椅子は、家具の中でも役割が分かりやすい道具です。腰を下ろし、身体を支える。それだけで十分に見えます。ところが特許図面を見ていくと、発明者たちは椅子に別の仕事を次々と背負わせています。まず椅子そのものを身体へ取り付け、次には背中へ背負える形にします。
家の中では、椅子が机やアイロン台、脚立、ベッドへ変わります。外へ出ればカートになり、育児用品ではハイチェアとベビーカーの境目がなくなります。さらに最近の図面では、座るための構造がそのまま運動器具へ変わっています。
10件はUS公開特許に記された提案です。From Patentsでは、各特許と特定の市販製品との一対一対応は確認できていません。
椅子を置かず脚に装着する
どんな発明?
「Wearable chair」は、左右の脚へ支持ユニットを装着し、必要な位置で構造を三角形に固定して体重を支える発明です。図面では、利用者がしゃがむような姿勢でも脚側の機構が座面の代わりになります。
普通の椅子は人がその場所へ移動します。こちらは椅子の機能を身体へ貼り付け、座る場所そのものを持ち歩きます。
- ASSIGNEE
- Individual
- PRIORITY
- 1977-09-06
- PUBLISHED
- 1979-02-06
- PUBLICATION
- US4138156A
- INVENTORS
- Darcy R. Bonner
背負っていたバックパックから座面だけを倒す
どんな発明?
この発明は、バックパックのフレームを背もたれとして使い、クッションを回転させて座面にします。FIGS. 6–7では、収納状態から座る状態へ座面が動く関係が一枚に示されています。
荷物を入れたまま変形できるため、椅子を別荷物として追加するのではなく、バックパック自身へ座る機能を埋め込みます。
- ASSIGNEE
- Individual
- PRIORITY
- 2017-10-10
- PUBLISHED
- 2019-04-11
- PUBLICATION
- US20190104829A1
- INVENTORS
- Michael W. Clary
背もたれの中から机を引き出す
どんな発明?
「Combination desk and chair」は、椅子の内部へ机面や支持部を収め、必要なときだけ展開する発明です。FIG. 7では、椅子の骨格の中に複数の可動部が収納されている様子が見えます。
椅子と机を横に並べるのではなく、片方をもう片方の中へ畳み込みます。
- ASSIGNEE
- Individual
- PRIORITY
- 1962-01-03
- PUBLISHED
- 1963-10-15
- PUBLICATION
- US3107119A
- INVENTORS
- Ray L. Watts
椅子、アイロン台、脚立を一台に詰め込む
どんな発明?
1934年のこの特許は、椅子のフレームを組み替えてアイロン台と脚立にも使う構造です。専用家具を三つ置く代わりに、支柱や板の位置を変えて役割を切り替えます。
一つの支持骨格が、座る・衣類を置く・高い所へ上るという別々の仕事を引き受けます。
- ASSIGNEE
- Individual
- PRIORITY
- 1932-11-22
- PUBLISHED
- 1934-11-27
- PUBLICATION
- US1982111A
- INVENTORS
- Dewey H. King
座面を開けばそのままベッドになる
どんな発明?
「Chair convertible into a bed」は、座面・背もたれ・支持部を連動させて椅子から寝床へ変える発明です。図面では短い着座状態と長く伸びた状態を比較できます。
座る時間と寝る時間で同じ床面積を使い回す、古典的ですが分かりやすい変形家具です。
- ASSIGNEE
- SSI Medical Services Inc
- PRIORITY
- 1976-01-12
- PUBLISHED
- 1978-07-11
- PUBLICATION
- US4099275A
- INVENTORS
- Erwin Pallan
中央のデッキを広げて左右に椅子を配置する
どんな発明?
