椅子は、家具の中でも役割が分かりやすい道具です。腰を下ろし、身体を支える。それだけで十分に見えます。ところが特許図面を見ていくと、発明者たちは椅子に別の仕事を次々と背負わせています。まず椅子そのものを身体へ取り付け、次には背中へ背負える形にします。

家の中では、椅子が机やアイロン台、脚立、ベッドへ変わります。外へ出ればカートになり、育児用品ではハイチェアとベビーカーの境目がなくなります。さらに最近の図面では、座るための構造がそのまま運動器具へ変わっています。

10件はUS公開特許に記された提案です。From Patentsでは、各特許と特定の市販製品との一対一対応は確認できていません。

FIG. 01

椅子を置かず脚に装着する

SOURCE FIGURESFIG. 1, FIG. 2, FIG. 3
PUBLICATIONUS4138156A
US4138156A / FIGS. 1–3。脚へ固定した支持部をロックし、身体の重さを地面へ伝える。
FIG. 01US4138156A
人の両脚に棒状の支持機構を取り付け、しゃがんだ姿勢を支える1979年のウェアラブルチェア特許図面。

US4138156A / FIGS. 1–3。脚へ固定した支持部をロックし、身体の重さを地面へ伝える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Wearable chair」は、左右の脚へ支持ユニットを装着し、必要な位置で構造を三角形に固定して体重を支える発明です。図面では、利用者がしゃがむような姿勢でも脚側の機構が座面の代わりになります。

普通の椅子は人がその場所へ移動します。こちらは椅子の機能を身体へ貼り付け、座る場所そのものを持ち歩きます。

IndividualFIG. 01
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
1977-09-06
PUBLISHED
1979-02-06
PUBLICATION
US4138156A
INVENTORS
Darcy R. Bonner
ORIGINAL
FIG. 02

背負っていたバックパックから座面だけを倒す

SOURCE FIGURESFIG. 6, FIG. 7
PUBLICATIONUS20190104829A1
US20190104829A1 / FIGS. 6–7。背負うときはクッションを背面へ収納し、休むときだけ前へ倒す。
FIG. 02US20190104829A1
バックパックの背面フレームからクッション座面を回転させ、床置きの椅子へ変える特許図面。

US20190104829A1 / FIGS. 6–7。背負うときはクッションを背面へ収納し、休むときだけ前へ倒す。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この発明は、バックパックのフレームを背もたれとして使い、クッションを回転させて座面にします。FIGS. 6–7では、収納状態から座る状態へ座面が動く関係が一枚に示されています。

荷物を入れたまま変形できるため、椅子を別荷物として追加するのではなく、バックパック自身へ座る機能を埋め込みます。

IndividualFIG. 02
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2017-10-10
PUBLISHED
2019-04-11
PUBLICATION
US20190104829A1
INVENTORS
Michael W. Clary
ORIGINAL
FIG. 03

背もたれの中から机を引き出す

SOURCE FIGURESFIG. 6, FIG. 7
PUBLICATIONUS3107119A
US3107119A / FIGS. 6–7。椅子の背や座部に、机として使う部材を収納する。
FIG. 03US3107119A
木製の椅子内部に折りたたみ式の机面や収納部を組み込んだコンビネーションデスクチェアの特許図面。

US3107119A / FIGS. 6–7。椅子の背や座部に、机として使う部材を収納する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Combination desk and chair」は、椅子の内部へ机面や支持部を収め、必要なときだけ展開する発明です。FIG. 7では、椅子の骨格の中に複数の可動部が収納されている様子が見えます。

椅子と机を横に並べるのではなく、片方をもう片方の中へ畳み込みます。

IndividualFIG. 03
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
1962-01-03
PUBLISHED
1963-10-15
PUBLICATION
US3107119A
INVENTORS
Ray L. Watts
ORIGINAL
FIG. 04

椅子、アイロン台、脚立を一台に詰め込む

SOURCE FIGURESFIG. 4, FIG. 5, FIG. 6
PUBLICATIONUS1982111A
US1982111A / FIGS. 4–6。座る、衣類を置く、高い所へ上るという三つの仕事を同じ骨格でこなす。
FIG. 04US1982111A
一つの木製フレームを椅子・アイロン台・脚立として使うための可動部を描いた1934年の特許図面。

