Disneyの公開特許では、キャラクターの居場所、ライドの動き、映像を映す面が次々に変わります。テーマパークの舞台装置がゲストの動きや触れ方に応じて姿を変えていきます。

キャラクターは二本足で自由に歩き、人に触れるロボットの身体は柔らかくなる。ドローンは機械の姿を隠して海賊船そのもののように飛び、別の群れは一機ずつが空中の画素になります。ライトセーバーは映像処理ではなく柄から本当に伸び、ライドでは乗客の入力が動きへ返される。最後には乗り物さえ消えて、床や砂や霧そのものがインターフェースとスクリーンになります。

ここで扱う10件はDisney Enterprises名義で公開された特許です。Olafのentertainment robotics、Disneyのドローンショー、伸縮式ライトセーバー、HoloTileには近い公式実装がありますが、今回の各特許番号との一対一対応は確認できていません。

FIG. 01

キャラクター役のロボットを二本足で自由に歩かせる

SOURCE FIGURESFIG. 9
PUBLICATIONUS20220119053A1
点線の外形は演じるキャラクターに合わせた「skin」。その内側に、歩行・認識・会話・バランス制御の機構をまとめる。
FIG. 01US20220119053A1
二足歩行ロボット俳優の正面図に、頭部の認識・自然言語、腕・脚の駆動、姿勢制御、足裏センサーなどのハードウェア構成を示したFIG.9の特許図面

点線の外形は演じるキャラクターに合わせた「skin」。その内側に、歩行・認識・会話・バランス制御の機構をまとめる。

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どんな発明?

「Legged high-dexterity self-balancing capable robot actor」は、スクリーンの中にいたキャラクターを、等身大の身体で現実空間へ出すための二足歩行ロボットです。FIG. 9では、頭部にperceptionとnatural language、胴体に計算機とバランス制御、骨盤にIMU、腕と脚に駆動・センシング、足に接地検知が割り当てられています。

特許が重視するのは、単に歩けるヒューマノイドではなく「actor」であることです。外側のskinを役柄に合わせ、キャラクター固有の身振りや感情を身体表現として見せながら、自由歩行と自己バランスを両立させます。

Disney Enterprises IncFIG. 01
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2019-05-24
PUBLISHED
2022-04-21
PUBLICATION
US20220119053A1
INVENTORS
Scott Christopher Lavalley / Kyle Robert Thompson / Michael Anthony Hopkins / Dexter J. Dickinson / Jared Edward Bishop / Jerry W. Rees / Kyle Michael Cesare
ORIGINAL
FIG. 02

抱きしめても危なくないよう、ロボットの身体を柔らかくする

SOURCE FIGURESFIG. 10B
PUBLICATIONUS20170095925A1
硬い骨格の外へ空気入りのsoft skin moduleを重ね、接触を圧力として検知しながら衝撃も吸収する。
FIG. 02US20170095925A1
腕、胸、腰、背中に空気入りの柔らかい外装モジュールを持つ人型上半身ロボットを側面から示すFIG.10Bの特許図面

硬い骨格の外へ空気入りのsoft skin moduleを重ね、接触を圧力として検知しながら衝撃も吸収する。

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どんな発明?

「Soft body robot for physical interaction with humans」は、人とロボットが近づくだけでなく、実際に触れ合うことを前提にした発明です。FIG. 10Bは、発明者らが作った10自由度の上半身プロトタイプを横から描き、腕、胸、腰、背中へ大きなsoft skin moduleが配置されています。

各モジュールは変形できる外壁と空気入りの空間を持ち、圧力センサーで接触を検知します。特許本文ではhuggingのようなhuman-robot interactionを明示し、柔らかい外装を「接触センサー」と「衝撃を受け止めるバンパー」の両方として使っています。

Disney Enterprises IncFIG. 02
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2015-10-01
PUBLISHED
2017-04-06
PUBLICATION
US20170095925A1
INVENTORS
Katsu Yamane / Joohyung Kim / Alexander Nicholas Alspach
ORIGINAL
FIG. 03

アニマトロニクスの「目」を液体の中で磁力で動かす

SOURCE FIGURESFIG. 4
PUBLICATIONUS20110066239A1
透明な外殻の中で眼球を液体に浮かせ、外側の電磁石から非接触で向きを変える。後方には映像用カメラも置ける。
FIG. 03US20110066239A1
透明な外殻、液体、内側の球形眼球、磁石、コイル、カメラ光学系を分解して示すFIG.4のアニマトロニクス眼球特許図面

透明な外殻の中で眼球を液体に浮かせ、外側の電磁石から非接触で向きを変える。後方には映像用カメラも置ける。

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どんな発明?

