面と、上段へ乗り上げやすい前端を備えた掃除機の特許図面。

ホースを引くと底面の溝と斜面が階段の段鼻を受け流し、掃除機本体が上段へ移動しやすくなる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

古いDysonの特許は、キャニスター掃除機の底面に階段の角を受け入れる溝を設け、前端を斜めにする構造です。FIG. 1では階段に置くことを前提とした独特の本体形状が見えます。

利用者がホースを引いて上段へ移動させるための構造であり、自走式の階段昇降ロボットではありません。階段に掃除機を置いたまま作業したいという、身近な不便から生まれています。

Notetry Ltd (later Dyson Technology Ltd)FIG. 02
ASSIGNEE
Notetry Ltd (later Dyson Technology Ltd)
PRIORITY
1995-01-27
PUBLISHED
1999-08-17
PUBLICATION
US5937477A
INVENTORS
James Dyson
ORIGINAL
FIG. 03

人の指とは違う長さで、小さな物をつまむロボットの手

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20230064919A1
左右の指を非対称に設計し、平面にある小さな物にも近づきやすいロボットハンドを作る。
FIG. 03US20230064919A1
指の節数が左右で異なるロボットグリッパーの機構と接触面を示す特許図面。

左右の指を非対称に設計し、平面にある小さな物にも近づきやすいロボットハンドを作る。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

Dysonのロボットハンド特許は、向かい合う二本の指に異なる数の関節・節を持たせる構造です。FIG. 1では、左右対称でなくても物を保持できる機械の手が描かれています。

つまむ対象と床や机の関係に合わせて、片側の指だけを長くする設計です。

Dyson Technology LtdFIG. 03
ASSIGNEE
Dyson Technology Ltd
PRIORITY
2020-02-27
PUBLISHED
2023-03-02
PUBLICATION
US20230064919A1
INVENTORS
Andrew James Shaw / Vincent Denis Clerc
ORIGINAL
FIG. 04

羽根を見せず、輪っかの内側から風を増やす

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20090060711A1
台座内の送風機が環状スリットへ空気を送り、周囲の空気を巻き込んで風を作る。
FIG. 04US20090060711A1
環状の吹出口を持つ羽根の見えない送風機と、内部から空気を送り出す構造の特許図面。

台座内の送風機が環状スリットへ空気を送り、周囲の空気を巻き込んで風を作る。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Fan」は台座の内部で動かした空気をリング状の吹出口から高速で送り、周囲の空気を巻き込んで気流を増幅する構成です。FIG. 1では、普通の扇風機の羽根があるはずの場所が大きな空洞になっています。

羽根は見えない本体内部に移され、部屋へ向かう風を輪の形で整えます。

Dyson Technology LtdFIG. 04
ASSIGNEE
Dyson Technology Ltd
PRIORITY
2007-09-04
PUBLISHED
2009-03-05
PUBLICATION
US20090060711A1
INVENTORS
Peter David Gammack / Frederic Nicolas / Kevin John Simmonds
ORIGINAL
FIG. 05

手の水を細い空気の刃で切り落とす

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20130097885A1
細いスリットを安定して作るノズル構造により、高速の薄い空気の層を手へ当てる。
FIG. 05US20130097885A1
向かい合う薄い吹出口を持つハンドドライヤーのノズル部材と細長いスリットの特許図面。

細いスリットを安定して作るノズル構造により、高速の薄い空気の層を手へ当てる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許が改良するのはハンドドライヤー全体ではなく、空気を細いスリットから均等に出すためのノズル製造・組立構造です。図面では、空気を幅の狭い帯として放出する構造がわかります。

温風で水を蒸発させるだけではなく、高速の空気で手の表面から水を吹き払う「エアナイフ」の方式を、部品の精度から支えようとします。

Dyson Technology LtdFIG. 05
ASSIGNEE
Dyson Technology Ltd
PRIORITY
2011-10-20
PUBLISHED
2013-04-25
PUBLICATION
US20130097885A1
INVENTORS
James Dyson / Leigh Michael Ryan / Robert Michael Cox
ORIGINAL
FIG. 06

髪を手で巻かず、空気の流れでカールを作る

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20240008618A1
筒の周囲へ流す空気を使い、毛束が自然に巻き付きやすい流路を構成する。
FIG. 06US20240008618A1
送風路と円筒状のスタイリングアタッチメントを備えたヘアケア機器の特許図面。

筒の周囲へ流す空気を使い、毛束が自然に巻き付きやすい流路を構成する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

ヘアケア機器のアタッチメントを扱うこの特許では、吹出口や周囲の部材を組み合わせ、流れる空気で毛束を巻き付けるための構成を示しています。FIG. 1には空気の通り道を持つ細長いアタッチメントが描かれています。

髪を固定するクリップや熱いコテを中心に考えるのではなく、空気の流れを髪の位置を決める道具として使います。

Dyson Technology LtdFIG. 06
ASSIGNEE
Dyson Technology Ltd
PRIORITY
2020-09-18
PUBLISHED
2024-01-11
PUBLICATION
US20240008618A1
INVENTORS
Robert Mark Brett Coulton / Martin Edward Keane / Peter Dabbs
ORIGINAL
FIG. 07

見えない床のほこりを緑の光で浮かび上がらせる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20230036398A1
掃除機が吸い込む前に、床の上へ浅い角度で光を当て、微細なほこりの影や散乱を目立たせる。
FIG. 07US20230036398A1
床面を低い角度から照らす光源を掃除機ヘッドの前部へ組み込んだ特許図面。

