公開特許に描かれた住まいでは、部屋が昼と夜で形を変え、ベッドやテーブルは天井へ消え、キッチンはロボットアームで料理を始めます。

さらに進むと、冷蔵庫の扉は窓になり、浴室の操作部は空中へ浮かび、トイレは健康状態を測り、衣類整理装置は服の向きをそろえて折り畳みます。最後には、家具や床だけでなく、家そのものが左右と上へ広がります。住宅・家具・家電・水回りに関する公開特許には、住まいの固定観念を変える発明が描かれています。

FIG. 01

同じワンルームが昼はリビング、夜は寝室になる

SOURCE FIGURESFIG. 43A, FIG. 43B
PUBLICATIONUS20150247338A1
左がDAY MODE、右がNIGHT MODE。同じ床面積の中で家具の位置と用途が切り替わる。
FIG. 01US20150247338A1
同じ小型住戸について、昼モードのリビング配置と夜モードのベッド配置を左右に並べた特許図面

左がDAY MODE、右がNIGHT MODE。同じ床面積の中で家具の位置と用途が切り替わる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

YO! Ltdの「Residential apartment」は、小さな住戸を一つの固定レイアウトとして使うのではなく、時間帯や用途に応じて構成を切り替える住宅を描いています。FIG. 43Aと43Bでは、同じ小型住戸が昼と夜で別の部屋のように見えます。

昼は座席やテーブルを使える生活空間として開き、夜はベッドを前面へ出して寝室へ変える。壁で部屋を増やす代わりに、同じ容積へ複数の状態を持たせる発想です。

YO! LtdFIG. 01
ASSIGNEE
YO! Ltd
PRIORITY
2012-09-12
PUBLISHED
2015-09-03
PUBLICATION
US20150247338A1
INVENTORS
Simon Woodroffe
ORIGINAL
FIG. 02

ベッドが天井へ上がって見えなくなる

SOURCE FIGURESFIG. 4, FIG. 5
PUBLICATIONUS20230189982A1
ベッドを下ろした状態から、天井近くのシュラウドへ持ち上げた状態へ切り替える。
FIG. 02US20230189982A1
Oriの家具システムでベッドを下ろしたFIG.4と、天井側へ持ち上げて隠したFIG.5を並べた特許図面

ベッドを下ろした状態から、天井近くのシュラウドへ持ち上げた状態へ切り替える。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

Oriの特許は、ベッドを上下させる大型のロボティック家具を扱っています。FIG. 4ではベッドが床側にあり、FIG. 5では天井側のシュラウドへ上がっています。明細書は、上げたときに寝具ごと隠れ、ベッドが消えたように見える構成を説明しています。

床面積を一日中ベッドへ割り当てるのではなく、寝る時間だけ下ろす。家具の「置き場所」を変えるのではなく、使わない家具を部屋の上方へ退避させます。

Ori IncFIG. 02
ASSIGNEE
Ori Inc
PRIORITY
2018-11-09
PUBLISHED
2023-06-22
PUBLICATION
US20230189982A1
INVENTORS
Carlos Rubio / Chad Bean / Ivan Fernandez de Casadevante / Hasier Larrea-Tamayo / Robert T. Hsiung / Daniel Ritts
ORIGINAL
FIG. 03

テーブルが床ではなく天井から降りてくる

SOURCE FIGURESFIG. 1A, FIG. 1B, FIG. 1C
PUBLICATIONUS20150000569A1
天井側からケーブルで吊った面を必要な高さまで下げ、机やテーブルとして使う。
FIG. 03US20150000569A1
ケーブルで天井から吊ったテーブル面を、作業高さまで下ろして使う状態を示す特許図面

天井側からケーブルで吊った面を必要な高さまで下げ、机やテーブルとして使う。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

「Concealable suspended surfaces」は、天井に隠せる吊り下げ式の作業面を提案しています。FIG. 1A〜1Cでは、板をケーブルで下ろし、机や食事用テーブルとして使う様子が描かれます。

使い終われば上へ戻し、床から家具を消せます。脚付きテーブルを折り畳むのではなく、そもそも床に支える脚を置かない設計です。

IndividualFIG. 03
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2013-06-27
PUBLISHED
2015-01-01
PUBLICATION
US20150000569A1
INVENTORS
Joseph Casino
ORIGINAL
FIG. 04

カメラとロボットアームが自動でベッドを整える

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS7036164B2
ベッドの状態を視覚的に確認し、可動アームで寝具を押す・引く・持ち上げる。
FIG. 04US7036164B2
ベッドの横に設置した可動ロボットアームが寝具を操作する自動ベッドメイク装置の特許図面

ベッドの状態を視覚的に確認し、可動アームで寝具を押す・引く・持ち上げる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

Stephen Lang Dickersonの特許は、ベッドの状態をカメラなどのvision deviceで読み取り、計算装置が指示を作り、可動式のbedding manipulatorが寝具を動かす自動ベッドメイク装置です。