「Animatronic Eye with an Electromagnetic Drive and Fluid Suspension and with Video Capability」は、眼球を機械軸で外から直接つかまず、透明な殻と液体の中へ浮かせて回転させる構成です。FIG. 4では外殻、内側の球体、磁気部品、コイル、カメラ側の光学系が分解して描かれています。

内側の球には磁気要素を持たせ、外側の電磁駆動で向きを変えます。液体は回転を滑らかにし、屈折率を外殻や球体に合わせれば、内部の境界を目立たなくできます。さらに後方のカメラは透明な眼球を通して外を見ることができ、視線制御と視覚入力を同じ「目」に重ねられます。

Disney Enterprises IncFIG. 03
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2009-09-16
PUBLISHED
2011-03-17
PUBLICATION
US20110066239A1
INVENTORS
Lanny Starkes Smoot / Katherine May Bassett / Marcus Hammond
ORIGINAL
FIG. 04

ドローンを隠して海賊船そのものを空へ飛ばす

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20210027638A1
UAVの機体をthematic claddingで包み、地上の観客から推進装置を見えにくくして、外装そのものが飛んでいるように見せる。
FIG. 04US20210027638A1
複数ローターのUAVを帆船形状の外装で覆い、空中ショーで船だけが飛んでいるように見せるFIG.2の特許図面

UAVの機体をthematic claddingで包み、地上の観客から推進装置を見えにくくして、外装そのものが飛んでいるように見せる。

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どんな発明?

「Themed aerial vehicle entertainment platform」は、ドローンを舞台裏の機構として隠す発明です。FIG. 2では複数ローターのUAVを帆船のthematic claddingが覆い、観客からは機械の本体が隠れるように構成されています。

特許本文は、UAVが動くことで外装そのものが飛んでいるように見せることに加え、速度に応じてエンジンの光を強くするようなonboard show effectまで想定します。飛行制御と演出制御を同じ車体内で同期させるための仕組みです。

Disney Enterprises IncFIG. 04
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2019-07-26
PUBLISHED
2021-01-28
PUBLICATION
US20210027638A1
INVENTORS
Pehr L. Hovey / Loyal J. Pyczynski / Madeline R. Zupan
ORIGINAL
FIG. 05

何百機もの飛行体を「空中の画素」にする

SOURCE FIGURESFIG. 4
PUBLICATIONUS20140236388A1
一機ずつをfloating pixel=flixelとして扱い、群れの位置を変えることで、空中のscreen自体の形や大きさまで変える。
FIG. 05US20140236388A1
城の上空に多数の小型飛行体を集め、点の集合で巨大な空中表示面を作るFIG.4の特許図面

一機ずつをfloating pixel=flixelとして扱い、群れの位置を変えることで、空中のscreen自体の形や大きさまで変える。

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どんな発明?

「Aerial display system with floating pixels」は、小型UAVを一機の乗り物としてではなく、一個の画素として扱います。特許ではfloating pixelを縮めて「flixel」と呼び、多数のflixelを三次元空間へ配置して大面積の空中displayを作ります。

FIG. 4では城の上空へ大量の点が集まり、一つのdisplay spaceを構成しています。各機が移動すれば、表示する図柄だけでなくscreenの輪郭やサイズそのものも飛行中に変えられます。

Disney Enterprises IncFIG. 05
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2013-02-15
PUBLISHED
2014-08-21
PUBLICATION
US20140236388A1
INVENTORS
Clifford Wong / James Alexander Stark / Robert Scott Trowbridge
ORIGINAL
FIG. 06

柄の中から光るライトセーバーの刀身を本当に伸ばす

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20180326317A1
二枚の細長いblade body memberとLED stripを柄の内部で巻き取り、blade formを通して一本の発光する刀身へ成形する。
FIG. 06US20180326317A1
ライトセーバー型の柄の外壁を外し、二つのblade spool、blade form、モーター、LED spoolと内部駆動を示すFIG.2の特許図面

二枚の細長いblade body memberとLED stripを柄の内部で巻き取り、blade formを通して一本の発光する刀身へ成形する。

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どんな発明?

