店で買い物をするとき、動くのはふつう人です。カートを押し、棚まで歩き、商品を取り、レジへ運びます。けれどWalmartの特許を並べると、その前提が少しずつ反転していきます。

カートが人の状態を読み、押す力を補い、無人機が買い物についてくる。棚の在庫は移動ロボットが測り、さらに商品そのものがロボットに乗って客の前へやって来る。店の外ではロッカーが動き、ドローンが荷物を運びます。

ここで紹介する10件はいずれもUS公開特許です。Walmartが実際に展開した棚スキャナーとドローン配送には近い方向がありますが、本記事の特許との一対一対応は確認していないため、どちらも「関連あり」に留めています。

FIG. 01

カートの持ち手が脈拍や体温まで読んでいる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20180240554A1
US20180240554A1 / FIG. 1。カートのハンドルで取得した生体情報をサーバーへ送り、必要なら店員へ知らせる。
FIG. 01US20180240554A1
Walmartの生体情報フィードバック付き買い物カートの特許図面。客、カート、サーバー、店員のつながりが描かれている。

US20180240554A1 / FIG. 1。カートのハンドルで取得した生体情報をサーバーへ送り、必要なら店員へ知らせる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

買い物客がカートを握ると、ハンドル内のセンサーが脈拍、体温、握る力などを取得します。さらにカートの速度や押す力も組み合わせ、買い物中の変化を追います。

値の変化から『この客は助けが必要かもしれない』と判定すると、サーバーが店員の端末へ通知します。カートが商品を運ぶ道具から、客の状態を見守る接点へ変わる発想です。

Walmart Apollo LLCFIG. 01
ASSIGNEE
Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2017-02-22
PUBLISHED
2018-08-23
PUBLICATION
US20180240554A1
INVENTORS
Aaron Vasgaard / Nicholaus A. Jones / Matthew Jones / Kurt William Robert Bessel
ORIGINAL
FIG. 02

重くなるほど、カート自身が押す力を足してくれる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20180162432A1
US20180162432A1 / FIG. 1。車輪の回転で発電し、ハンドルへ強い力がかかるとモーターで前進を助ける。
FIG. 02US20180162432A1
Walmartのパワーアシスト付き買い物カートの特許図面。ハンドル、車輪、発電機、蓄電部が示されている。

US20180162432A1 / FIG. 1。車輪の回転で発電し、ハンドルへ強い力がかかるとモーターで前進を助ける。

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どんな発明?

車輪の回転から電気をつくって蓄え、ハンドルにかかる圧力を監視します。軽く押しているときは発電し、強く押しているときは蓄えた電力でモーターを動かして前進を助けます。

商品を入れるほど重くなる買い物カートに、電動アシスト自転車のような考え方を持ち込みます。人がカートを動かす一方向の関係から、カートも人を押し返す関係へ変わります。

Walmart Apollo LLCFIG. 02
ASSIGNEE
Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2016-12-08
PUBLISHED
2018-06-14
PUBLICATION
US20180162432A1
INVENTORS
Matthew A. Jones / Nicholaus A. Jones
ORIGINAL
FIG. 03

買い物客のそばを無人機がついて回り、商品を見ている

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20180260800A1
US20180260800A1 / FIG. 1。店内の無人機が客やカートの近くを移動し、選ばれた商品をデジタルな買い物かごへ記録する。
FIG. 03US20180260800A1
Walmartの店内無人機を使う買い物支援システムの特許図面。客、買い物カート、無人機、モバイル端末が描かれている。

US20180260800A1 / FIG. 1。店内の無人機が客やカートの近くを移動し、選ばれた商品をデジタルな買い物かごへ記録する。

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どんな発明?