この特許は、中央の可動デッキと左右の椅子ユニットを回転・移動させて形を変えます。FIG. 4では、長い中央面の両端へ椅子が付いたような状態が描かれています。
一脚の椅子を折りたたむのではなく、複数の座席と面を一つの機構として再配置します。
- ASSIGNEE
- Keysheen Industry Shanghai Co Ltd
- PRIORITY
- 2012-08-09
- PUBLISHED
- 2013-10-08
- PUBLICATION
- US8550547B1
- INVENTORS
- Lausan Chung-Hsin Liu / Shopo Hsin Tsu Liu / Fibro Tsu Kun Liu
座り終えたら荷物を運ぶカートにする
どんな発明?
「Combination chair and cart」は、同じフレームを着座用と荷物運搬用に切り替える発明です。図面には椅子状態と、折りたたんでカートとして使う状態が並びます。
人を支える構造と荷物を支える構造が、実はかなり近いことを利用しています。
- ASSIGNEE
- Individual
- PRIORITY
- 1987-04-20
- PUBLISHED
- 1988-03-29
- PUBLICATION
- US4733905A
- INVENTORS
- Kenneth N. Buickerood / Edgar J. Garroni
ハイチェアとベビーカーを同じフレームで切り替える
どんな発明?
1961年のこの発明は、ハイチェア、ストローラー、幼児用の座席を一つの構造にまとめます。FIG. 2では、高い座面と車輪を備えた姿が正面から描かれています。
育児用品は成長や場面ごとに別の道具になりがちですが、その境目を一台の可動フレームでなくそうとしています。
- ASSIGNEE
- Individual
- PRIORITY
- 1958-02-03
- PUBLISHED
- 1961-03-28
- PUBLICATION
- US2976912A
- INVENTORS
- Virgil F. Dias
椅子の下をピラティスの機械にする
どんな発明?
「Chair exercise apparatus」は、椅子のような座面とフレームへ、バネで抵抗を作るペダルや可動部を組み合わせた運動器具です。
座るための家具に運動機能を付けるというより、椅子の形を運動姿勢の基準として使います。
- ASSIGNEE
- Balanced Body Inc
- PRIORITY
- 2022-07-07
- PUBLISHED
- 2024-01-11
- PUBLICATION
- US20240009507A1
- INVENTORS
- Ken Endelman / Salim Dogan Sekercioglu / Melissa Mahmutovic / Justin Chang / Yunhui Liu / Harbir Singh
ロッキングチェアを全身運動の機械にする
どんな発明?
「Exercise rocking chair」は、ロッキングチェアの揺れを休息ではなく運動へ使う発明です。座面とロッカーベースの角度や可動範囲を調整し、身体を動かすための抵抗と軌道を作ります。
同じ「揺れる椅子」でも、目的がリラックスからエクササイズへ変わります。
- ASSIGNEE
- Tilt Active Corp
- PRIORITY
- 2015-01-15
- PUBLISHED
- 2016-07-21
- PUBLICATION
- US20160206910A1
- INVENTORS
- John Hincks Duke
AFTER THE FIGURES
椅子は身体を支える構造だからこそ他の仕事を引き受けやすい
10件を並べると、椅子に足されている機能はばらばらに見えます。けれど共通しているのは、すでに人の体重を受け止める骨格があることです。その骨格を脚へ沿わせればウェアラブルになり、背中へ折りたためばバックパックになります。
家具としての骨格を利用すれば、机や脚立やベッドへ変形できます。車輪を加えればカートやベビーカーに近づき、バネや可動部を加えれば運動器具になります。
椅子は人と床の間にある「支持構造」です。そう考えると、発明者がそこへ別の役割を足したくなる理由も少し見えてきます。
SOURCES
一次資料
- US4138156A — Wearable chair
- US20190104829A1 — Backpack with deployable chair
- US3107119A — Combination desk and chair
- US1982111A — Combination chair, ironing board, and stepladder
- US4099275A — Chair convertible into a bed
- US8550547B1 — Transformable chair equipped with a movable deck
- US4733905A — Combination chair and cart
- US2976912A — Combination high chair, stroller and toddler
- US20240009507A1 — Chair exercise apparatus
- US20160206910A1 — Exercise rocking chair
