Sonyと聞くと、テレビ、カメラ、ヘッドホン、PlayStation、ロボットのように、完成した製品の形を思い浮かべやすいかもしれません。ところが公開特許のFIGを横に並べると、その「形」は驚くほど落ち着きません。コンピューターはかつらの中へ入り、カメラはコンタクトレンズになり、ゲームコントローラーはバナナや足元の球にまで広がります。

コントローラーは振動ではなく温度を返し、VRグローブは仮想物体の硬さや形を指へ返す。ロボットは壁をその場で画面にし、別のロボットは犬の身体へキリンの頭と首を付けられる。AIプレイヤーには観客の反応まで入力として戻り、ヘッドホンは頭に合わせて締め付けそのものを変えます。

10件はSony Corp、Sony Interactive Entertainment、Sony Group名義のUS公開特許に記された提案です。2026年9月時点で、From Patentsでは各特許番号と一対一で対応する公開製品を確認できていません。

FIG. 01

かつらの中へセンサーとコンピューターを隠す

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20130311132A1
かつらの髪で電子部品を隠し、頭部をセンシング、通知、ナビゲーションの場所として使う「SmartWig」。
FIG. 01US20130311132A1
頭にかぶったかつらの内部へセンサー、処理ユニット、通信ユニットを配置するWearable computing deviceのFIG.1特許図面

かつらの髪で電子部品を隠し、頭部をセンシング、通知、ナビゲーションの場所として使う「SmartWig」。

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どんな発明?

「Wearable computing device」は、センサー、処理ユニット、通信インターフェースをかつらの中へ組み込む発明です。FIG. 1では、利用者の頭部を覆うwig 12の内側にsensor 16、processing unit 18、communication interface 20が配置され、外から見えにくい構成になっています。

特許本文ではこの構成を「SmartWig」と呼び、センシングだけでなく、振動モーターを頭の前後左右へ置いて方向を知らせるナビゲーションや、外部機器との無線通信も説明しています。ウェアラブル端末を腕や顔へ追加するのではなく、髪型の中へ電子機器を組み込もうとします。

Sony CorpFIG. 01
ASSIGNEE
Sony Corp
PRIORITY
2012-05-16
PUBLISHED
2013-11-21
PUBLICATION
US20130311132A1
INVENTORS
Hiroaki Tobita
ORIGINAL
FIG. 02

バナナをその場でゲームコントローラーにする

SOURCE FIGURESFIG. 8
PUBLICATIONUS20210031110A1
カメラで身近な物体を認識し、その表面上の位置を入力として読む。専用ボタンがないバナナにも、画面上ではボタンを置ける。
FIG. 02US20210031110A1
手に持ったバナナの表面へ丸と三角の仮想ボタンを重ねたUS20210031110A1のFIG.8特許図面

カメラで身近な物体を認識し、その表面上の位置を入力として読む。専用ボタンがないバナナにも、画面上ではボタンを置ける。

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どんな発明?

「System and method for generating user inputs for a video game」は、専用コントローラーではない物体を撮影し、その物体への操作からゲーム入力を作る発明です。特許はFIG. 6で二本のバナナをコントローラーとして使う例を示し、FIG. 8では一本のバナナへ仮想ボタンを重ねています。

物体へQRコードや発光部品を付けなくてもよい、という考え方が重要です。画像から受動的な物体を認識し、特定の位置へのタップや動きを検出して入力へ変換します。コントローラーを新しく作るのではなく、目の前の物を一時的にコントローラーとして扱います。

Sony Interactive Entertainment IncFIG. 02
ASSIGNEE
Sony Interactive Entertainment Inc
PRIORITY
2019-08-01
PUBLISHED
2021-02-04
PUBLICATION
US20210031110A1
INVENTORS
Timothy Edward Bradley / David Erwan Damien Uberti
ORIGINAL
FIG. 03

コンタクトレンズそのものをカメラにする

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20160097940A1
視界の前に別のカメラを置くのではなく、画像取得、保存、通信、センシングをコンタクトレンズの円環内へ配置する。
FIG. 03US20160097940A1
コンタクトレンズ内に主制御部、無線通信部、画像取得レンズ、画像センサー、記憶部などを配置したUS20160097940A1のFIG.1特許図面

視界の前に別のカメラを置くのではなく、画像取得、保存、通信、センシングをコンタクトレンズの円環内へ配置する。

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どんな発明?

