スーツケースはかなり完成された道具に見えます。箱があり、取っ手があり、車輪がある。ところが特許を追うと、その「箱」を何に変えるかという発想が延々と続いています。人について走るもの、乗って移動するもの、階段を登るもの。移動が終わった後も、棚や机やベッドへ変わります。

運ぶ仕事を機械へ渡す案もあれば、旅先で家具を持ち歩く案もあります。空気で膨らませたり、子どもを乗せたり、持ち上げた瞬間に自分の重さを知らせたりと、同じ外形から別々の未来が描かれています。

この10件については、特定の製品との直接対応を確認できていないため、Patent → Productはすべて unconfirmed としています。

FIG. 01

スーツケースが自分で人のあとをついてくる

SOURCE FIGURESFIG. 1A, FIG. 1B
PUBLICATIONUS20180360177A1
US20180360177A1 / FIGS. 1A–1B。モーター、センサー、通信機能を備え、人の端末を追従できるロボットスーツケース。
FIG. 01US20180360177A1
Travelmate Roboticsの自走式ロボットスーツケースを正面から示した特許図面。

US20180360177A1 / FIGS. 1A–1B。モーター、センサー、通信機能を備え、人の端末を追従できるロボットスーツケース。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

Travelmate Roboticsの特許はスーツケースそのものを小型移動ロボットとして扱います。スマートフォンなどと無線接続し、その端末を持つ利用者について自律走行する構成です。

縦置きのまま走るモードと、横倒しで走るモードも記載されています。荷物を引く人と荷物の主従関係が、ほぼ逆になります。

Travelmate Robotics IncFIG. 01
ASSIGNEE
Travelmate Robotics Inc
PRIORITY
2017-06-15
PUBLISHED
2018-12-20
PUBLICATION
US20180360177A1
INVENTORS
Leonid Kovtun / Taras Yermakov / Leonid Ryzhenko
ORIGINAL
FIG. 02

引くのをやめて、スーツケースに乗って移動する

SOURCE FIGURESFIG. 1A
PUBLICATIONUS8282113B2
US8282113B2 / FIG. 1A。背面の足場を開くと、スーツケースが小型スクーターのような乗り物になる。
FIG. 02US8282113B2
展開した足場と操舵輪を備えた乗用スーツケースの特許図面。

US8282113B2 / FIG. 1A。背面の足場を開くと、スーツケースが小型スクーターのような乗り物になる。

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どんな発明?

この特許では、スーツケース背面に折り畳み式のプラットフォームを付け、展開すると利用者が立って乗れる構成にします。操舵用の車輪とハンドルを備え、電動モーターを使う実施形態もあります。

荷物を運ぶための車輪が人を運ぶための車輪へ役割を変えます。

IndividualFIG. 02
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2009-06-01
PUBLISHED
2012-10-09
PUBLICATION
US8282113B2
INVENTORS
James W. Veal / Madelyn T. Veal
ORIGINAL
FIG. 03

階段に来ると、背中からクローラーが出てくる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20210114646A1
US20210114646A1 / FIG. 1。背面の支持フレームにクローラーを持たせ、階段の上り下りを助ける。
FIG. 03US20210114646A1
階段用の可動支持フレームとクローラーを背面に備えたスーツケースの特許図面。

US20210114646A1 / FIG. 1。背面の支持フレームにクローラーを持たせ、階段の上り下りを助ける。

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どんな発明?

普通のキャスターが苦手な階段に対して、この特許は背面から別の支持フレームを動かします。そこにクローラー機構を載せ、上りでは段差へ押し当てて滑らせ、下りでは先に次の段へ接触させます。

平地用の車輪を万能化するのではなく、階段だけ別の足回りへ切り替える発想です。

IndividualFIG. 03
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2019-10-17
PUBLISHED
2021-04-22
PUBLICATION
US20210114646A1
INVENTORS
Tadao Hashimoto
ORIGINAL
FIG. 04

ふたを開けると、中の服が棚ごと上へ伸びてくる

SOURCE FIGURESFIG. 2A
PUBLICATIONUS20200163427A1
US20200163427A1 / FIG. 2A。中に畳まれていた棚を引き上げ、伸ばしたハンドルで支える。
FIG. 04US20200163427A1
スーツケース内部から複数段の収納棚が上へ展開された特許図面。

US20200163427A1 / FIG. 2A。中に畳まれていた棚を引き上げ、伸ばしたハンドルで支える。

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どんな発明?