US1982111A / FIGS. 4–6。座る、衣類を置く、高い所へ上るという三つの仕事を同じ骨格でこなす。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

1934年のこの特許は、椅子のフレームを組み替えてアイロン台と脚立にも使う構造です。専用家具を三つ置く代わりに、支柱や板の位置を変えて役割を切り替えます。

一つの支持骨格が、座る・衣類を置く・高い所へ上るという別々の仕事を引き受けます。

IndividualFIG. 04
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
1932-11-22
PUBLISHED
1934-11-27
PUBLICATION
US1982111A
INVENTORS
Dewey H. King
ORIGINAL
FIG. 05

座面を開けばそのままベッドになる

SOURCE FIGURESFIG. 1, FIG. 3
PUBLICATIONUS4099275A
US4099275A / FIGS. 1 and 3。椅子の部材を一直線に展開し、寝るための面を作る。
FIG. 05US4099275A
椅子の座面と背もたれを動かして長い寝床へ変形させるチェアベッドの特許図面。

US4099275A / FIGS. 1 and 3。椅子の部材を一直線に展開し、寝るための面を作る。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Chair convertible into a bed」は、座面・背もたれ・支持部を連動させて椅子から寝床へ変える発明です。図面では短い着座状態と長く伸びた状態を比較できます。

座る時間と寝る時間で同じ床面積を使い回す、古典的ですが分かりやすい変形家具です。

SSI Medical Services IncFIG. 05
ASSIGNEE
SSI Medical Services Inc
PRIORITY
1976-01-12
PUBLISHED
1978-07-11
PUBLICATION
US4099275A
INVENTORS
Erwin Pallan
ORIGINAL
FIG. 06

中央のデッキを広げて左右に椅子を配置する

SOURCE FIGURESFIG. 4
PUBLICATIONUS8550547B1
US8550547B1 / FIG. 4。中央部を動かし、両端の椅子ユニットと組み合わせて別の家具形態へ変える。
FIG. 06US8550547B1
中央の長いデッキと左右の椅子ユニットを展開した変形家具の特許図面。

US8550547B1 / FIG. 4。中央部を動かし、両端の椅子ユニットと組み合わせて別の家具形態へ変える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

この特許は、中央の可動デッキと左右の椅子ユニットを回転・移動させて形を変えます。FIG. 4では、長い中央面の両端へ椅子が付いたような状態が描かれています。

一脚の椅子を折りたたむのではなく、複数の座席と面を一つの機構として再配置します。

Keysheen Industry Shanghai Co LtdFIG. 06
ASSIGNEE
Keysheen Industry Shanghai Co Ltd
PRIORITY
2012-08-09
PUBLISHED
2013-10-08
PUBLICATION
US8550547B1
INVENTORS
Lausan Chung-Hsin Liu / Shopo Hsin Tsu Liu / Fibro Tsu Kun Liu
ORIGINAL
FIG. 07

座り終えたら荷物を運ぶカートにする

SOURCE FIGURESFIG. 1, FIG. 2, FIG. 3
PUBLICATIONUS4733905A
US4733905A / FIGS. 1–3。座席のフレームを畳み、車輪付きの運搬形態へ変える。
FIG. 07US4733905A
折りたたみ構造と車輪を備え、椅子と手押しカートの姿を切り替える特許図面。

US4733905A / FIGS. 1–3。座席のフレームを畳み、車輪付きの運搬形態へ変える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Combination chair and cart」は、同じフレームを着座用と荷物運搬用に切り替える発明です。図面には椅子状態と、折りたたんでカートとして使う状態が並びます。

人を支える構造と荷物を支える構造が、実はかなり近いことを利用しています。

IndividualFIG. 07
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
1987-04-20
PUBLISHED
1988-03-29
PUBLICATION
US4733905A
INVENTORS
Kenneth N. Buickerood / Edgar J. Garroni
ORIGINAL
FIG. 08