店内を移動する無人機が、買い物客やカートを追いながら、商品がカートへ入ったことを検出します。取得した情報からdigital basketをつくり、会計処理へつなげる構成です。

実施形態には空を飛ぶドローンだけでなく地上走行車も含まれ、さらにロボットアームで棚から商品を取る方向まで示されています。買い物客の横に、もう一人の『機械の買い物係』が付くような発想です。

Walmart Apollo LLCFIG. 03
ASSIGNEE
Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2017-03-07
PUBLISHED
2018-09-13
PUBLICATION
US20180260800A1
INVENTORS
Stephen Tyler Caution / Douglas Jahe Ryner / Yurgis Mauro Bacallao
ORIGINAL
FIG. 04

棚の前を走りながら、3Dで「どれだけ残っているか」を測る

SOURCE FIGURESFIG. 4, FIG. 5
PUBLICATIONUS20210049542A1
US20210049542A1 / FIGS. 4–5。移動ユニットと深度計測の例を同じシートで示し、棚の在庫量を推定する。
FIG. 04US20210049542A1
Walmartの在庫走査用モーター駆動ユニットの特許図面。複数の高さにカメラと深度センサーを備えた移動装置が描かれている。

US20210049542A1 / FIGS. 4–5。移動ユニットと深度計測の例を同じシートで示し、棚の在庫量を推定する。

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どんな発明?

モーターで売り場を移動するユニットに、カメラとdepth sensorを複数の高さで載せます。棚札や商品を読みながら、棚の奥行き方向まで3Dで測り、空いている体積から在庫量を推定します。

人が棚を見て『そろそろ補充』と判断していた仕事を、位置情報、画像、点群、在庫データの組み合わせへ分解しています。

Walmart Apollo LLCFIG. 04
ASSIGNEE
Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2019-08-12
PUBLISHED
2021-02-18
PUBLICATION
US20210049542A1
INVENTORS
Ravi Kumar Dalal / Bowen Gong
ORIGINAL
FIG. 05

客が棚へ行く代わりに、商品入りの箱がロボットでやって来る

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20240013144A1
US20240013144A1 / FIG. 1。商品をtote単位で管理し、ロボットが補充や搬送を担う自動店舗の構成。
FIG. 05US20240013144A1
Walmartの完全自動セルフサービス店舗の特許図面。客の通路、商品入りtote、ロボット用の保管領域が描かれている。

US20240013144A1 / FIG. 1。商品をtote単位で管理し、ロボットが補充や搬送を担う自動店舗の構成。

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どんな発明?

この店舗では商品をtoteと呼ぶ箱に入れて管理し、その箱を移動ロボットが売り場へ運びます。別の実施形態では、客が画面で選んだ商品を含むtoteをロボットが客のところへ持って来ます。

普通のスーパーでは人が棚の間を移動します。ここでは商品の側が保管領域と売り場を移動し、在庫が減れば別のtoteが補充されます。『棚は固定されている』という前提まで薄くなります。

Walmart Apollo LLCFIG. 05
ASSIGNEE
Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2017-05-23
PUBLISHED
2024-01-11
PUBLICATION
US20240013144A1
INVENTORS
John G. Lert, Jr. / William J. Fosnight / Matthew W. Coady
ORIGINAL
FIG. 06

ドローンが仕事ごとに「道具」を付け替える

SOURCE FIGURESFIG. 4, FIG. 5
PUBLICATIONUS20190193853A1
US20190193853A1 / FIGS. 4–5。共通カプラーを使い、UAVとツールシステムを結合・着脱する構造を示す。
FIG. 06US20190193853A1
Walmartの交換式ツールを装着する無人航空機の特許図面。UAVと下部のツールシステムを結合する構造が描かれている。

US20190193853A1 / FIGS. 4–5。共通カプラーを使い、UAVとツールシステムを結合・着脱する構造を示す。

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どんな発明?