「Contact lens and storage medium」は、コンタクトレンズの中へimage pickup unit、main control unit、wireless communication unit、storage unit、sensorなどを配置する発明です。FIG. 1では瞳孔を避けるように、レンズの周囲へ各機能が分散して描かれています。

特許では撮影方向を装着者の視線方向と対応させ、まばたきなどの状態をセンサーで見て撮影制御に使う例も説明しています。カメラを「目の前に持つ装置」から、「見ている方向とほぼ同じ場所にある装置」へ近づける構成です。

Sony CorpFIG. 03
ASSIGNEE
Sony Corp
PRIORITY
2013-05-02
PUBLISHED
2016-04-07
PUBLICATION
US20160097940A1
INVENTORS
Yoichiro Sako / Masanori Iwasaki / Kazunori Hayashi / Takayasu Kon / Takatoshi Nakamura / Tomoya Onuma / Akira Tange
ORIGINAL
FIG. 04

ゲームコントローラーを熱くしたり冷たくしたりする

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20120258800A1
握りの周囲へheated regionとcooled regionを配置し、ゲームの出来事を温度として手へ返す。
FIG. 04US20120258800A1
円筒形モーションコントローラーの握り部分に加熱部と冷却部を交互に配置し、HOTとCOLDの制御系を示すUS20120258800A1のFIG.2特許図面

握りの周囲へheated regionとcooled regionを配置し、ゲームの出来事を温度として手へ返す。

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どんな発明?

「Temperature feedback motion controller」は、ゲームからプレイヤーへ返す感覚を振動だけに限定しません。FIG. 2ではグリップの周囲にheated regionsとcooled regionsを交互に配置し、controllerがそれぞれを制御する構成が描かれています。

特許は暖かさや冷たさをゲーム内の状況へ対応させるほか、加熱と冷却を組み合わせて強い熱感を錯覚させるthermal grill illusionにも触れています。画面の中の炎や氷を、手に持つコントローラーの表面温度へ変換しようとします。

Sony Computer Entertainment IncFIG. 04
ASSIGNEE
Sony Computer Entertainment Inc
PRIORITY
2011-04-11
PUBLISHED
2012-10-11
PUBLICATION
US20120258800A1
INVENTORS
Anton Mikhailov
ORIGINAL
FIG. 05

両足の下で巨大な球を転がしてVR空間を移動する

SOURCE FIGURESFIG. 6
PUBLICATIONUS20230398438A1
片足に一つずつ回転球を置き、手をコントローラーで塞がずに足の動きから位置入力を作る。
FIG. 05US20230398438A1
左右の足をそれぞれ大きな球の上へ載せ、球の周囲のローラーとセンサーで動きを読むUS20230398438A1のFIG.6特許図面

片足に一つずつ回転球を置き、手をコントローラーで塞がずに足の動きから位置入力を作る。

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どんな発明?

「Dual sphere foot operated position-based controller」は、左右の足の下へ一つずつ大きな球を置き、その回転を位置入力として読むコントローラーです。FIG. 6では両足が球の上に載り、球の下や周囲に回転を支える機構と検出部が配置されています。

発明が想定する用途にはVRやARが含まれます。移動を足へ任せれば、両手を別の入力や仮想物体の操作に使えるという発想です。現実にはその場にいながら、足元では歩行に近い連続した入力を作れます。

Sony Interactive Entertainment IncFIG. 05
ASSIGNEE
Sony Interactive Entertainment Inc
PRIORITY
2022-06-10
PUBLISHED
2023-12-14
PUBLICATION
US20230398438A1
INVENTORS
Glenn Black / Celeste Bean / Sergey Bashkirov / Michael Taylor
ORIGINAL
FIG. 06

仮想物体の「硬さや形」を指へ返すグローブ

SOURCE FIGURESFIG. 8
PUBLICATIONUS20160274662A1
指ごとのhaptic deviceで、仮想物体に触れたときの圧力、振動、温度、形や質感を手へ返す。
FIG. 06US20160274662A1
左右のVRグローブの手の甲側と各指に配置された触覚デバイスを示すUS20160274662A1のFIG.8特許図面

指ごとのhaptic deviceで、仮想物体に触れたときの圧力、振動、温度、形や質感を手へ返す。

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どんな発明?