この特許は衣類を入れた棚そのものをスーツケース内部へ折り畳んで収納します。到着後は棚を上へ伸ばし、スーツケースの伸縮ハンドルへ固定して自立させます。

ホテルで荷解きして引き出しへ移す代わりに、荷物の中身ごと収納家具へ変えます。

IndividualFIG. 04
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2018-11-26
PUBLISHED
2020-05-28
PUBLICATION
US20200163427A1
INVENTORS
Adrian Nicholas Solgaard Janzen
ORIGINAL
FIG. 05

週末バッグ、機内持込、預け荷物。箱の高さそのものが変わる

SOURCE FIGURESFIG. 1A, FIG. 1B, FIG. 1C
PUBLICATIONUS20230116662A1
US20230116662A1 / FIGS. 1A–1C。外殻パネルをスライドさせ、一つのケースを複数サイズへ変える。
FIG. 05US20230116662A1
同じスーツケースが三段階の高さへ伸縮する様子を並べた特許図面。

US20230116662A1 / FIGS. 1A–1C。外殻パネルをスライドさせ、一つのケースを複数サイズへ変える。

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どんな発明?

外殻を複数のパネルに分け、互いにスライドさせることでケース全体の高さを変えます。明細書は短期旅行用、機内持込用、大型ケースという使い分けを想定しています。機内持込用の寸法例は約22×14×9インチですが、実際に持ち込めるかは製品の外寸・重量と利用する航空会社の規定によります。

ファスナーで数センチ膨らませるのではなく、ハードケースの骨格ごと伸縮させます。

IndividualFIG. 05
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2020-01-28
PUBLISHED
2023-04-13
PUBLICATION
US20230116662A1
INVENTORS
Jeffrey VAYNSHTEYN
ORIGINAL
FIG. 06

横倒しにすると、脚が開いて作業机になる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20200245734A1
US20200245734A1 / FIG. 1。折り畳み式の支持機構を展開し、ケース本体を水平なテーブルとして支える。
FIG. 06US20200245734A1
四本の脚を展開して水平な作業台として使える旅行ケースの特許図面。

US20200245734A1 / FIG. 1。折り畳み式の支持機構を展開し、ケース本体を水平なテーブルとして支える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

MDG Holdingsの特許はスーツケース背面へ折り畳み式の支持機構を組み込みます。支持部を展開するとケース本体を水平に支え、収納機能を残したままテーブルとして使える構成です。

荷物を置く台を別に探すのではなく、荷物そのものが台になります。

MDG Holdings LLCFIG. 06
ASSIGNEE
MDG Holdings LLC
PRIORITY
2019-02-02
PUBLISHED
2020-08-06
PUBLICATION
US20200245734A1
INVENTORS
Haolei Wang / Shuang Wu / Qunzhu Wang / Xiaoqi Lin / Dan Wu / Robert J. Gerth / Margaret D. Gerth
ORIGINAL
FIG. 07

使うときだけ空気を入れてスーツケースを膨らませる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS4044867A
US4044867A / FIG. 1。壁の空気室を膨らませると半剛性の箱になり、抜くと薄く畳める。
FIG. 07US4044867A
壁面に空気室を持つ膨張式スーツケースの特許図面。

US4044867A / FIG. 1。壁の空気室を膨らませると半剛性の箱になり、抜くと薄く畳める。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

1970年代のこの特許はスーツケースの壁そのものを空気室にします。膨らませれば自立する箱になり、空気を抜けば平らに畳んだり丸めたりできます。

さらに、取っ手の中へ空気ポンプを組み込む実施形態まで提案されています。

IndividualFIG. 07
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
1976-06-03
PUBLISHED
1977-08-30
PUBLICATION
US4044867A
INVENTORS
Robert J. Fisher
ORIGINAL
FIG. 08