ドローン本体の下にuniversal couplerを設け、荷物保持具、センサー、カメラ、照明、薬剤散布装置など異なるtool systemを交換できるようにします。

一台の飛行体を特定用途専用にするのではなく、飛ぶ部分と仕事をする部分を分離します。必要な場所へ飛び、そこで必要な道具だけを持つという、空飛ぶ共通プラットフォームの考え方です。

Walmart Inc / Walmart Apollo LLCFIG. 06
ASSIGNEE
Walmart Inc / Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2016-09-09
PUBLISHED
2019-06-27
PUBLICATION
US20190193853A1
INVENTORS
Robert L. Cantrell / John P. Thompson / David C. Winkle / Michael D. Atchley / Donald R. High / Todd D. Mattingly / Brian G. McHale / John J. O'Brien / John F. Simon / Nathan G. Jones / Robert C. Taylor
ORIGINAL
FIG. 07

店からさらに上流へ。ドローンが花から花へ受粉する

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20180065749A1
US20180065749A1 / FIG. 1。UAVが花から花粉を集め、別の花へ付着させ、センサーで結果を確認する。
FIG. 07US20180065749A1
Walmartの無人航空機による作物受粉システムの特許図面。花の間を飛ぶUAV、受粉用ブラシ、ドッキングステーションが描かれている。

US20180065749A1 / FIG. 1。UAVが花から花粉を集め、別の花へ付着させ、センサーで結果を確認する。

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どんな発明?

UAVから伸びたブラシ状のpollen applicatorで一つの花から花粉を集め、別の花へ運びます。さらにセンサーで花粉が付いたことを確認し、必要ならドッキングステーションへ戻って充電します。

ここでは、小売の自動化が売り場から畑へ広がります。商品を運ぶだけでなく、商品になる作物が育つ工程まで無人機の仕事として捉えているのが異質です。

Walmart Apollo LLCFIG. 07
ASSIGNEE
Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2016-09-08
PUBLISHED
2018-03-08
PUBLICATION
US20180065749A1
INVENTORS
Robert L. Cantrell / John P. Thompson / David C. Winkle / Michael D. Atchley / Donald R. High / Todd D. Mattingly / Brian G. McHale / John J. O'Brien / John F. Simon
ORIGINAL
FIG. 08

受け取りロッカーに車輪を付け、箱そのものを運べるようにする

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20180165902A1
US20180165902A1 / FIG. 2。温度管理できるportable containerに車輪とハンドルを持たせる。
FIG. 08US20180165902A1
Walmartの車輪付きスマートロッカーの特許図面。断熱された収納箱、車輪、ハンドル、ドッキング設備が描かれている。

US20180165902A1 / FIG. 2。温度管理できるportable containerに車輪とハンドルを持たせる。

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どんな発明?

smart lockerを壁に固定された受取設備ではなく、車輪付きのportable containerとして構成します。内部を断熱・温度管理して、冷凍品や温かい商品も状態を保ったまま運べるようにします。

利用者認証やドッキングステーションとの接続も想定され、箱は保管場所であると同時に輸送単位になります。『荷物をロッカーへ持っていく』のではなく、『ロッカーごと動かす』方向です。

Walmart Apollo LLCFIG. 08
ASSIGNEE
Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2016-12-14
PUBLISHED
2018-06-14
PUBLICATION
US20180165902A1
INVENTORS
Bruce W. Wilkinson / Todd Davenport Mattingly
ORIGINAL
FIG. 09

大きな配送車から小さな無人車へロッカーごと受け渡す

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20180170675A1
US20180170675A1 / FIG. 1。大型carrier vehicle内のロッカーを、小型delivery vehicleが受け取って目的地まで運ぶ。
FIG. 09US20180170675A1
Walmartの自律ロッカー配送の特許図面。ロッカーを積んだ大型車と、ロッカーを受け取る小型配送車が描かれている。

US20180170675A1 / FIG. 1。大型carrier vehicle内のロッカーを、小型delivery vehicleが受け取って目的地まで運ぶ。

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どんな発明?

