Amazonの公開特許には、配送拠点そのものを作り替える案が次々に現れます。倉庫そのものを空へ浮かべ、街中にはドローン用の高層タワーを建て、道路の代わりに地下コンベヤーを通す。
ラストワンマイルの仕組みも変わります。配送ドローンは街灯で休み、走るトラックへ途中乗車し、荷物にはパラシュートになる送り状を貼る。空中で放された箱はフィンや複数のパラシュートを使い、人が手を振ればドローンがその意味を読む。地上では小型ロボットが家から荷物を迎えに行き、別のロボットへ荷物を受け渡します。
こうした仕組みはAmazon Technologiesの公開特許に描かれています。AmazonはPrime Airなどを実際に運用していますが、今回の10件については、公開資料で各特許番号と実サービスの一対一対応を確認できませんでした。
巨大な倉庫そのものを街の上空へ浮かべる
どんな発明?
「Airborne fulfillment center utilizing unmanned aerial vehicles for item delivery」は、在庫を積んだAirborne Fulfillment Center(AFC)を高高度に置き、そこからUAVを降下させて注文品を配送する構想です。FIG. 3では、飛行船型のAFCから複数のUAVが都市へ向かい、別の航空機がAFCとの間を往復しています。
普通の配送では、倉庫を地上に建てて、そこから車両やドローンを出します。この特許は倉庫を配送先の上空へ持っていき、重力まで移動の一部として使うことで、物流拠点の「住所」そのものをなくそうとします。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2014-12-22
- PUBLISHED
- 2016-04-05
- PUBLICATION
- US9305280B1
- INVENTORS
- Paul William Berg / Scott Isaacs / Kelsey Lynn Blodgett
街の真ん中にドローン用の「蜂の巣倉庫」を建てる
どんな発明?
この特許は、郊外に広い平屋の倉庫を置く代わりに、都市の中へ多層型のフルフィルメントセンターを建てる構想です。FIG. 1Aでは円筒形の建物の外壁に多数の開口が並び、その周囲をUAVが飛んでいます。
各階をUAVの発着に使えるため、荷物をいったん1階まで下ろして配送車へ積む必要がありません。倉庫を縦へ積み上げ、その壁面全体を滑走路ならぬドローンポートへ変えています。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2015-12-18
- PUBLISHED
- 2017-06-22
- PUBLICATION
- US20170175413A1
- INVENTORS
- James Christopher Curlander / Asaf Gilboa-Amir / Lauren Marie Kisser / Robert Arthur Koch / Ricky Dean Welsh
配送トラックを使わず、地下コンベヤーで家まで送る
どんな発明?
「Dedicated network delivery systems」は、人や一般車両が走る道路とは別に、荷物だけを運ぶ専用ネットワークを設ける特許です。FIG. 1では、フルフィルメントセンターから地下の搬送路が伸び、住宅側のステーションまで荷物を運びます。
搬送手段はコンベヤーやレールに限らず、圧力制御されたキャリアなども想定されています。交通渋滞を回避するために配送車を賢くするのではなく、配送のための交通網を別に一本つくる発想です。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2014-05-12
- PUBLISHED
- 2016-11-29
- PUBLICATION
- US9505559B1
- INVENTORS
- Xiaoshan Cai
街灯の上を配送ドローンの休憩所にする
どんな発明?
「Multi-use UAV docking station systems and methods」は、UAVのドッキングステーションを街中へ分散配置する発想です。FIG. 1Aでは街灯の灯具上にUAVが載り、FIG. 1Bでは複数形状のUAVが描かれます。
配送ドローンは飛び続けるだけでなく、充電や待機、ルート変更のために途中拠点を必要とします。そこで専用施設を建てる代わりに、すでに電力や通信を持つ街路設備を配送インフラとしても使います。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2014-12-18
- PUBLISHED
- 2018-10-30
- PUBLICATION
- US10112712B1
- INVENTORS
- Nicholas Kristofer Gentry / Raphael Hsieh / Luan Khai Nguyen
配送ドローンが走っているトラックに途中乗車する
どんな発明?
この特許は、UAVが目的地までずっと飛び続ける代わりに、途中で配送トラックやその他の交通車両へ着陸し、一定区間を運んでもらう方法を扱っています。FIG. 3は複数の車両ルートとUAVの乗降地点を一枚の経路図で示します。
飛行には電力を使いますが、すでに同じ方向へ動いている車両の上に乗れば、その区間の飛行を省けます。ドローンとトラックを競合する配送手段ではなく、同じ荷物をリレーする交通手段として組み合わせます。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2015-03-02
- PUBLISHED
- 2016-09-08
- PUBLICATION
- US20160257401A1
- INVENTORS
- Daniel Buchmueller / Scott A. Green / Atishkumar Kalyan / Gur Kimchi
送り状そのものが箱のパラシュートになる
どんな発明?
「Aerial package delivery system」は、配送用ラベルへパラシュートを組み込む特許です。FIG. 1には「PACK ITEM, ATTACH PARACHUTE SHIPPING LABEL」と明記され、箱へラベルを貼り、UAVへ取り付け、配送先で投下する流れが描かれています。
FIG. 2ではそのパラシュートが展開し、箱を吊って降下します。梱包箱そのものを特殊形状にするのではなく、もともと配送に必要なラベルへ落下装置の役割まで持たせています。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2015-08-26
- PUBLISHED
- 2017-05-30
- PUBLICATION
- US9663234B1
- INVENTORS
- Jon T. Hanlon
落とした箱がフィンやパラシュートで着地点を修正する
どんな発明?