FIG. 1では、ベッド脇の装置から長いアームが寝具へ伸びています。人が「乱れているか」を判断して手でシーツを直す一連の作業を、視覚認識と機械操作へ分解しています。

IndividualFIG. 04
ASSIGNEE
Individual
PRIORITY
2003-03-05
PUBLISHED
2006-05-02
PUBLICATION
US7036164B2
INVENTORS
Stephen Lang Dickerson
ORIGINAL
FIG. 05

4本のロボットアームが並んでキッチンで料理する

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20210394371A1
複数の調理アームが同じ作業台上で別々の食材や道具を扱う。
FIG. 05US20210394371A1
調理台のレールに沿って複数のロボットアームが並び、肉や食材を扱うSonyの調理システム特許図面

複数の調理アームが同じ作業台上で別々の食材や道具を扱う。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

Sonyの「調理アーム、調理システム」は、調理機能を持つアタッチメントを交換できるアームと、そのアームを調理システム内で移動させる機構を扱っています。

FIG. 2では複数のアームが同じ調理台に並び、肉や食材へ別々に働きかけています。家電を一台ずつ自動化するのではなく、キッチンそのものをロボットの作業空間として組み直す発想です。

Sony CorporationFIG. 05
ASSIGNEE
Sony Corporation
PRIORITY
2018-10-05
PUBLISHED
2021-12-23
PUBLICATION
US20210394371A1
INVENTORS
Yuto Ishizu / Shigeki Ono / Tatsushi Nashida / Mitsuo Okumura / Tomoko Takahashi / Ayaka Sato / Ikuto Yoshikawa
ORIGINAL
FIG. 06

冷蔵庫の扉が必要なときだけ「窓」になる

SOURCE FIGURESFIG. 1, FIG. 2
PUBLICATIONUS10274250B2
普段は扉として断熱しながら、必要なときに内部を見られる透明領域を持たせる。
FIG. 06US10274250B2
透明表示部を備えた冷蔵庫全体のFIG.1と、扉部分の構造を示すFIG.2を並べたLGの特許図面

普段は扉として断熱しながら、必要なときに内部を見られる透明領域を持たせる。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

LG Electronicsの特許は、冷蔵庫の扉を必要に応じて透明にし、扉を開かなくても内部を見られるようにする構成を扱っています。FIG. 1には冷蔵庫全体、FIG. 2には扉の透明領域を含む構造が描かれます。

冷蔵庫の扉は、中身を隠して冷気を逃がさない壁でした。その「見えない方がよい」という役割と、「中を確認したい」という要求を、扉自体の状態を変えることで両立させます。

LG Electronics Inc.FIG. 06
ASSIGNEE
LG Electronics Inc.
PRIORITY
2014-10-17
PUBLISHED
2019-04-30
PUBLICATION
US10274250B2
INVENTORS
Sangoh Kim / Hangbok Lee / Jaeyoul Lee / Minsub Kim / Jungkyu Son / Jaehyun Soh / Eugene Suh / Nami Kim
ORIGINAL
FIG. 07

トイレや蛇口の操作ボタンが空中へ浮かぶ

SOURCE FIGURESFIG. 28, FIG. 29
PUBLICATIONUS20240210806A1
壁や器具へ物理スイッチを置かず、空間へ投影した画像をユーザー入力として使う。
FIG. 07US20240210806A1
トイレの近くに空間投影式の操作画像を配置するKohlerの特許図面FIG.28とFIG.29

壁や器具へ物理スイッチを置かず、空間へ投影した画像をユーザー入力として使う。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

Kohlerの特許は、蛇口、トイレ、スマートミラーなどを、空間へ投影した画像で操作する仕組みを扱っています。明細書ではこうした空間画像を「holograms」や「holographic displays」と呼ぶ場合があると説明しています。

FIG. 28と29では、トイレを含む浴室環境と、投影・検出系の位置関係が描かれます。操作面を壁や本体へ固定するのではなく、必要な場所へ光として出す発想です。

Kohler Mira Limited / Kohler Co.FIG. 07
ASSIGNEE
Kohler Mira Limited / Kohler Co.
PRIORITY
2020-04-24
PUBLISHED
2024-06-27
PUBLICATION
US20240210806A1
INVENTORS
Kevin Peel / Craig Fitton / Nigel Sansum / Chanseol Chung
ORIGINAL
FIG. 08

トイレに座るだけで尿や体温まで測る

SOURCE FIGURESFIG. 1, FIG. 2
PUBLICATIONUS4961431A
排泄の場に測定機構を組み込み、尿成分や体温などの健康情報を表示する。
FIG. 08US4961431A
健康測定機構と表示部を備えたTOTOのトイレ全体と、便器内部の測定構造を示す特許図面

排泄の場に測定機構を組み込み、尿成分や体温などの健康情報を表示する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

TOTOの1980年代の出願に基づく特許は、トイレと健康診断システムを一体化しています。尿の一部を採取して特定成分を測る機構に加え、少なくとも利用者の体温を測るセンサーと、結果を表示する装置を含みます。