「Dynamic gloves to convey sense of touch and movement for virtual objects in HMD rendered environments」は、HMDで見えている物体を「触った」感覚まで作ろうとするグローブです。FIG. 8では左右の手袋の各指と手の甲側に、複数のhaptic deviceが配置されています。

特許は触覚としてvibrationやpressureだけでなく、texture、shape、temperatureまで挙げています。仮想空間で物体へ触れたり握ったりすると、その接触状態に応じて指側のデバイスを動かし、視覚だけだった物体へ物理的な手応えを足します。

Sony Interactive Entertainment IncFIG. 06
ASSIGNEE
Sony Interactive Entertainment Inc
PRIORITY
2015-03-20
PUBLISHED
2016-09-22
PUBLICATION
US20160274662A1
INVENTORS
Noam Rimon / Xiaodong (Crusoe) Mao / Xiaoyong Ye
ORIGINAL
FIG. 07

壁を見つけて操作画面を投影するロボット

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20220203248A1
固定ディスプレイを持ち歩く代わりに、ロボットが使える面を探し、そこへUIを出して人の操作を読み取る。
FIG. 07US20220203248A1
小型ロボットが利用者の近くの壁へ選択肢を投影し、利用者が投影されたボタンへ触れる様子と認識系を示すUS20220203248A1のFIG.2特許図面

固定ディスプレイを持ち歩く代わりに、ロボットが使える面を探し、そこへUIを出して人の操作を読み取る。

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どんな発明?

「Robot Utility and Interface Device」は、ロボット自身へ大きな画面を付けるのではなく、周囲の物理面を一時的な画面として借ります。FIG. 2ではロボットが壁へ「Please select an option」と複数の選択肢を投影し、利用者がその場所へ手を伸ばしています。

システムは利用者の位置と使えるsurfaceを特定し、見やすく操作しやすい位置へロボットを移動させ、interfaceを投影します。さらにカメラなどで利用者の動きを取り込み、どの選択肢が触られたかを判断します。

Sony Interactive Entertainment IncFIG. 07
ASSIGNEE
Sony Interactive Entertainment Inc
PRIORITY
2017-09-29
PUBLISHED
2022-06-30
PUBLICATION
US20220203248A1
INVENTORS
Javier Fernandez Rico / Erik Beran / Michael Taylor / Ruxin Chen
ORIGINAL
FIG. 08

犬型ロボットの頭をキリンの頭と首へ交換する

SOURCE FIGURESFIG. 2
PUBLICATIONUS20220096944A1
同じrobot bodyへ別のsub-partを取り付ける。キリンの長い首で重心が変われば、移動制御のパラメーターまで変える。
FIG. 08US20220096944A1
犬型の四足ロボットの胴体に非常に長いキリンの首と頭を取り付けたUS20220096944A1のFIG.2特許図面

同じrobot bodyへ別のsub-partを取り付ける。キリンの長い首で重心が変われば、移動制御のパラメーターまで変える。

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どんな発明?

タイトルがそのまま「Robot」というこの特許は、ロボットの身体を交換可能な部品として扱います。FIG. 2は犬型のrobot body 2から犬の頭部を外し、giraffe head and neck 4aを取り付けた例です。特許本文には猫の頭、馬のような脚、架空の生物の部品なども候補として出てきます。

見た目だけを着せ替える発明ではありません。長い首を付ければ重心や慣性が変わるため、その身体構成に合うdrive parameterを選んだり、新しい動き方を学習したりすることまで想定します。ロボットのソフトウェアが取り付けられた身体へ追従します。

Sony Interactive Entertainment IncFIG. 08
ASSIGNEE
Sony Interactive Entertainment Inc
PRIORITY
2019-01-25
PUBLISHED
2022-03-31
PUBLICATION
US20220096944A1
INVENTORS
Yoshio Miyazaki
ORIGINAL
FIG. 09

観客の反応を見てプレイを変えるゲーム配信AI

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20240066413A1
AIプレイヤーのゲーム映像を配信し、視聴者の反応を解析して、そのフィードバックをAIのプレイ側へ戻す。
FIG. 09US20240066413A1
AI Player Logic、ML Model、Streaming Server、Spectator Feedback Analyzerと複数の観客端末を結ぶUS20240066413A1のFIG.1特許図面

AIプレイヤーのゲーム映像を配信し、視聴者の反応を解析して、そのフィードバックをAIのプレイ側へ戻す。

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どんな発明?