「Sword device with retractable, internally illuminated blade」は、映画でCGIを使って描くようなenergy swordの伸縮を、ライブ用の実物の小道具で再現するための発明です。FIG. 2では柄の外壁を外し、二つのblade spool、blade form、モーター、LED spoolなどが露出しています。

収納時は二枚のblade body memberとLED stripを柄の中へ巻き取り、作動するとblade formを通して外へ送り出します。二枚の部材が一本の筒状の刀身を作り、その間のLEDが内部から光らせるため、柄から光の刃が「伸びる」動きを物理的に見せられます。

Disney Enterprises IncFIG. 06
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2017-03-16
PUBLISHED
2018-11-15
PUBLICATION
US20180326317A1
INVENTORS
Michael R. Honeck / Lanny S. Smoot / Quinn Y. Smithwick / Eli Joseph Romaire / David J. McCall / Terry O. Sandin / Adam B. Forster / Peter Anastasios Chevako
ORIGINAL
FIG. 07

ライドに乗るだけでなく、乗客の入力で動きを変える

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20240408503A1
乗客が体重をかける、バーやジョイスティックを動かすといった入力を検出し、個々の車両の姿勢や動きへ反映する。
FIG. 07US20240408503A1
天井側の走行モジュールから複数関節のアームを吊り下げ、その先にハンググライダー風の乗客車両を持つFIG.2のライド特許図面

乗客が体重をかける、バーやジョイスティックを動かすといった入力を検出し、個々の車両の姿勢や動きへ反映する。

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どんな発明?

「Rider controlled amusement park ride」は、決められた動きを乗客が受け取るだけのライドから一歩進み、乗客の操作をmotion controlへ戻す仕組みです。FIG. 2では天井側のtrack moduleから多関節アームが下がり、その先にハンググライダーのようなvehicleが吊られています。

入力は専用ジョイスティックだけとは限りません。特許は、乗客が体重を移す、バーやハンドルへ力をかける、入力装置の位置を変える、といった動作もセンサーで読み取り、車両の向きや姿勢変化へ反映する構成を説明しています。

Disney Enterprises IncFIG. 07
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2023-06-12
PUBLISHED
2024-12-12
PUBLICATION
US20240408503A1
INVENTORS
Robert J. Evans
ORIGINAL
FIG. 08

乗り物をなくして床そのものを全方向へ動かす

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20250117069A1
小さなactive tileを敷き詰め、それぞれの接触面を動かすことで、人や物体を任意方向へ運び、歩いても床の中央へ戻せる。
FIG. 08US20250117069A1
多数のactive tileで構成された床の上に二人の利用者と物体が立ち、各タイルが個別に動くmodular omnidirectional floorを示すFIG.1の特許図面

小さなactive tileを敷き詰め、それぞれの接触面を動かすことで、人や物体を任意方向へ運び、歩いても床の中央へ戻せる。

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どんな発明?

「Modular omnidirectional actuated floors」は、客を運ぶ車両ではなく、客が立っている床面を動かします。FIG. 1では小さなactive tileをつないだ一枚の床の上に二人の利用者と物体が置かれています。

センサーが人の位置や向きを読み、歩く方向と逆へ床を動かせば、本人は歩き続けているのに有限の床から出ません。特許はさらに、滑る・転ぶ・でこぼこした地形の感覚を床の動きで作ったり、人だけでなく小道具を移動させたりする使い方も説明しています。

Disney Enterprises IncFIG. 08
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2023-10-05
PUBLISHED
2025-04-10
PUBLICATION
US20250117069A1
INVENTORS
Jack Wetherell / Robert J. Bristow / Lanny S. Smoot / Alfredo M. Ayala / Michael Ryan Enriquez Arevalo / Frank D. Mezzatesta, III
ORIGINAL
FIG. 09

砂場を触った形に反応する投影スクリーンにする

SOURCE FIGURESFIG. 11
PUBLICATIONUS20120133911A1
砂そのものを触れる3D projection surfaceにし、作るべき形のガイドや完成後の映像を同じ場所へ投影する。
FIG. 09US20120133911A1
砂を入れた浅い容器、上方のプロジェクター、コンピューター、ディスプレイ、利用者の手をまとめて示すFIG.11のinteractive projected sandbox特許図面

砂そのものを触れる3D projection surfaceにし、作るべき形のガイドや完成後の映像を同じ場所へ投影する。

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どんな発明?