外側から座席が出てきて、そのままベビーカーになる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20200253347A1
US20200253347A1 / FIG. 1。ケース外側に座席を格納し、車輪位置を変えてベビーカーとして使う。
FIG. 08US20200253347A1
外装に格納した幼児用座席と可動車輪を備えるスーツケースの特許図面。

US20200253347A1 / FIG. 1。ケース外側に座席を格納し、車輪位置を変えてベビーカーとして使う。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許では、スーツケース外側に幼児用の座席を折り畳んで収納します。使用時には座席を開き、車輪の位置も広げて、ケース全体をベビーカーのように押せる姿勢へ変えます。

子ども用の移動具と荷物を別々に持つ代わりに、一つの車輪付きケースへまとめようとします。

IndividualFIG. 08
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2017-11-12
PUBLISHED
2020-08-13
PUBLICATION
US20200253347A1
INVENTORS
Sophie Morris / Becky Murch
ORIGINAL
FIG. 09

ケースを開ききると、二枚のマットレスがベッドになる

SOURCE FIGURESFIG. 11
PUBLICATIONUS20130256072A1
US20130256072A1 / FIG. 11。ケースを180度開いてマットレスを一直線につなぎ、実際に人が横になれる寝床にする。
FIG. 09US20130256072A1
スーツケースを全開して二つの面をつなぎ、簡易ベッドとして使う特許図面。

US20130256072A1 / FIG. 11。ケースを180度開いてマットレスを一直線につなぎ、実際に人が横になれる寝床にする。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許はスーツケースの左右の内面にマットレスを備え、完全に開いたときに一枚の寝床としてつながる構成です。別の図では、上にキャノピーまで展開できます。

空港で長時間待つ旅客を想定し、『椅子がないなら荷物をベッドにする』方向へ進みます。

IndividualFIG. 09
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2012-04-02
PUBLISHED
2013-10-03
PUBLICATION
US20130256072A1
INVENTORS
Modrek Farhat
ORIGINAL
FIG. 10

取っ手を持ち上げるだけで、スーツケースが自分の重さを教える

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20060207850A1
US20060207850A1 / FIG. 1。持ち手の中へ秤を入れ、持ち上げた荷重をその場で表示する。
FIG. 10US20060207850A1
取っ手内部にばね式の重量計を組み込んだスーツケースの特許図面。

US20060207850A1 / FIG. 1。持ち手の中へ秤を入れ、持ち上げた荷重をその場で表示する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許はスーツケースの取っ手そのものへ重量計を組み込みます。ケースを床から持ち上げると、内部のばねやセンサーに荷重がかかり、重量を読み取れます。

空港のカウンターへ着いてから重量超過に気付くのではなく、普段使う取っ手がそのまま計測器になります。

IndividualFIG. 10
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2005-03-18
PUBLISHED
2006-09-21
PUBLICATION
US20060207850A1
INVENTORS
John Lewis
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

スーツケースは旅の途中だけ使う箱ではなくなっていく

10件を並べると、最初に変わるのは移動です。引っ張る代わりについてきて、重い荷物を持つ代わりに人を乗せ、階段では車輪の代わりにクローラーを使う。人が荷物へ合わせるのではなく、荷物側が移動環境へ合わせようとしています。

次に変わるのが、到着後の役割です。中から棚が伸び、脚が出て机になり、開けばベッドになる。スーツケースを片付けるのではなく、そのまま部屋の設備として使う発想です。

そして最後には、箱そのものの前提まで動きます。サイズが伸縮し、空気で膨らみ、ベビーカーを兼ね、取っ手が秤になる。未来のスーツケースは「荷物を入れて運ぶ容器」より、旅の間だけ持ち歩く小さな機械や家具に近づいています。

SOURCES

一次資料

  1. US20180360177A1 — Robotic suitcase
  2. US8282113B2 — Rideable luggage
  3. US20210114646A1 — Suitcase and hand truck for ascending and descending stairs
  4. US20200163427A1 — Suitcase with integrated shelving system
  5. US20230116662A1 — Expandable and collapsible suitcase
  6. US20200245734A1 — Suitcase
  7. US4044867A — Inflatable luggage
  8. US20200253347A1 — Luggage arrangement with an infant seat
  9. US20130256072A1 — Luggage Having A Folded Bed
  10. US20060207850A1 — Luggage handle with integral weight scale