「AI streamer with feedback to AI streamer based on spectators」は、観客の反応に応じてプレイを変えるAI配信者を扱います。FIG. 1ではAI Player Logicがゲームを操作し、その映像をStreaming Serverから観客へ届け、Spectator Feedback Analyzerが観客側の反応を集める閉じたループが描かれています。

その反応はAI側へ戻され、プレイの仕方や使うモデルを調整するために利用できます。特許は観客の好みをもとにモデルを選ぶことや、反応を学習へ使うことも説明します。プレイヤーと視聴者の関係がAI制御系の入力と出力になります。

Sony Interactive Entertainment IncFIG. 09
ASSIGNEE
Sony Interactive Entertainment Inc
PRIORITY
2022-08-30
PUBLISHED
2024-02-29
PUBLICATION
US20240066413A1
INVENTORS
Kazuyuki Arimatsu
ORIGINAL
FIG. 10

ヘッドホンの締め付けを電気で変える

SOURCE FIGURESFIG. 1
PUBLICATIONUS20250220333A1
ヘッドバンド内部の形状記憶合金ワイヤーなどを駆動し、曲率を変えて頭への側圧を調整する。
FIG. 10US20250220333A1
ヘッドバンドと左右のイヤーカップが内外へ動く方向を矢印で示したUS20250220333A1のFIG.1特許図面

ヘッドバンド内部の形状記憶合金ワイヤーなどを駆動し、曲率を変えて頭への側圧を調整する。

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どんな発明?

「Wearable device」は、ヘッドホンの装着感を機械的なスライダーだけでなく、電気制御できるようにする発明です。FIG. 1では左右のイヤーカップが内側と外側へ動く方向が大きな矢印で示され、ヘッドバンドの曲がり方を変えられることを視覚化しています。

特許の実施形態では、フレームに複数のshape-memory-alloy wireを配置し、通電による加熱・収縮を使って曲率を変えます。制御によって複数段階の締め付けを作り、頭の大きさや好みに応じた側圧へ合わせることを狙います。

Sony Group CorpFIG. 10
ASSIGNEE
Sony Group Corp
PRIORITY
2022-03-30
PUBLISHED
2025-07-03
PUBLICATION
US20250220333A1
INVENTORS
Shuji Fujita / Shinya Ootani / Kazuhito Wakana / Teppei Imamura / Tomoki Kyoizumi / Kazutaka Takaki / Tetsuharu Fukushima / Yukito Inoue / Tomoya Takei
ORIGINAL

AFTER THE FIGURES

Sonyの特許に見る「決まった形」を離れるインターフェース

10件では、入力する場所と、機械が反応を返す場所が移動しています。頭髪、眼球の前、手の温度、足の裏、指先、部屋の壁、ロボットの身体、観客の反応までがインターフェースになっていきます。

しかも、そのインターフェースは一つの形に固定されません。身近な物体をその場でコントローラーとみなす。ロボットの身体部品を交換する。ヘッドホンの曲率を電気で変える。機械側が「人間はこちらの形に合わせてください」と要求するのではなく、その場の物、人、身体、空間へ機械の形を寄せようとしています。

Sonyの特許に残る変な未来では、「これは入力装置」「これは画面」「これはロボットの身体」と先に決まっていた境界が薄くなります。必要な場所にだけインターフェースが現れ、役目が終わればまた普通の物や空間へ戻る。その途中の試行錯誤が特許図面にはかなり率直に残っています。

SOURCES

一次資料

  1. US20130311132A1 — Wearable computing device
  2. US20210031110A1 — System and method for generating user inputs for a video game
  3. US20160097940A1 — Contact lens and storage medium
  4. US20120258800A1 — Temperature feedback motion controller
  5. US20230398438A1 — Dual sphere foot operated position-based controller
  6. US20160274662A1 — Dynamic gloves to convey sense of touch and movement for virtual objects in HMD rendered environments
  7. US20220203248A1 — Robot Utility and Interface Device
  8. US20220096944A1 — Robot
  9. US20240066413A1 — AI streamer with feedback to AI streamer based on spectators
  10. US20250220333A1 — Wearable device