大型のcarrier vehicleには注文ごとのlockerが並び、内部の棚やコンベヤーで受渡位置まで移動します。そこへ小型の自律delivery vehicleが寄り、指定されたロッカーを受け取ります。

小型車はそのまま家のポーチやガレージなどへロッカーを運びます。商品を一個ずつ積み替える代わりに、保管箱そのものを物流のバトンとして使います。

Walmart Apollo LLCFIG. 09
ASSIGNEE
Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2016-12-21
PUBLISHED
2018-06-21
PUBLICATION
US20180170675A1
INVENTORS
Donald R. High / David C. Winkle / Michael D. Atchley / Brian G. McHale / Nicholas Ray Antel / John J. O'Brien / Todd D. Mattingly / Bruce W. Wilkinson
ORIGINAL
FIG. 10

ドローンが屋根へ降り、荷物だけが安全な受取口まで下りてくる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20190233135A1
US20190233135A1 / FIG. 1。ドローンは人の頭上へ直接降りず、屋根を着陸・防護面として使って荷物を受け渡す。
FIG. 10US20190233135A1
Walmartのドローン配送用受取設備の特許図面。屋根上のUAV着陸部、荷物、屋根の下に立つ利用者が描かれている。

US20190233135A1 / FIG. 1。ドローンは人の頭上へ直接降りず、屋根を着陸・防護面として使って荷物を受け渡す。

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どんな発明?

荷物を運ぶUAVは建物やkioskの屋根へ着陸し、その屋根が利用者と飛行体の間の防護壁になります。荷物はシュート、コンベヤー、AGVなどで屋根から受取口まで移動させます。

ドローン配送で難しい『人の近くへどう安全に到着するか』を、飛行制御だけでなく受取側の建築物から解こうとしています。店が客の家へ近づく最後の一歩で、受取場所まで新しい装置になります。

Walmart Apollo LLCFIG. 10
ASSIGNEE
Walmart Apollo LLC
PRIORITY
2018-01-31
PUBLISHED
2019-08-01
PUBLICATION
US20190233135A1
INVENTORS
Robert Cantrell / Todd Mattingly / John J. O'Brien / David Tovey / Donald R. High / Kurt W. Bessel
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

未来の店では、人だけでなく「店の側」がこちらへ動いてくる

最初の2件では、まだ主役は買い物客です。ただしカートは受け身の金属かごではなくなり、人の状態を測り、必要なら押す力まで足します。次に無人機と棚スキャナーが現れると、店内を歩いて情報を集める仕事も機械側へ移ります。

自動店舗ではさらに、客が棚を探し回るのではなく、必要な商品を入れたtoteをロボットが運びます。そこから先は店の境界まで動きます。道具を付け替えるドローンは店舗以外の仕事へ広がり、受粉まで担います。ロッカーは固定設備ではなく車輪付きの容器になり、配送車から小さな車両へ受け渡されます。

最後に残るのは『店へ行く』という行為そのものです。ドローンが商品を持って来るなら、店舗は建物一つではなく、カート、ロボット、在庫システム、ロッカー、飛行体がつながった移動する仕組みになります。Walmartの特許図面には、小売を場所ではなく物流の連続として捉える発想が繰り返し現れています。

SOURCES

一次資料

  1. US20180240554A1 — System and method for a biometric feedback cart handle
  2. US20180162432A1 — Self-charging shopping cart system with power assist
  3. US20180260800A1 — Unmanned vehicle in shopping environment
  4. US20210049542A1 — Systems, devices, and methods for estimating stock level with depth sensor
  5. US20240013144A1 — Fully automated self-service store
  6. US20190193853A1 — Systems and methods to interchangeably couple tool systems with unmanned vehicles
  7. US20180065749A1 — Systems and methods for pollinating crops via unmanned vehicles
  8. US20180165902A1 — Smart Locker
  9. US20180170675A1 — Autonomous locker delivery
  10. US20190233135A1 — Method and system for delivering goods using an unmanned aerial vehicle