ハイチェアとベビーカーを同じフレームで切り替える

SOURCE FIGURESFIG. 2, FIG. 3, FIG. 4, FIG. 5
PUBLICATIONUS2976912A
US2976912A / FIGS. 2–5。高さや車輪まわりを切り替え、食事用の椅子と移動用具を兼ねる。
FIG. 08US2976912A
車輪付きフレームと高い座面を備え、幼児用ハイチェアとストローラーの機能をまとめた1961年の特許図面。

US2976912A / FIGS. 2–5。高さや車輪まわりを切り替え、食事用の椅子と移動用具を兼ねる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

1961年のこの発明は、ハイチェア、ストローラー、幼児用の座席を一つの構造にまとめます。FIG. 2では、高い座面と車輪を備えた姿が正面から描かれています。

育児用品は成長や場面ごとに別の道具になりがちですが、その境目を一台の可動フレームでなくそうとしています。

IndividualFIG. 08
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
1958-02-03
PUBLISHED
1961-03-28
PUBLICATION
US2976912A
INVENTORS
Virgil F. Dias
ORIGINAL
FIG. 09

椅子の下をピラティスの機械にする

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20240009507A1
US20240009507A1 / FIG. 1。座面の下へ抵抗機構を組み込み、押す・踏む運動を行う。
FIG. 09US20240009507A1
座面の下にバネや可動アームを組み込んだピラティス用チェア運動器具の特許図面。

US20240009507A1 / FIG. 1。座面の下へ抵抗機構を組み込み、押す・踏む運動を行う。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Chair exercise apparatus」は、椅子のような座面とフレームへ、バネで抵抗を作るペダルや可動部を組み合わせた運動器具です。

座るための家具に運動機能を付けるというより、椅子の形を運動姿勢の基準として使います。

Balanced Body IncFIG. 09
ASSIGNEE
Balanced Body Inc
PRIORITY
2022-07-07
PUBLISHED
2024-01-11
PUBLICATION
US20240009507A1
INVENTORS
Ken Endelman / Salim Dogan Sekercioglu / Melissa Mahmutovic / Justin Chang / Yunhui Liu / Harbir Singh
ORIGINAL
FIG. 10

ロッキングチェアを全身運動の機械にする

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20160206910A1
US20160206910A1 / FIG. 1。前後へ揺れる椅子の運動を、脚や体幹のトレーニングへ使う。
FIG. 10US20160206910A1
湾曲したロッカーベースと可動座面を備えたエクササイズ用ロッキングチェアの特許図面。

US20160206910A1 / FIG. 1。前後へ揺れる椅子の運動を、脚や体幹のトレーニングへ使う。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Exercise rocking chair」は、ロッキングチェアの揺れを休息ではなく運動へ使う発明です。座面とロッカーベースの角度や可動範囲を調整し、身体を動かすための抵抗と軌道を作ります。

同じ「揺れる椅子」でも、目的がリラックスからエクササイズへ変わります。

Tilt Active CorpFIG. 10
ASSIGNEE
Tilt Active Corp
PRIORITY
2015-01-15
PUBLISHED
2016-07-21
PUBLICATION
US20160206910A1
INVENTORS
John Hincks Duke
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

椅子は身体を支える構造だからこそ他の仕事を引き受けやすい

10件を並べると、椅子に足されている機能はばらばらに見えます。けれど共通しているのは、すでに人の体重を受け止める骨格があることです。その骨格を脚へ沿わせればウェアラブルになり、背中へ折りたためばバックパックになります。

家具としての骨格を利用すれば、机や脚立やベッドへ変形できます。車輪を加えればカートやベビーカーに近づき、バネや可動部を加えれば運動器具になります。

椅子は人と床の間にある「支持構造」です。そう考えると、発明者がそこへ別の役割を足したくなる理由も少し見えてきます。

SOURCES

一次資料

  1. US4138156A — Wearable chair
  2. US20190104829A1 — Backpack with deployable chair
  3. US3107119A — Combination desk and chair
  4. US1982111A — Combination chair, ironing board, and stepladder
  5. US4099275A — Chair convertible into a bed
  6. US8550547B1 — Transformable chair equipped with a movable deck
  7. US4733905A — Combination chair and cart
  8. US2976912A — Combination high chair, stroller and toddler
  9. US20240009507A1 — Chair exercise apparatus
  10. US20160206910A1 — Exercise rocking chair