FIG. 1は外見としては普通のトイレに近い一方、FIG. 2の断面には測定部と制御・表示系が組み込まれています。健康測定のために別の機械へ移動するのではなく、毎日の行為そのものを測定機会に変えます。

Toto LtdFIG. 08
ASSIGNEE
Toto Ltd
PRIORITY
1987-01-27
PUBLISHED
1990-10-09
PUBLICATION
US4961431A
INVENTORS
Takao Ikenaga / Toshifumi Shigematsu / Akio Kusumoto / Masatoshi Yada / Kimiyoshi Yamamoto
ORIGINAL
FIG. 09

服を入れると向きをそろえて畳むところまで機械に任せる

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20230257928A1
衣類の向きと位置を機械側で整え、後段の折り畳み工程へ渡すための「衣類整理装置」。
FIG. 09US20230257928A1
ローラー、衣類位置センサー、把持機構、折り畳み機構を備えた衣類整理装置のFIG.1特許図面。

衣類の向きと位置を機械側で整え、後段の折り畳み工程へ渡すための「衣類整理装置」。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

Samsung Electronicsの「Clothing classification apparatus and clothing organizing apparatus including same」は、乾いた衣類を人が一枚ずつ整える工程まで自動化しようとする特許です。FIG. 1では、衣類を扱うローラーやセンサー、把持・折り畳み側の機構を含む装置全体が描かれています。

特許では二本のローラーの間で衣類を動かし、センサーで衣類がどちら側を通ったかを判断しながら回転方向を変え、つかみやすい初期位置を作ります。収納家具を賢くするというより、洗濯後の「広げる・向きを整える・畳む」を一続きの機械工程へ変える発想です。

Samsung Electronics Co LtdFIG. 09
ASSIGNEE
Samsung Electronics Co Ltd
PRIORITY
2020-10-22
PUBLISHED
2023-08-17
PUBLICATION
US20230257928A1
INVENTORS
Daesoo Kim / YoungJae Chae / Jaehong Kim
ORIGINAL
FIG. 10

最後は家そのものが上下左右へ広がって2階建てになる

SOURCE FIGURESFIG. 1A, FIG. 1B
PUBLICATIONUS20240254754A1
運搬時は小さな箱状に畳み、設置時には側面を外へ、上部を上へ伸ばして2階建てへ展開する。
FIG. 10US20240254754A1
折り畳まれた住宅が左右と上方向へ展開し、2階建ての居住空間になる expandable house の特許図面

運搬時は小さな箱状に畳み、設置時には側面を外へ、上部を上へ伸ばして2階建てへ展開する。

拡大時はドラッグで移動。+/−で拡大縮小、0で全体表示、矢印キーで移動、Alt+矢印キーで前後のFIG.へ。

どんな発明?

US20240254754A1は、移動・運搬できる小さな状態から、左右方向と上方向へ展開して2階建ての居住空間を作る住宅構造を扱っています。掲載したFIG. 1Aは折り畳み状態、FIG. 1Bは完全展開状態です。原典のFIG. 2では、外壁・床・2階部分・屋根を順番に広げる工程も確認できます。

公報では、左右の拡張部を開いたあと、中央部を持ち上げ、収納されていた2階床パネルをスライドさせて上階を作る構成が説明されています。固定された家の中で家具を動かすのではなく、家の外形そのものを可変機構として扱う発想です。

A&C Future IncFIG. 10
ASSIGNEE
A&C Future Inc
PRIORITY
2023-01-30
PUBLISHED
2024-08-01
PUBLICATION
US20240254754A1
INVENTORS
Zhuangboyu Zhou / Ju Gao / Jiuqi Wang / Sichen Li / Xunmin Jiang / Shoue Chen / Han Qin / Jiayang Qin
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

未来の家では「動かないもの」が減っていく

10件に共通するのは、これまで背景だったものが動き出すことです。部屋の用途、ベッド、テーブル、冷蔵庫の扉、収納、そして家そのもの。家を形づくる固定物が必要なときだけ現れたり、別の役割へ切り替わったりします。

自動化の向きも同じです。ベッドメイク、料理、健康測定、衣類整理のように、人が家の設備を操作する関係から、設備側が人の生活へ働きかける関係へ少しずつ反転しています。

こうした発明は、「ここにあるはず」「動かないはず」という前提を変えることで、同じ空間を何通りにも使おうとしています。

SOURCES

一次資料

  1. US20150247338A1 — Residential apartment
  2. US20230189982A1 — Systems and methods for improved operation of moveable robotic elements
  3. US20150000569A1 — Concealable suspended surfaces
  4. US7036164B2 — Automatic bed making apparatus
  5. US20210394371A1 — Cooking arm and cooking system
  6. US10274250B2 — Refrigerator
  7. US20240210806A1 — Systems and methods for controlling a plumbing fixture, smart mirror, and the like using projected images
  8. US4961431A — Toilet device with health examination system
  9. US20230257928A1 — Clothing classification apparatus and clothing organizing apparatus including same
  10. US20240254754A1 — Two floor expandable house structure