「Interactive Projected Sandbox」は、砂場を入力装置とスクリーンの両方にします。FIG. 11には砂を入れた容器、その上から映像を当てるプロジェクター、制御用コンピューターとディスプレイ、そして砂へ手を伸ばす利用者が一枚に描かれています。

まず「ここから砂を動かす」「ここへ盛る」といったガイド画像を投影して、利用者自身に地形を作ってもらいます。形ができた後は、その三次元の砂面へ写真やアニメーション、動画を位置合わせして投影します。特許は火山を作り、その表面へ溶岩の流れを映す例も説明しています。

Disney Enterprises IncFIG. 09
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2009-07-17
PUBLISHED
2012-05-31
PUBLICATION
US20120133911A1
INVENTORS
Thomas Fraiser Laduke
ORIGINAL
FIG. 10

霧を十字に交差させ、360度から見える像を浮かべる

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20250147401A1
X字型の四枚の薄い霧を別々のprojection surfaceとして使い、前・後・左・右の像を重ねて周囲から見られるfloating imageを作る。
FIG. 10US20250147401A1
十字状に交差する四枚のlaminar fog surfaceと、その四方向から投影するprojectorで中央の人物像を作るFIG.2の特許図面

X字型の四枚の薄い霧を別々のprojection surfaceとして使い、前・後・左・右の像を重ねて周囲から見られるfloating imageを作る。

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どんな発明?

「System for generating a 360 degree viewable image on laminar fog screen」は、平面スクリーンを水滴の薄い層へ置き換えます。FIG. 2では四つのlaminar fog flowがX字に交差し、その周囲に四つのlight source/projectorが配置されています。

各プロジェクターが対象物の前面、側面、背面など別の像を対応する霧へ投影すると、見る方向に応じて異なる面が見えます。特許は、ゲストがその周囲を歩いて複数角度から見られる「360-degree viewable image」を作る構成として説明しています。

Disney Enterprises IncFIG. 10
ASSIGNEE
Disney Enterprises Inc
PRIORITY
2023-11-08
PUBLISHED
2025-05-08
PUBLICATION
US20250147401A1
INVENTORS
Daniel M. Joseph / Jessica Klouda
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

未来のテーマパークでは、「舞台」が固定されなくなる

10件を順に見ると、舞台のさまざまな部分が動き出します。キャラクターは台座から離れ、空は巨大な表示面になり、小道具は映画の特殊効果を現実へ持ち出します。客が乗る機械だけでなく、客の足元や手で触る砂までが動的な装置になります。

これらの発明は、物理的な手触りや動きから「没入感」を作ります。ロボットを柔らかくする、UAVを見えなくする、床を逆方向へ動かす、霧を投影面にする。現実の物理側を変えることで、ゲストに「これは機械だ」と意識させる境界を少しずつ消しています。

Disneyの特許に残っている未来では、「どこまでが舞台で、どこからがキャラクターで、何がスクリーンなのか」が分からなくなっていきます。テーマパーク全体が一つの大きな動く装置へ近づいていくように見えます。

SOURCES

一次資料

  1. US20220119053A1 — Legged high-dexterity self-balancing capable robot actor
  2. US20170095925A1 — Soft body robot for physical interaction with humans
  3. US20110066239A1 — Animatronic Eye with an Electromagnetic Drive and Fluid Suspension and with Video Capability
  4. US20210027638A1 — Themed aerial vehicle entertainment platform for providing dynamically-coordinated show
  5. US20140236388A1 — Aerial display system with floating pixels
  6. US20180326317A1 — Sword device with retractable, internally illuminated blade
  7. US20240408503A1 — Rider controlled amusement park ride
  8. US20250117069A1 — Modular omnidirectional actuated floors providing an interactive user experience
  9. US20120133911A1 — Interactive Projected Sandbox
  10. US20250147401A1 — System for generating a 360 degree viewable image on laminar fog screen