掃除機が吸い込む前に、床の上へ浅い角度で光を当て、微細なほこりの影や散乱を目立たせる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許は掃除機のヘッドへ緑色レーザーダイオードを配置し、床面の前方を照らす方式です。FIG. 1では掃除する面に対して低い位置へ光源を収める考え方が示されています。

掃除機は汚れを吸い取れても、吸うべき場所を人が見つけられなければ使いにくいものです。照らす角度を工夫し、肉眼では見えにくい小さな粒子を見つけやすくします。

Dyson Technology LtdFIG. 07
ASSIGNEE
Dyson Technology Ltd
PRIORITY
2020-01-31
PUBLISHED
2023-02-02
PUBLICATION
US20230036398A1
INVENTORS
Stephen Robert Dimbylow / Andrew David Warrington / Henry Thomas James Barnard
ORIGINAL
FIG. 08

床を洗ったあと、掃除機自身に絡んだ毛まで取り除く

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20240138646A1
使用後のフロアクリーナーをドックに置き、ヘッドに絡む毛をカッターやフックなどで除去する。
FIG. 08US20240138646A1
フロアクリーナーを受け入れ、ヘッドの毛を取る機構を備えた専用ドックの特許図面。

使用後のフロアクリーナーをドックに置き、ヘッドに絡む毛をカッターやフックなどで除去する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

床掃除が終わっても、ブラシに毛が巻き付いていれば今度は掃除機を掃除する必要があります。この特許はドック側へ毛を除去する機構を組み込み、置いたままクリーナーヘッドを手入れする設計です。

公報ではカッター、フック、櫛状部材など複数の除去方式が説明されています。床を洗う機能そのものではなく、掃除道具のメンテナンスを自動化することが焦点です。

Dyson Technology LtdFIG. 08
ASSIGNEE
Dyson Technology Ltd
PRIORITY
2021-02-26
PUBLISHED
2024-05-02
PUBLICATION
US20240138646A1
INVENTORS
Oliver Dodgson
ORIGINAL
FIG. 09

ロボット掃除機の小さな胴体へサイクロンを詰め込む

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20140013538A1
人が押さない掃除機でも、吸い込んだ空気からごみを分離できるように機構を配置する。
FIG. 09US20140013538A1
薄い自走式掃除機シャシーの上にサイクロン式ごみ分離機構を搭載した特許図面。

人が押さない掃除機でも、吸い込んだ空気からごみを分離できるように機構を配置する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許は自走式掃除機の内部へサイクロン分離機構を組み込む構造です。FIG. 1には、床を自律走行する車体とその上の分離部を一体化した姿が示されています。

手で持つ掃除機なら縦長の筒を置けますが、ロボットが家具の下を通るには高さを抑えなければなりません。吸引と分離の仕組みを小さな移動体へ詰め込む設計課題が図に現れます。

Dyson Technology LtdFIG. 09
ASSIGNEE
Dyson Technology Ltd
PRIORITY
2011-02-04
PUBLISHED
2014-01-16
PUBLICATION
US20140013538A1
INVENTORS
James Dyson / Peter David Gammack
ORIGINAL
FIG. 10

風を送る輪っかをそのまま加湿器にもする

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20140077398A1
水を含む空気と送風を組み合わせ、見慣れた輪の形で室内へ湿り気を届ける。
FIG. 10US20140077398A1
水タンクを持つ台座と環状ノズルを組み合わせた加湿送風装置の特許図面。

水を含む空気と送風を組み合わせ、見慣れた輪の形で室内へ湿り気を届ける。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Humidifying apparatus」は水タンクを備えた本体と環状の吹出口を組み合わせる加湿装置です。FIG. 1は羽根の見えない送風機によく似た外観ですが、内部には水を扱う機構もあります。

室内の湿度を変えるには、水と空気の両方を制御する必要があります。送風機の輪という形を保ったまま、そこへ加湿という別の働きを重ねています。

Dyson Technology LtdFIG. 10
ASSIGNEE
Dyson Technology Ltd
PRIORITY
2012-03-06
PUBLISHED
2014-03-20
PUBLICATION
US20140077398A1
INVENTORS
Mark Joseph Staniforth / Daniel James Beavis / Jude Paul Pullen / James Dyson / Nicholas Gerald Fitton
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

Dysonが変えようとしているのは、家電の形よりも「機械が担う仕事」

10件を貫くのは、風の出し方や掃除の仕方を、決まった家電の形から切り離す発想です。空気は部屋全体ではなく顔の前へ届き、風は冷却だけでなく水の除去やヘアスタイリングにも使われます。

掃除機側でも、見つける・運ぶ・吸い取る・内部でごみを分離する・使い終えた道具を手入れする、と仕事が細かく分けられていきます。階段用の底面と自律走行ロボットは別の発明ですが、どちらも人と機械の分担を変えます。

見慣れた家電の部品や形を組み替えるだけで、これほど異なる未来の暮らし方が描けることが特許図面から伝わってきます。

SOURCES

一次資料

  1. US20210260415A1 — Wearable air purifier
  2. US5937477A — Vacuum cleaner
  3. US20230064919A1 — Robot hand
  4. US20090060711A1 — Fan
  5. US20130097885A1 — Developments in or relating to a hand dryer
  6. US20240008618A1 — Attachment for a haircare appliance
  7. US20230036398A1 — Cleaner head for a vacuum cleaner
  8. US20240138646A1 — Floor cleaner dock
  9. US20140013538A1 — Autonomous vacuum cleaner
  10. US20140077398A1 — Humidifying apparatus