「Maneuvering a package following in-flight release from an unmanned aerial vehicle」は、UAVから切り離された後の荷物を、空中で目標地点へ誘導する特許です。FIG. 5Fには箱の周囲へ配置された複数のフィン、FIG. 5Gには複数のパラシュートが描かれます。
配送ドローンが正確な地点まで降りなくても、荷物自身が残りの軌道を調整できれば、ドローンはより高い位置から荷物を放せます。配送の最後の制御を、飛行機体から箱へ引き渡しています。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2015-06-26
- PUBLISHED
- 2017-02-14
- PUBLICATION
- US9567081B1
- INVENTORS
- Brian C. Beckman / Menashe Haskin / Michael Rolnik / Yan Vule
人が手を振ると、配送ドローンがその意味を読む
どんな発明?
「Human interaction with unmanned aerial vehicles」は、UAVが周囲の人間のジェスチャーや音声などを認識し、その意味に応じて行動を変える仕組みです。FIG. 1には、家の前で大きく腕を動かす人と、その近くのUAVが描かれています。
特許では、手招きのように着陸や配送を促す動きだけでなく、追い払う動作のような入力も想定しています。スマホ画面を開かず、人間が普段使う身体動作をそのまま配送システムへのコマンドにします。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2014-09-29
- PUBLISHED
- 2018-03-20
- PUBLICATION
- US9921579B1
- INVENTORS
- Frederik Schaffalitzky
家ごとの配送ロボットが道路まで荷物を迎えに行く
どんな発明?
「Autonomous ground vehicles providing ordered items in pickup areas」は、小型の自律走行車両(AGV)が注文品を受け取り、利用者へ運ぶ仕組みを扱っています。FIG. 7Aでは、三つの住宅からそれぞれAGVが出発し、道路上の輸送車両と合流します。
配送車を各玄関へ寄せるのではなく、家の側から小型ロボットが「取りに行く」。ラストワンマイルの最後を配送会社だけの仕事にせず、受取側のロボットと分担する発想です。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2016-09-29
- PUBLISHED
- 2019-05-28
- PUBLICATION
- US10303171B1
- INVENTORS
- Tye Michael Brady / Darren Ernest Canavor / Ethan Zane Evans / Pragyana K. Mishra / Hilliard Bruce Siegel
配送ロボット同士が荷物をバトンのように受け渡す
どんな発明?
「Mobile sortation and delivery of multiple items」は、複数の荷物を運ぶ自律移動ロボットに、荷物を個別に受け入れたり排出したりする搬送機構を持たせる特許です。FIG. 1Dでは二台のユニットが横付けされ、搬送面同士がつながっています。
明細書は人からロボットへ渡すだけでなく、ロボット同士がランデブーして荷物を移す構成も説明しています。一台が倉庫から玄関まで走り切る必要はなく、区間ごとに別のロボットへ引き継げます。
- ASSIGNEE
- Amazon Technologies Inc
- PRIORITY
- 2018-06-29
- PUBLISHED
- 2023-01-31
- PUBLICATION
- US11565881B1
- INVENTORS
- Tye Michael Brady / Joseph Quinlivan
AFTER THE FIGURES
未来の配送では、「配送のためだけの場所」が減っていく
Amazonの10件の特許は、配送に使う場所や設備の役割を変えています。倉庫は地上の郊外にある必要がなくなり、配送経路は道路だけに限られなくなり、街灯は照明だけの設備ではなくなります。既存の空、建物、地下、車両、街路設備を配送ネットワークの一部へ変える発想が繰り返し現れます。
荷物の側も受け身ではありません。送り状が落下装置になり、箱には姿勢や落下位置を変える機構が付きます。さらに配送先の人間もアプリだけでなく身体のジェスチャーでドローンへ意思を伝えるようになります。配送システムの境界が、倉庫や車両の外へどんどん広がっています。
Amazonの配送特許で崩れていくのは、「倉庫・道路・配達員が荷物を運ぶ」という役割分担です。未来の配送は新しい乗り物を一台足すというより、街そのものを少しずつ配送装置へ変えていくのかもしれません。
SOURCES
一次資料
- US9305280B1 — Airborne fulfillment center utilizing unmanned aerial vehicles for item delivery
- US20170175413A1 — Multi-level fulfillment center for unmanned aerial vehicles
- US9505559B1 — Dedicated network delivery systems
- US10112712B1 — Multi-use UAV docking station systems and methods
- US20160257401A1 — Landing of unmanned aerial vehicles on transportation vehicles for transport
- US9663234B1 — Aerial package delivery system
- US9567081B1 — Maneuvering a package following in-flight release from an unmanned aerial vehicle (UAV)
- US9921579B1 — Human interaction with unmanned aerial vehicles
- US10303171B1 — Autonomous ground vehicles providing ordered items in pickup areas
- US11565881B1 — Mobile sortation and delivery of multiple items
